ノスタルジア / 鯨野 九

あきらめる痛みを
愛と翻訳する人々が
憂鬱がちの私を遠いところまで
連れだそうとする

(消えてしまいたいです)

私の痛みは
遠いところまで見晴るかすので

星空が凍傷のように廻るので

深爪を舐めるたび雷鳴が轟くので

地平線から血のような朝焼けが射して

青痣の匂いで日陰を辿るので

(生き残ってみてもいいです)

黒髪から海まで道は
痛ましいまま続いてゆくけれど
虹の橋梁を渡ればたぶん、
そこからはあなたの愛だったと思う