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新刊速報【2022年4月版】|柏書房営業部通信

柏書房営業部です。今月の新刊は2点。五奉行の視点から関ヶ原合戦前後の歴史をたどる『豊臣五奉行と家康』、文字によって記録されたものの総体=「知識」がいかに危機に曝されてきたのか、古代の粘土板から現代のデジタル情報の保存の実態まで幅広く考える『攻撃される知識の歴史』です。

『豊臣五奉行と家康』

渡邊大門 著

営業担当・木村から一言
コロナが落ち着いたタイミングで関西出張を断行したときのこと。東京から新幹線に乗る。なぜか関ヶ原を通過するたび車窓から外を眺めてしまう。慶長五年。西暦1600年。この場所で起きたとされる天下分け目の戦いに想いを巡らせるのだ。

戦国時代の大きな転換点と位置付けられている関ヶ原合戦。これまで数々の書籍が刊行されてきたがこの企画は影が薄かった五奉行に着目したユニークな企画だ。突如歴史に現れた五奉行とはいったい何をしていたのだろう??その前に五奉行の名前から思い出さねばならないな。浅野長政、石田三成、長束正家、前田玄以、増田長盛。よし覚えたぞ。

さてこの本の読みどころはというと、最新研究をもとに従来の「五奉行は五大老の下」という認識の誤りを正し、職務内容や役割を考察。秀吉死後の政治情勢の中で、五奉行それぞれの立場から関ヶ原に至る経緯について触れていく。すると徳川家康が、どうやって権力闘争で存在感を高めたのか浮き彫りになるところが面白い。膨大な研究文献や一次史料を丁寧に紐解きながら「関ヶ原合戦」までの史実を新たな視点から纏め上げた渾身の一冊。来年の大河ドラマも楽しみだ。

『攻撃される知識の歴史』

リチャード・オヴェンデン 著
五十嵐加奈子 訳

営業担当・木村から一言
このところ、ウクライナの惨状をニュースやSNS、新聞をみるたびに憂鬱な気持ちになります。戦争による破壊行為が実際に今起きているのです。壊されたマンションの一室から母親のアルバムを探しだした男性の姿がニュースで流れました。多くの人命が失われる戦争では無残なシーンに隠れがちですが、この土地に生きてきた人々の記録まで破壊されてしまったことにも大きな憤りを覚えます。これからこの場所で生きていく人々にとって伝承すべきものが破壊されたダメージの大きさは計り知れない事だと思うからです。一刻も早い戦争終結を望んでいます。

今月発売となる『攻撃される知識の歴史』を紹介します。古代から人々が文字として記録してきた粘土板や巻物、書籍、手紙や手記といった文化的な記録は歴史上幾度も破壊の対象となってきました。その過程でライブラリアンやアーキビスト、冒険家、独学の考古学者、詩人、といったキャストたちが知識を保存するため、いかに戦ってきたのかを描いた非常に人間的な物語です。

図書館はすべての知識が保存されるただ一つの場所であり、その情報へアクセスできる事こそが健全な社会にとって不可欠なことです。現代社会では公文書改竄、文書の偽造、フェイクニュースの流布が常に起こり続けています。抑圧的な政権は、人々に忘れてもらいたい文化や信念の記録までも故意に破壊しています。今の政治情勢は「真実そのものが攻撃を受けている」といわざるを得ません。過去が消去され忘れられ、嘘が真実となる社会はまっぴらです。その嘘に対抗するため図書館や文書館は「検証、引用、再現性を通じて真実と偽りが説明される参照点」を提供してきました。ですが今その図書館が過小評価され減少しつつあります。このような無関心による知識破壊がもたらす未来社会はどうなるのでしょうか?公正な社会を望む人にとって大きな警鐘を鳴らす内容で、まさに今読むべき一冊として刊行いたします。是非ご覧下さい。

豊臣五奉行と家康』『攻撃される知識の歴史』ともに4月22日(金)の配本予定です。それではまた来月もよろしくお願い致します!


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