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ゴッホの東海道五十三次

 ゴッホは「炎の画家」と呼ばれる。絵が売れない中で自分の耳を切り、精神病院に入院し、拳銃で自殺… という人生は聞くからに壮絶で、今でも彼を芸術家の理想像とする人はそう珍しくない。補助金など、行政の絡む議論で「芸術家は清貧であるべき」と、緊縮財政の論拠としてゴッホ的な画家像を想定されているようなケースもかつて目にしたことがある(ここでその是非は議論しない)。

 しかし、ゴッホがそこまで「特別」だったかというと、そこには疑問が残る。もちろん「どこにでもいる画家」などと貶す意味合いではない。ただ、本格的に売れるのに時間がかかり、ヘレン・クレラー=ミュラーのような有力な庇護者を得たのがゴッホの死後だったというだけのことであり、だからたとえば仮にゴッホが50代まで生き長らえていれば、そこにはまた違う世界線が待ち受けていたかも知れない。

 そんなことを考えていた時、ふと思ったのが「もしもゴッホが生き長らえて、来日していたら」という、ファン根性丸出しの妄想だった。ちなみに晩年のゴッホはジャポニスムからも離れており、病気や怪我の後遺症に悩まされているかも知れない画家が来日してくる可能性は低いのかも知れない。それに来日したとして、彼は欧化に邁進する日本の姿に、かつてと同じ羨望の眼差しをくれるか、失望しないでいてくれるかどうか。それに彼のジャポニスムというのは日本研究というよりは日本趣味であり、日本文化や浮世絵の意味的な部分に興味を持ってくれるのかも正直なところ疑わしい。

 それでも… もしそれが叶うのなら見てみたいものがあって、それがタイトルに掲げた「ゴッホの東海道五十三次」である。日本の浮世絵は種本をもとに絵が描かれることも珍しくないが、印象派以降の戸外制作を行うゴッホなら、現地に赴いて写生することを望むだろう。
 妄想は尽きないが、とにかく、私はそんな想像を具現化すべく、「お絵描きばりぐっどくん」に頼んでみることにした。

《ゴッホの東海道五十三次》(2022)

 割と尤もらしい画像になったような気がする。気になるところはあるが、晩期ゴッホのうねるような線描で描かれた旅の情景。色彩遠近法が生きた画面に、青い太陽が不思議な画竜点睛を添える。

 少し前にゴッホに暴走族を描かせるというのがネットニュースになっていたけど、そういう突飛な妄想を画像生成AIが受け止めてくれるのは嬉しい。ただ、上の画像は(個人的には良く描けていると思うが)地域が判然としないため、「日本橋」と具体的な地名を入れて再度画像生成をしてみたところ、地方の高速道路みたいな不思議な絵面になってしまった。まだまだ修行が足りない(私が)。

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