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教えて大西さん、ピースワンコのこと⑲「スタッフ1人で30頭まで」の岡山県基準が満たせないことへの対応は?

1、スタッフ少なすぎると検査で指導

 「世話をするスタッフが少なすぎる。犬の数を減らしてください」

 岡山県動物愛護センターの指導に対して、ピースワンコの運営団体、NPOピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)はどう対応したのでしょう?

 PWJの保護犬事業部門「ピースワンコ」は、広島県神石高原町内に本部のある仙養ケ原周辺と、庄原市との境界に近いスコラ高原の大きく分けて2カ所にシェルターを持っています。それでも収容しきれないため、県境を超えた岡山県高梁市西山地区にもシェルターを開設しています。 

 広島県神石高原町のシェルターから運んできた犬をもう一度神石高原町に送り戻せないならスタッフの数を増やすしかありません。西山犬舎でのスタッフを確保するための採用活動、PWJは始めているでしょうか?

2、開示文書も立ち入り検査を裏付け

 岡山県動物愛護センターが今年6月23日に抜き打ちでピースワンコ西山犬舎を立ち入り調査したことは、筆者がnoteで紹介した通りですが、すべて口頭でもたらされた情報でした。

 ピースワンコの本部を管轄する広島県庁はこの事態を把握しているはずだと考え、情報公開制度を利用して、広島県に対し、岡山県から提供を受けた情報について記した行政文書の開示を請求してみました。

 入手した文書の大半は黒く塗りつぶされていて、指導内容を確認することはできませんでした。この黒塗りは「調査の内容や指導に関することは説明できない」という岡山県動物愛護センターと同様の対応です。

 しかし、断片的に残された文言からだけでもいくつかの重要な事実を確認することができました。

 1つは、2020年6月23日に岡山県動物愛護センターがピースワンコ西山犬舎を「立ち入り検査」したのは間違いない事実だったことです。

 2つ目は、立ち入り検査をした岡山県動物愛護センターの職員が当日、犬舎に収容している頭数や従業員数を聞き取り、「岡山県の基準」をもとに適否を判断しているという事実です。

 いま、環境省が適正飼養に関する数値基準案を公表して、動物愛護団体やペット業界の間で大きな論争を生んでいますが、現時点で数値の目安を自治体が独自に設定して指導している例はほとんどないようです。

 数値があれば、岡山県のように指導しやすくなるわけですが、これも長い積み重ねの末に定着したことです。これまで目安すら持たなかった自治体は、環境省が設定するからといって数値規制を円滑に実施できるのでしょうか?

 3つ目は、岡山県動物愛護センターが広島県動物愛護センターに立ち入り検査の結果を電話で伝えて、県域を越えて情報共有しているという事実です。

 現在の都道府県別縦割りの監督体制では、ピースワンコのように譲渡センターを含めて広域展開している動物取扱業者が監視の網から抜け落ちてしまうことになりかねませんから、岡山県と広島県の連携は好ましい動きだと言えるでしょう。

3、「スタッフ一斉退職」の事実なし

 4つ目は、筆者にもたらされた「世話をするスタッフが少なすぎるから犬の数を減らしなさい(と、岡山県動物愛護センターはピースワンコに指導した)」という情報を否定する材料は一切ないという事実です。

 この4点目のことは、とても重要です。頭数、従業員数の聞き取りや指導にあたっての岡山県独自の目安(従業員1人当たり30頭まで)などに言及している状況からすれば、「世話をするスタッフが少なすぎるから犬の数を減らしなさい」と指導したとする情報の確かさを間接的に裏付けているようなものだと私は思います。

 6月のある日、私のところに民間人からもたらされた情報は、「ピースワンコの西山犬舎の従業員がみんな一斉に辞めてしまって、ピースワンコの安倍誠プロジェクトリーダーがてんてこ舞いらしい」という情報でした。

 私は動物愛護活動に関して議会で質問した実績のある岡山県高梁市議会の森上昌生議員と、広島、岡山両県の動物愛護センターに電話でそのまま「未確認だが、事実であれば大変な問題を生じかねない問題」として情報提供しました。

 最も早く事実確認に動いたのは地元在住の森上議員で、6月22日にピースワンコが市有地もシェルターとして使用していることから市職員を伴い現地を訪問しました。市議らが西山犬舎を訪ねたところ、安倍リーダーが偶然いて、西山犬舎には合計680頭の犬を収容していること、スタッフが一斉に退職した事実はないこと、少ない人数ながらなんとか犬は世話をするのに支障は出ていないこと、などと市議らは説明を受けたと聞きました。

4、犬舎別収容頭数・スタッフ数公表を

 ほぼ同じころ私のところには、「西山犬舎には出入りの清掃業者も加えれば十数人はスタッフがいるはずだ」とする情報もはいってきて、それも関係者に情報提供しました。現場を見学した森上議員も「人数は聞いていないけど、20人もいるとは思えなかった」と教えてくれました。

 6月23日に西山犬舎を調査した岡山県動物愛護センターには、頭数や人数の状況について森上氏らが訪問して得た情報などをそのままお知らせしました。それについて同愛護センターは公式には肯定も否定もしませんが、頭数は前日に安倍リーダーが市議らに説明した通り、スタッフ数についてもほぼ正確な情報だったのだと思います。

 情報提供した際に岡山県動物愛護センターで説明を受けたのは、犬を扱う動物取扱業者を指導、監督する際に自主的な基準(目安)としているのは「従業員1人あたり30頭まで」ということでした。それは子犬の場合であって、成犬の場合はそれより少ない頭数を想定しているようです。

 単純計算しても、680頭収容の西山犬舎には毎日23人以上が出勤する体制を組まねばならないのですが、実態はどうなのでしょう?

 ピースワンコが保護犬譲渡団体のお手本になりたいのなら、主だったシェルターごとに収容頭数と従事者の数(休日を含むフルタイム勤務換算)を、県議会や市・町の議会に報告し、ホームページでも公表して欲しいと思います。

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