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2022年2月版アメリカ労働市場の現状(2)(ヘリテージ財団の報告書)

2022年2月版アメリカ労働市場の現状(1)(ヘリテージ財団の報告書)の続編である。前回までの記事は、以下のリンクを参照。

・図7は、子供の有無による労働者ギャップ(対想定雇用水準比)を示したものである。子供がいる労働者のギャップは小さい傾向にあったが、2021年春ごろから傾向が変化してきた。2021年12月現在では3.8%であるが、子供がいない労働者は2.1%に留まっている。これは2021年3月に可決した法案が大きく寄与しており、2021年7月から12月まで子供がいる労働者に給付金が支給されたためである。シカゴ大学の調査によると、毎月の給付金を恒久化した場合、150万人の労働者が失われるとしている。また毎月の給付金を3000~3600ドルに引き上げると、貧困家庭の問題が解決することになり、更に労働者が減少することになるとしている。

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・図8は、子供の年齢による労働者ギャップ(対想定雇用水準比)を示したものである。子供の年齢が若いほど労働者ギャップが大きくなっていたが、2020年秋からこの傾向が変化している。これは学校が閉鎖された結果であると考えられ、就学年齢の子供がいる労働者のギャップが、就学前年齢の子供がいる労働者を上回った。2021年10月から12月にかけての変化は目覚ましく、2021年12月現在の、就学年齢の子供がいる労働者のギャップが5.1%であるのに対し、就学前年齢の子供がいる労働者は1.9%だった。

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更に性別で見てみると、就学前年齢の子供がいる男性労働者の労働者ギャップが最も少なく0.8%である。これに続くは就学年齢前の子供がいる女性労働者であり、3.1%である。就学年齢の子供がいる労働者については、男性が5.1%、女性は5.2%と同水準となっている。(図9)

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・図10は、コロナウイルスパンデミックに伴う非求職者数を示したものである。労働統計局は、2020年5月からコロナウイルスパンデミックに伴い、過去4週間で求職をあきらめたか否かについてのデータ収集を開始した。一時的に変異株の感染流行で上昇する場面はあるが、2020年5月からは下落傾向にある。オミクロン株の蔓延により、2021年末から2022年初期にかけて非求職者数が大幅に増加していると見込まれるが、これは労働者不足の主要因にはなりえない。むしろ、ワクチン義務化や学校閉鎖の方が労働者不足に影響を与えている可能性が高い。

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・労働者不足に対処するため、政治家は以下の政策を実施するべきである。
 ① 減税
   所得税などの増税は、労働へのインセンティブを低減させてしまう。減税することで雇用にインセンティブを与え、労働者の所得も上昇し、労働者を市場に呼び戻すことに貢献するだろう。
 ② 多様な労働スタイルの許容
   リモートワークや独立開業などのワークスタイルをより柔軟に認めるべきである。子育て世帯はサラリーパーソン労働が非常に困難であることから、在宅で労働できるなどの選択肢があれば、労働市場から退場する必要はないのである。
 ③ 保育の拡充
   現在の保育は規制が強く、子育て労働者の需要に合ったサービスが受けられない。州政府は規制を撤廃して、コストを下げ、低所得者向けのサービス選択肢を拡充するべきである。

 ④ 労働者への社会保険適用
   失業者の社会保険給付を拡充すると、労働へのインセンティブが失われてしまう。労働することで社会保険に加入する制度を拡充することで、労働へのインセンティブを与えることになり、低所得者層が貧困から脱することができるようになる。


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