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三段腹の二段めに乗って。

赤ちゃんのパスポートが手に入った今週。

赤ちゃんと一緒に歯科診察にいってみた。

金歯の高さ調整のためだ。

いつも歯科は在宅仕事中の夫に預けて行くが、
毎回毎回申し訳ないし、
今回の診察は短いって言うから連れて行った。

車で移動。

歯科のオフィスが入っているビルの入り口に着くと、
階段の前でおばあさんがたたずんでいた。

自立型の杖を横に置いて、スマホで誰かにメッセージを送っている。

目が合うと
『あなたエレベーター使うの?』
と聞いてきた。

何を隠そう、私はアメリカらしさしかない、でかいベビーカーを押している。

『そうです。どうしました?』
と聞いてみると、
『エレベーターが使えないわよ』
と。

たしかに、エレベーターの前に点検中の立て札が置いてある。

『他のエレベーターはないんですか』
『一機しかないのよ』

まじか…。

いろんな思案を巡らせた結果、
ベビーカーの中身だけ持って歯科に行くことにした。

中身、について説明すると。
日本ではスタンダードではないかもしれないが、
車社会のアメリカではトラベルシステムが人気で、我が家もそれだ。

ベビーカーとチャイルドシートが合体!



幼児サイズになってから使えるベビーカーの中に、
マトリョーシカのようにベビーシート(チャイルドシート)をはめ込むものだ。

マトリョーシカの中身は3kgくらい。

つまり、赤ちゃん8kg弱を乗せると11kg。

それを持って3階の歯科まで行くしかないのだ。

アメリカに住むには、財力と同じくらい腕力が求められる。
牛乳、掃除機、洗剤、窓の開閉、コストコ、そしてチャイルドシート。

今回はさらに3階分上るのでMAX Powerが必要になる。

わたしはマトリョーシカの外身を車に戻し、
ビルにズンドコ再入場した。

階段を上り始めると、途中であのおばあさんがヒィヒィ言いながら上っている。
看護師さんと一緒だ。

わたしを確認すると
『あなた、若いわねぇ』
と言う。

まるでハウルと動く城の大階段場面だった。
さっきの一言も、美輪明宏の声で再生された。


なんとか歯科に到着して、予定通り治療してもらう。

我が子は眠くてギャン泣きしていたが、歯科医と衛生士に話しかけられると泣き止んだ。

その後はわたしが口を開けているのを、遠くから静かに観察していた。

治療が終わって、
『せっかくなので抱っこしますか?』
と歯科医に提案すると、
それ来たとばかりに彼女は我が子を抱き上げた。

まぁ分かりやすく言うと、歯科医は韓国人のおばちゃんなのだ。

完全予約制の歯科で、わたしの枠は1時間くらいあったのだろう。
彼女は10分くらい、我が子を抱っこしまくっていた。

Good baby、Good babyとずっと感心している。

子は母親のわたしが見えるし、まだ人見知りもしないのでニコニコしていた。

おばちゃんの三段腹の二段めに乗って、我が子は抜群の安定感と柔らかさに酔いしれていた。

わたしは痩せ型で、しかも産後さらに痩せたので、胸くらいしか柔らかいところが残っていない。

異国での育児、ほっとけば閉じこもりやすい。

いろんな人に抱っこしてもらって社会を知っていっておくれ。

案の定、帰りの車は再び眠くてギャン泣きしたとさ。

おしまい。

<あとがき>
今回はエッセイ風にしました。ところで、英語圏のエッセイは導入、本論、結論と型が決まっています。論文なんですよね。日本とは違います。アメリカの英会話教室で、しっかりしたエッセイを書かせるクラスに通いました。学生時代を思い出して、毎週ワクワクしながら苦労しました。

なんのはなしですか…

みなさま、良い一日を!

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