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【検証】鹿島アントラーズ 2019 ② ~鹿島が勝てなかった3つの理由~【大岩監督退任に寄せて】

第1弾はこちらから

第1弾では、2019シーズンの鹿島アントラーズの歩みを振り返ってきた。さて、本題はここからだ。なぜ、鹿島は今季もリーグ戦優勝を逃す結果となってしまったのか。その理由をこれから考察していきたい。

理由その1 疲労、故障者、夏の移籍

オーソドックスなものではあるが、このポイントはやはり考慮しなければならないだろう。ベストの状態で戦えない=チームの力が落ちる、というのはある種当然のことだ。今季の鹿島も昨季に続き、そのベストで戦えない試合があまりに多すぎた。

まずは、疲労と故障者である。昨季W杯イヤーの中で公式戦60試合をこなし、今季ACLのプレーオフから公式戦を戦った鹿島は、明らかに終盤戦走れなくなっていた。シーズンの大一番となる終盤戦で、フルパワーを出し切れないことが致命的なのは誰の目にも明らかである。故障者も同じことが言える。今季誰も離脱者がいない、ベストで戦えたと言っていい試合はリーグ終盤のアウェイ広島戦以降の3試合(ホーム神戸戦は三竿健斗とブエノが出場停止)くらいではないだろうか。それ以外の試合は、常に誰かしらをケガでいないという状況だったのである。

ただ、この問題はそう簡単に解決出来るものではないだろう。サッカーというスポーツの特性上、接触プレーは避けられないし、ケガをするというリスクは常に付きまとっている。フィジカルコーチを代える、医療スタッフを代える、練習方法やリハビリ方法を代える、食事や睡眠など生活面に手を入れる、練習施設を変える。対処方法はすでに様々な方面から叫ばれているが、我々が肩こりや腰痛をあれやこれやで治そうとしながらも付き合い続けるの同じで、この中に効果的なものはあっても、すぐにでも全て解決してくれる特効薬はないのだ。

もちろん、方法を色々と試していくのは大事なことだし、これからクラブがせねばならないことだろう。だが、おそらく来季もこの問題に多少なりとも頭を悩ませることを我々は覚悟しなくてはならないだろう。今季はまだ天皇杯が残っており、最長で元日までシーズンが続くことになる。その状況の中、来季は早ければ1月下旬のACLプレーオフ、遅くとも2月上旬のゼロックス杯から公式戦がスタートすることになっている。つまり、最悪の場合は今季の最終戦と来季の初戦との間隔が1か月ない状態もあり得るのだ。満足にオフを得ることすら難しい上に、来年は東京オリンピックがあり、それに合わせてJリーグは中断することになっている。カシマスタジアムも会場になっており、必然的に中断した分は過密日程になって帰ってくるし、アウェイ連戦も可能性としては考えられる。コンディションを整えるという面でも極めて難しいシーズンになるだろう。

そして、夏の移籍にも触れなければならない。今夏、鹿島は安西幸輝、安部裕葵、鈴木優磨が海外移籍のため、チームを去った。すぐさま小泉慶、上田綺世、相馬勇紀を補強したクラブの動きは評価されるべきだが、やはり主力級3人を一度に抜かれるのは、どんなクラブでも厳しいものがある。この後で後述もするが、特に安西と鈴木の穴はクラブにとってダメージが大きいものだった。

理由その2 先制されると、詰み

今季の鹿島で逆転勝利が何試合あるかご存じだろうか。答えは、リーグ戦ホーム名古屋戦とACLアウェイ慶南戦、ACLホーム山東魯能戦のわずか3試合のみである。逆転負けが公式戦2試合しかないのは評価できるが、先制された公式戦18試合で勝てたのは前述の3試合のみという事実は、先制されると勝てない、という現実を浮き彫りにしてしまっている。

勝てない理由はいくつかあるが最大の理由は、今季の鹿島が引いた相手を崩す術を持ち合わせていなかった、ということだろう。先制したチームの多くは、遅かれ早かれリードしたゴールを守ろうと引き気味になってくる。終了間際ならなおさらだ。その状況の中、鹿島はゴール前まで再現性を持ってボールを運ぶことが中々出来なかった。ビルドアップはなんとかボールを前に運んでいるものの、前で待つ味方にボールを扱うための時間と空間を供給することが出来ず、結局手詰まりになってしまった。ビルドアップで詰まれば、ポジショナルプレーのためのポジション取りも難しくなってしまう。味方がパスコースを作る前に、ボールを持っている選手は相手が寄せてきているため次の選択を迫られているからだ。最も、そのポジション取り自体も前述した疲労が理由で遅れるようになっていったのだが。終盤戦になって、途端にハイプレスや裏へのロングボールに頼るようになったのは、点を取る術としてすがれるものしかカウンターしかなかったからだ。

ただ、そうした中でもゴールを奪う方法はある。「戦術兵器」と呼ばれる、いわゆる個の力だ。ドリブルで単独突破が出来る選手がいれば、自分にも味方にも時間とスペースが作り出せるし、フィジカル自慢で空中戦に滅法強いストライカーがいれば、多少強引にクロスを上げてもゴールに繋げてくれる。そうした役割を担ってきたのが、夏に抜けた安西と鈴木だったのである。サイドバックの位置からドリブルで仕掛けられ、クロスにもシュートにも持っていけた安西。フィジカル面での成長目覚ましく、ポストプレーもさることがらクロスに合わせるのも上手かった鈴木。安西の穴埋めは夏に加入した相馬に期待がかかったが、ケガでほとんど稼働できず。鈴木の穴埋めと期待された上田は、伊藤翔もそうだがクロスをピンポイントで合わせるタイプ。強引なクロスでも決める力のあった鈴木とは違い、しっかりとお膳立てすることでその力が大いに活きるストライカーであり、彼らに同じ役割を背負わせるのは酷だったと言えるだろう。

理由その3 薄すぎた積み上げ

いよいよ、3つ目。この考察のまとめに入ってくる。大岩剛監督は2017年5月末の就任以来、ずっと「アグレッシブ」「いい守備からいい攻撃」というキーワードを元にチームビルディングを図ってきた。

2017シーズンは途中就任という限られた時間の中で、攻撃面に手を付け、守備は個の力をベースに積み上げていくことを決断。順調に勝点を積み上げていたが、終盤にガス欠。押し上げが効かずに失速し、最後の最後で逆転を許してしまった。

2018シーズンは開幕から指揮を執ったものの、前半戦はケガ人や過密日程もあって試行錯誤。W杯期間の静岡キャンプでポジショナルプレーに手を付け、ブロック守備からカウンターとボール保持の2択でゴールに迫る方法に固定。徐々に調子を上げ、初のACL優勝も果たした。ただ、最後のCWCでは世界の強豪に守備面がほとんど通用せず、惨敗という結果に終わった。

そして、迎えた2019シーズン。「かわる」というチームスローガンの下、大岩監督にはタイトル獲得と同時にゲームモデルの確立も求められていた。ただ、第1回(上記リンク参照)で述べたように、方針は開幕直後から方向転換を繰り返し(余儀なくされ)、終盤には今残っているもので、その場その場の対応策で、ぶつかるしかなくなってしまっていた。

もちろん、詰みあがったものが全くない訳ではない。ポジショナルプレーは一部分ながらチームの礎となったし、ブロック守備はそれなりの相手なら通用するし、プレッシングもコンディションと相手次第では機能するレベルにはなっている。ただこれは1年目ならまだしも、監督を2年半務めていて、評価できるレベルの積み上げではない。

よく、監督は3年周期と言われる。1年目で種を蒔き、2年目で苗を育て、3年目で花を咲かせる。今季が種蒔きのシーズンならいいのかもしれない。しかし、種を蒔いている人間は鹿島という土をよく知る人間で、もうすでにこの花壇を見るのは花を咲かせているはずの3年目なのである。

たしかに、擁護すべき点はあるだろう。理由その1で述べたように故障者や夏の移籍は、監督にとっても想定外だったはずだ。それを考えた上で3年間の成績を評価すべき、というのは妥当な意見だろう。だが、この自然災害とも言えるこの現象は来年も起こりうる可能性が十分に考えられる。海外移籍も、今の鹿島の選手の主力には現実的な進路と捉えられる選手がいる。そんな中でも、今のまま託して来季に苗を育て、そして花を咲かせてくれるのか。これまでの2年半を考慮して天秤にかけた時、NOの方が可能性が高いと思えてしまうのは、妥当なことと言えるだろう。

最も監督交代という決断自体は評価できるものだが、この責任は監督だけでなくクラブ側にもある。石井正忠前監督といい、大岩監督といいクラブOBをシーズン途中に土俵に引きずり出し、限界を露呈させてしまうという現象は、クラブとして指導者を育てる、ということが上手くいっていないという裏付けになってしまっている。OBに頼る方針はこのままでいいのか、そもそもクラブとして明確なゲームモデルの理想形が存在しているのか、もう一度精査していく必要があるだろう。新監督がその精査が行われたうえで、連れて来られる人材であることを期待したい。

このチームで戦えるのも多くてあと2試合である。最後に花道を飾るチャンスが残されているとも言えるし、来季に試合日程など実利的な面でも繋げる可能性があるとも言える。一発勝負はゲームプランで試合の展開を持ってくることも可能な方式だ。パフォーマンスに期待して、この文を終わりとしたい。

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