ダメになる会話「これから鬼の征伐に」

桃太郎「そういわずに!どうかお願いします!。」
犬「その話はお断りしたはずです。」
桃太郎「でも、でも犬さんに来てもらえないと困るんです。どうか考え直してください!」
犬「鬼退治にいくなら人間の仲間を集めればいいじゃないですか。」
桃太郎「村中の人間に声をかけましたが、全部断られました。」
犬「どんだけ人望ないんですか。そんだけ期待されてないって事は、あなた大して強くないんじゃないですか?」
桃太郎「そんな事ありません。私は普段から忍耐力や足腰を鍛え、剣術と隠密の技の修行をしてきました。」
犬「ほほう、具体的にはどんな修行を?」
桃太郎「女湯をのぞくため風呂屋の屋根裏で8時間ひそんで忍耐力を鍛えました。」
犬「それ犯罪ですね。」
桃太郎「警察に追われるたびに猛ダッシュで逃げ切って足腰を鍛えました。」
犬「警察に追われてるんですね。」
桃太郎「近所の子供のチャンバラごっこに付き合って剣術を磨きました。」
犬「子供の遊びレベルなんですね。」
桃太郎「そしてかわいい女の子の家を突き止めるため見つからないように家までつけていき、隠密の技を身につけました。」
犬「あきれてものがいえません。」
桃太郎「どうです、驚きました?」
犬「話の内容の75%が犯罪だった事に驚いています。」
桃太郎「それで、この鍛えた力で鬼を退治しにいく事にしたんですが、誰もついてきてくれなくて。」
犬「そりゃそうでしょうね。ついていく人がいたら正気を疑います。」
桃太郎「どうですか、事情をきいたらお供になる気になりましたか?」
犬「どういう神経してたらそんな図々しい発想ができるんですか。」
桃太郎「こんどとっておきの女湯がのぞけるスポットを教えますから。」
犬「僕は犬なんで人間の女湯に興味がないです。」
桃太郎「犬族の女湯ですよ?」
犬「犬族の女湯までのぞいてるんですか!?ド変態じゃないですか!」
桃太郎「私は女とつくものを平等に愛しているだけです。ねえお願いしますよ。」
犬「だから嫌ですって。人間がダメならダメで、もっと強そうな動物にすればいいでしょう?クマとかイノシシとか。」
桃太郎「それじゃダメなんです。どうしても犬じゃないと。」
犬「どうしてですか。」
桃太郎「村の占い師に見てもらったんです。そしたら『鬼退治に成功したければ、犬と猿とキジをお供にせよ』って。」
犬「犬と猿とキジ〜?それ思いっきり騙されてるんじゃないですか?」
桃太郎「どうして?」
犬「だって犬族と猿族は先祖代々超仲が悪いし、キジが戦闘に強いとも思えません。」
桃太郎「いや、私も変な組み合わせだなとは思ったんですが、その占い師の言う事はよく当たるんですよ。」
犬「そうなんですか?」
桃太郎「ええ、正助ってやつが占いで『近いうちに怪我をする』っていわれたら次の夜に暴漢に襲われたり。」
犬「ほお。」
桃太郎「つぎに又吉ってのが占いで『近いうちに怪我をする』っていわれたら次の夜に暴漢に襲われたり。」
犬「ん?」
桃太郎「そして文七ってのが占いで『近いうちに怪我をする』っていわれたら次の夜に暴漢に襲われたりと、どれもピタリと当たりまして。」
犬「…僕だったらまずその占い師を調べますけど。」
桃太郎「その占い師の言う事ですから、是が非でも犬さんにお供になっていただかないと。」
犬「あなた、もう少し人を疑う事を覚えた方がいいですよ。」
桃太郎「まあ、私も暴漢の正体はうすうす気づいてるんですけどね。」
犬「だいたいあなた、どうして鬼退治にいく事にしたんですか?どうせ女の子にモテたいとかなんでしょ?」
桃太郎「そんなんじゃありませんよ。少し前に鬼たちが村の蓄えをごっそり持っていってしまった事、知っていますか?」
犬「ええ、うちもかなりやられましたからね。人間の村はもっとも被害が多かったとか。」
桃太郎「村には明日の生活にも困っている人達が大勢いるんです。それで…」
犬「意外とまともな理由だったんですね。すみません、あなたという人を誤解していたようです。」
桃太郎「それで、鬼が島からそれを取り戻せたら、のぞきの罪を見逃してくれると。」
犬「誤解じゃありませんでした。」
桃太郎「いや、村の人を助けたい気持ちもちょっとはあるんですよ?あ、でもちょっとですよ。」
犬「そこはもっとアピールしていいとこでしょう。本当にお供を集める気があるんですか?」
桃太郎「あ!そうだ!お供になってくれたら、ご褒美があるんですよ。」
犬「ご褒美?報酬の事ですか?」
桃太郎「これ!おばあさん特製の吉備団子!」
犬「…」
桃太郎「あー、やっぱ、そういう反応ですよね。」
犬「そりゃそうでしょう。命がけの戦いのお供の報酬が団子って。」
桃太郎「いや、でも、この団子すごく美味しいって評判いいんですよ?」
犬「ほう、そんなに美味しいんですか?」
桃太郎「いや、私は食べた事ないんでわかんないですけど。」
犬「ものすごく説得力にかけますね。」
桃太郎「でも遠くからわざわざ買いにくる人もいるんですよ。リピーターも多いですし。」
犬「でもそれ、あなたが出発する時に作ったものでしょう?もう腐ってるんじゃないですか?」
桃太郎「大丈夫。保存料がいっぱい入ってるから安心です。」
犬「それ安心なんですかね?とにかく、団子につられてお供になんかなりませんよ。」
桃太郎「まあそういわずに試食してみてよ、奥さん。」
犬「誰が奥さんだ。まあ、食べてみるくらいなら。」
桃太郎「どうぞどうぞ。」
犬「もぐもぐ……ん?」
桃太郎「どうです?」
犬「こ…これは…う、うまい!?なんてうまいんだ!」
桃太郎「そうでしょう?なんたっておばあさんの手作りで…」
犬「ああ!なんか力がわいてきた!やれる!今なら何でもできる気がする!」
桃太郎「うわ、すごいなこの団子。」
犬「あははは!あははは!すごいぞ!見える!すべてが俺の自由になる!」
桃太郎「犬さん?大丈夫ですか、目つきが変ですよ?」
犬「もっと!もっとください!その団子、もっとくださあああい!」
桃太郎「えと…あの…これから鬼の征伐についてくるなら、あげましょう…」
犬「行きますよ!どこだっていきますよ!鬼すか?やりましょう!ぶっつぶしましょう!」
桃太郎「お…おー!行きましょう、ははは…」
犬「やつら一人たりとも逃がしゃしねえぞぉ!鬼退治だあぁー! 」
桃太郎「なんか犬さんが世紀末っぽくなっちゃったな。」
犬「ねえ、その前に、もうひとつ、もうひとつだけください、あの団子!あの団子!」
桃太郎「ひとつだけだよ?あとは鬼退治おわってからね?」
犬「ヒャッハー!世界は俺たちのもんだーっ!ひひひっ…ひひひっ…ヒャーハッハッハ!」
桃太郎「……おばあさん、この団子何が入ってるの?」
-END-

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