「新幹線 0系 食堂車」

子どものころ、名古屋駅から近鉄にのって津の祖母の家によく行っていた。昭和50年前後の話。

そのころに、どういうタイミングだったのかわからないが、ときどき名古屋駅のホームにいる新幹線を見る機会があった。鉄道好きな子どもだったわけではないが、新幹線を見ると嬉しくてはしゃいだ記憶がある。たぶん0系というタイプの車両。どうやら中に食堂車もあるらしい、ということも知っていた。新幹線というだけでもすごいのに、中にレストランがあるなんて。おいしいものが食べられるなんて。

乗りたい。乗り込む人達も見える。うらやましい。親と一緒に乗る子どももいるぞ。私だって乗りたい。あれに乗りたい。そう親に訴える。しかし「また今度ねー」「そうねー乗れるといいねー」「遠くに行くときに乗るんだよー」など、毎回はぐらかされていた。これははぐらかされているなあ、とわかってはいたが、あまりに夢の乗り物な気がして、私も泣いてごねるほどは騒がなかったと思う。遠い存在すぎた。

いやあ、乗りたかったなあ。そりゃ無理だったとは思うけど。私が親の立場だったとしても、同じように絶対はぐらかしてたけど。ネットの写真を見ながら思う。大人になった今なら好きなように乗れそうだけれど、それ自体がもう存在していない。

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