ダメになる会話「買い物」

学生A「ここが食料品売り場だ。」
学生B「ふむ、考えてみれば男子学生二人で食料品売り場に来るというのもなかなか無いシチュエーションであるな。」
学生A「まあ、こういう買い物は普段は母親がしているからな。」
学生B「貴様の『家族と旅行なんか行きたくない』という中二病丸出しの言動のおかげとも言えるな。」
学生A「貴様さりげなくディスっているが、その俺が食事代を受け取った事を察知してすかさずたかりにきたのは誰だ。」
学生B「無論俺だ。」
学生A「なぜ誇らしげなのかわからんが、今度俺を中二病呼ばわりしたら晩飯がチロルチョコになると思え。」
学生B「おかずになりそうな味のチロルって出てたっけ?」
学生A「もういい。腹もへったしさっさと買い物をすませよう。」
学生B「ではこの納豆巻きを。」
学生A「まてええいっ!」
学生B「びっくりした!きゅうに大声出すからびっくりした!」
学生A「貴様、納豆が好き嫌いのわかれる物だというのを知らんのか?」
学生B「知っているとも。こんなうまい物が食べられないなど、俺に言わせれば人生の8割を損しておるわ。」
学生A「お前の人生は納豆が8割も占めているのか。そっちのほうがずっとせつないじゃないか。」
学生B「うるさいわ!まさか貴様、納豆が食えぬというのか?」
学生A「うむ。食えぬ。あのにおいがどうしても好きになれぬ。」
学生B「だったら貴様は食さねばよい事ではないか。ではこの納豆巻き4本セットを」
学生A「だから勝手にカゴにいれるでない!限られた予算で買い物せねばならんというのに、何故片方が食べられない物をわざわざ選ぶ!?」
学生B「だが我はこの納豆手巻き四本セットが食べたいのだから仕方なかろう!」
学生A「手巻きならもっといろいろ入っているバラエティセットがあるではないか!なぜわざわざ納豆オンリーを選ぶのだ!?」
学生B「知れた事よ!バラエティセットはマグロ巻き、サーモン巻き、サラダ巻き、納豆巻きのセット。納豆巻きは1本しかはいっておらぬわ!」
学生A「もしかして貴様、納豆巻き以外は嫌いなのか?」
学生B「いや、わりとどれも好き。」
学生A「だったらバラティセットでいいではないか!」
学生B「納豆巻きを一本で済ませるなど、俺の辞書にはない言葉だ。」
学生A「そんな腐った辞書は捨ててしまえ!」
学生B「そんなにほかの手巻きが食べたければバラエティセットと納豆巻き4本セットを両方買えばよいではないか!」
学生A「それでは8本中5本が納豆巻きではないか!そんなバランスの悪い買い方ができるか!」
学生B「あ、でも俺、納豆巻きは3本でいいや。あとマグロ巻きとサラダ巻きね。」
学生A「俺は納豆が食えんと言っとるだろうが!しかもなんだその自分勝手セレクションは!俺の希望が一つも入らないではないか!」
学生B「だが今日はどうしても納豆を食わねばならんのだ!」
学生A「なぜだ?!」
学生B「今日は何日だ?」
学生A「たしか10日だが。」
学生B「俺は7と10のつく日は『納(7)豆(10)の日』と決め、三食のうちどれか1回は納豆を食すと決めておるのだ!」
学生A「そんな自分ルール知った事か!それならば何故朝か昼に食べておかんのだ!?」
学生B「うちは朝はトーストだし、昼は学食だから納豆メニューが存在しないだろうが!」
学生A「だからといって俺が食べられない納豆を俺の金で買おうなどと、身勝手がすぎるであろう!」
学生B「ええい、納豆巻きひとつでうるさい奴よ。ではひとまず手巻きは置いといて、おかずを選ぼうではないか。」
学生A「よかろう。総菜コーナーの物はそれほど好き嫌いが出ないから、簡単に決まるだろう。」
学生B「ではこの『お徳用枝豆2Kg』を」
学生A「まてええええええいっっつ!」
学生B「びっくりした!超びっくりした!なんなのもうっ!またそんな大声を出して!」
学生A「晩飯のおかずを選ぼうというのになぜ枝豆なのだ?お前は晩酌でビールを飲みながら野球中継をみる中年オヤジか?」
学生B「好きなんだからいいではないか。まさか枝豆も食べられぬというのか?」
学生A「いや枝豆は食べられるし、わりと好きなほうだが。」
学生B「だったらいいではないか。よいしょっと。」
学生A「だから勝手にカゴに入れるなと言っておるのだ!」
学生B「さっきからいちいちなんなんだ。」
学生A「よしんば枝豆を買うにしてもだ。2キロってなんだ?業者か?これから枝豆の販売でもするのか?」
学生B「貴様大丈夫か?我々は晩飯を買いに来ているんだぞ?」
学生A「わかってるよ!百も承知だよ!だ!か!らっ!なんで予算を全部つぎ込んで枝豆を買おうとする?」
学生B「いかんか?」
学生A「ほかにもいろいろあるだろうが。トンカツとか、焼き鳥とか、焼き魚だってある。おかずといったらそういう物じゃないのか?」
学生B「そんなのもうどれも30回以上食べたよ。」
学生A「いやそうだけど、どれも珍しいワケじゃないけども。回数の問題なのか?」
学生B「今日は特別な日なんだぜ?普段はできない、今日じゃなきゃできない特別な晩飯にしたいじゃないか。」
学生A「まあ、言いたい事はわかるが、それでなんで枝豆2Kgなんだ。」
学生B「『広告の品、本日限り』って書いてあるだろ。」
学生A「本日限りなのか。」
学生B「ああ。今日だけの特別な品だ。」
学生A「……」
学生B「わかってくれたか。」
学生A「いや、正直全く理解できんがお前のその口に枝豆を限界まで入れてみたくなったので、買おう。」
学生B「またまた、おたわむれを。」
学生A「たわむれるとも。貴様の口に2キロほどたわむれるとも。」
学生B「あと、やはりスナックのたぐいは欲しいところであろう。」
学生A「貴様、晩飯のあともダラダラと居続ける気まんまんだな。」
学生B「無論だ。すでに家族には今日は帰らぬむねを伝えておる。」
学生A「そういう事は家主の許可をとってからにしろ。」
学生B「お前が追い出そうとしても占有権を主張して法的に解決されるまで居座るからな。」
学生A「なんて迷惑なんだ。今この時点で置いて帰りたい。」
学生B「そしたら一人で枝豆2キロを食う事になるぞ?」
学生A「そもそもお前がいなかったらそんな物買わぬわ!」
学生B「俺をここに置いていくなど、やめておいた方がいい。」
学生A「置いていったらどうなる?」
学生B「大泣きしながらお前の名前と住所を連呼する。」
学生A「絶対にやめろ。」
学生B「ではスナック菓子を選ぼうではないか。」
学生A「俺は友達を選ぼうかな。」
学生B「お?うまい事いうね。」
学生A「スナック菓子なんて、なんでもよかろう。ポテトチップスでも適当に買っておこうか。」
学生B「このうつけ者がっ!」
学生A「なんだ、スナック菓子にまでなにか注文があるのか?」
学生B「当たり前だ。うちはスナック菓子と言ったらこれと決めた物がある。」
学生A「どれだ?」
学生B「えんどう豆スナック。」
学生A「どんだけ豆が食いたいんだよ…」
-END-

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