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進路を模索する高校生にもオススメ|『「役に立たない」研究の未来』書評|大学新聞

SLA(全国学校図書館協議会)が選定する「第54回夏休みの本(緑陰図書)」高等学校部門に、『「役に立たない」研究の未来』が選定されました。児童・生徒の夏休みの読書の手がかりとして5部門各8点が毎年選定されています。現在、増刷中の本書の読みどころは? 本記事では、主に全国の高等学校の進路指導および学級担任の先生方に向けて発行されている『大学新聞』に掲載された書評を公開します。

研究の面白さを追求

 近年の研究は、役に立つか否かという二分論に終始されがちだ。しかし、それだけで価値を測れるほど、研究は単純なものではない。

 本書は、物理学・生物学・科学史の異なる3人の研究者の視点から“研究”が置かれている現状について、議論が交わされている。産業に直結する研究ばかりが取りざたされるがゆえに、基礎研究がおろそかになり、衰退する分野も少なくない。こうした現状に3人の研究者は警鐘を鳴らす。そもそも「役に立つ」と「役に立たない」の間に境界をつくろうとすること自体がナンセンスだ。現状を打破するためには、科学者自身が研究のおもしろさを発信し続け、少しでも研究に関心を持つ層にアピールすることも研究者の大切な役割の一つだと説く。

 科学の本質は自分で「問い」を見つけることだと著者の一人である大隅良典氏は話す。研究者を目指す若者はもちろん、進路を模索する高校生にもぜひ読んで欲しい。

役に立たない研究の未来_Cover+Obi

★第54回緑陰図書(高等学校部門)選定★
初田哲男+大隅良典+隠岐さや香 著/柴藤亮介 編
『「役にたたない」研究の未来』(柏書房)

▼初出:大学新聞第192号(令和3年6月10日発行)掲載

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