ダメになる会話「辞めた理由」

女子生徒「聞いたわよ、ボクシング部を辞めるんですって?」
男子生徒「ああ、辞めるよ。」
女子生徒「どうしてよ!どうしてそんなにあっさり夢を捨てちゃうのよ!」
男子生徒「俺はボクシングに夢などもってない。」
女子生徒「何よ意気地なし!根性無し!甲斐性なし!無職!引きこもり!」
男子生徒「お前ひどいな!俺は学生だし、引きこもりでもない。」
女子生徒「でも甲斐性なしの根性無しじゃない。」
男子生徒「くっ、だとしてもお前に責められる筋合いではない。」
女子生徒「勝手に入部届けをだした私に悪いとは思わないの?」
男子生徒「おまえの仕業だったのか!」
女子生徒「あなたには才能があるのよ!小さな玉を小さな板で打ち返す才能が!」
男子生徒「だったら他に入るべき部があるよね?」
女子生徒「やめるなら側頭部に強烈なフックをもらって頭蓋骨骨折してからでも遅くはないわ!」
男子生徒「猛烈に手遅れじゃないか!そうなる前にやめたいんだよ!」
女子生徒「あなたがボクシングを引退してテレビのローカル番組に出るマイナーな芸能人になる日を楽しみにしてたのに!」
男子生徒「それボクシング必要なの?」
女子生徒「いつも誰かをぶん殴りたがってるあなたにピッタリじゃない。」
男子生徒「人聞きの悪い事を言うな!僕をどんな人間だと思ってるんだ。」
女子生徒「あなたのためにグローブを買ってきたのに。」
男子生徒「せっかくだけど無駄になったな。」
女子生徒「バットとボールも買ったわ。」
男子生徒「全部野球の道具じゃねえか。」
女子生徒「そうなの?ボクシングの事はよく知らなくて。」
男子生徒「そんなレベルで勝手に入部させちゃダメだろ?」
女子生徒「本当は、私のお兄ちゃんにボクサーになって欲しかったのよ。」
男子生徒「え?お前、お兄さんがいたのか?」
女子生徒「でもお兄ちゃんは事情があってボクシングをやめてしまったわ。」
男子生徒「そうなのか。」
女子生徒「だから!だからあなたに強烈な左フックをもらって欲しいの!」
男子生徒「いやまてその理屈はおかしい。」
女子生徒「体をきりきり舞いさせながらマットに沈んで虚ろな目のまま口から泡を吹いてるあなたが見たいの!」
男子生徒「絶対に嫌だよ!お兄さんだってそんな事は望んでないよ!」
女子生徒「でもそれが私の夢なのよ!」
男子生徒「お前のならなおのこと知らねぇよ!」
女子生徒「お兄ちゃんはね、10年に一度の逸材と呼ばれてたの。」
男子生徒「そんなに凄かったのか。」
女子生徒「スピードもパンチも超高校級。将来はプロになって世界を目指せる器だって言われてた!私に!」
男子生徒「お前にかよ!あー!もう!とにかく俺はボクシングを続ける気はないの!」
女子生徒「そこまで言うなら、この私を倒してから辞めなさい!」
男子生徒「なんだと?!」
女子生徒「ふふふ、女だと思って甘く見ているようね。マイスィートハニーだと思っているようね。」
男子生徒「思ってねぇよ。何都合のいい解釈してんだ。」
女子生徒「やぁねぇ、照れちゃって。」
男子生徒「いかん、本当に殴りたくなってきた。」
女子生徒「お?ボクシングやる気になった?」
男子生徒「そういう意味じゃない!いくらお前でも女の子を殴れるわけないだろ。」
女子生徒「なによ!じゃあ私に一発殴らせてよ!それでもう諦めるから。」
男子生徒「激しく殴られ損だが、まあいい、それで諦めてくれるんなら一発殴らせてやるよ。」
女子生徒「じゃあちょっと練習ね。」ブォンッッ!
男子生徒「ちょっ?!なんだよその腕の振り?!」
女子生徒「私ね、左腕の筋肉がすごく強いの。」
男子生徒「う、嘘だろ…」
女子生徒「お兄ちゃんはね、私の方が強烈なパンチがうてると知ってショックでボクシングをやめたの。」
男子生徒「ちょちょ、ちょっとまって!」
女子生徒「でも意外。こんな形で私の夢が叶うなんて。」
男子生徒「夢?」
女子生徒「さっき言ったでしょ。『私の夢』だって。」
男子生徒「あ…」
ドゴオォォォォッ!
-END-

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