異世界おじさんはドリームキャストの夢を見るか?

最近、アニメ「異世界おじさん」を毎週楽しみに見ている。

もともと夏アニメだったのが、感染症対策の絡みでクール半ばくらいで放送を中断、秋~冬アニメとして仕切り直すというアクシデントがあったものの、原作の面白さをしっかりと映像化した丁寧な作品で、視聴者からの評価も高いと聞いている。

おなじみの異世界転生ものであるが、特徴としてストーリーの中心となるおじさんが筋金入りのセガファンという設定で、そこかしこにセガネタが頻出する事が挙げられる。原作者の趣味からくる小ネタかと思いきや、おじさんのキャラクターそのものに大きな影響を及ぼしており、意外と本筋にしっかり関係する要素だったりする。
原作では会社やゲーム名は全て伏字になっていたが、アニメ版はセガ全面協力という事で、毎週おじさんのセガ語りに本物の画面や音楽が付くという豪華さだ。

しかし、その中でも不自然に「語られない一角」が存在する。それは何かというと、

ドリームキャストの話が一切出てこないのである。

おじさんはメガドライブやセガサターン(とゲームギア)の話はいくらでも出てくるが、セガ最後のハードであるドリームキャストの話は一切しない。それはもう不気味で不自然なほどに。
おじさんは「2000年のお正月、お年玉でゲームを買いに行く途中で事故に遭い、異世界グランバハマルへ転移した」という設定だが、1999年暮れ〜2000年の年始といえばPS2の発売は目前、セガもドリームキャスト発売から1年経ち「シェンムー」を引っ提げて雪辱を果たそうと勢い付いている頃で、それをおじさんが知らなかったとか、興味がなかったとはとても思えない。
なんせ日本へ戻ってきて最初に知りたがったのが「ゲームハード戦争はどうなった?」だし、時期を考えてもこれは
「プレイステーション vs セガサターン vs ニンテンドウ64」
ではなく
「プレイステーション2 vs ドリームキャスト vs ドルフィン(ゲームキューブ)」
のことだろう。
そこまで関心があってなぜ、おじさんはドリームキャストのことを口にしないのか?この作品に触れた人なら誰もが抱く疑問だろう。

無論、自分もそれに疑問を感じていたのだが、作品を読み込むとどうやら何か隠れた設定がありそうな匂いがするので、推察というか考察というか、そのあたりをまとめてみようかと思う。

■「イキュラスキュオラ」のせい?

結論から言うとおじさんはドリームキャスト(以下DC)の事を喋れないのだと思われる。それも自ら口をつぐんでいるのではなく、「イキュラスキュオラ(記憶消去魔法)」の影響で。

思い出して欲しい。日本へ帰ってきて早々、おじさんはたかふみから聞いた「セガはハード事業から撤退した」という情報を記憶から消しているのである。
この時に、おじさんの中のDCに関する記憶が封印されたのではないか、と自分は睨んでいる。

原作34話(7巻収録)の「ゲーム関連の事は詳しく調べようとするともれなく鼻血が出る(=消した記憶に触れそうになった時の警告)」というセリフから、「セガハード撤退」に繋がる情報を知ろうとすると、記憶の精霊によるブロックが入る事が推測できる。記憶の精霊からしたらDCの話なんか一番触れさせちゃいけない情報だろうし、封印されていても不思議ではない。

※ついでに言えば、たかふみもDCの話を「怖いから」という理由で話題に出さないので、ますます触れようがなくなる。

また、おじさんが異世界へ転移したシチュエーションについて、なぜかWikipediaでは「セガサターンのソフトを買いに行く途中で事故に遭った」という出典不明の記述がされており(2022年12月現在)、これには少々、いやかなり疑問の余地がある。
そもそも原作・アニメ共、「ゲームソフト」と言ってはいるが「サターンのソフトを買いに行った」と明言するシーンは無いし、前述したとおり時期でいえばDCがすでに出ていてPS2発売直前、サターンはソフトの供給自体がほぼ止まっている状態である。とすればおじさんはDCのソフトを買いに行く道中で事故に遭い、異世界へ転移したとするのが自然だろう。

※WIkipediaはこういういい加減な事が多々あるので参考はほどほどにしよう。

当の本人は「何買いに行ったかもう思い出せない(原作3巻14話/アニメ5話)」と言っており、これだけだと「グランバハマルを旅した17年の間に忘れてしまった」と取れるが、記憶消去の影響と考えればなんの事はない、DCに関する記憶を飛ばしてしまったため、ゲームを買いに行った記憶はあっても、何のゲームを買いに行ったのかまでは思い出しようがないのだ。

DCを持っていなかったのでお年玉で買いに行った、という可能性もあり得るが、DCの発売は1998年11月で、さすがに1年以上前に出た新ハードをおじさんが持っていなかったとは少々考えにくい(99年中には値下げもしてる訳だし)。ソニックアドベンチャー(アクションゲームのソニックとしてはメガドラ以来となる新作)なんかも、おじさんは当然プレイしている筈。

というか、「ダイナマイトヘッディー」のキャラ名や「パンツァードラグーンツヴァイ」のOPや「バーニングレンジャー」の要救助者の位置、等を丸暗記しているおじさんが(固有名詞の覚え間違いはあったにせよ)ゲーム絡みの事を完全に忘れるなんてあり得ない訳で、ゲーム関連の話を忘れている事自体、記憶消去の影響である証拠だとも、言えなくはない。

■おじさんがお年玉で買おうとしたソフトは?

さて、ここからはちょっとした余談というか、おじさんが忘れてしまった「何のゲームを買いに行ったのか」を推理してみる。
2000年の年始、ということで発売時期的に「シェンムー第一章(1999年12月29日発売)」ではなかろうか?と思ったのだが、おじさんはRPGが苦手という設定があり、相性は悪そうだ。もちろんタイトルは知っているだろうが。

では、年末発売のソフトでおじさんが好みそうなソフトってなんだろう、「スペースチャンネル5」とかはジャケットがエッチだからという理由で買わないだろうし…と思ってソフト一覧を見ていたら、これじゃねえか?というタイトルがあった。そのタイトルとは






爆裂無敵バンガイオー

1999年12月9日発売
発売:ESP 開発:トレジャー

である。

間違いない。エイリアンソルジャーに青春を賭けたおじさんが、トレジャーがDCにソフトを出すと知って黙っている訳がない。おそらく、先行して発売されたN64版を見てヤキモキしていただろうから、満を持してセガハードに登場したこのソフトを絶対に買いに行くはずだ。

※まあ、サターンの「ダンジョンズ&ドラゴンズコレクション(1999年3月発売)」や「ソニック3D フリッキーアイランド(1999年10月14日発売)」あたりを買いに行った可能性も否定できないが…

という訳で、おじさんがDCの話をしないのは「『イキュラスキュオラ』のせいで忘れてしまっており、喋りようがないから」、事故に遭った日に買いにいったのはサターンのソフトではなくDC版「バンガイオー」という説を推しておきます。


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