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怖い話のウラ話・第11話「日本三大怪談」

 あの怖い怖い『お岩さま』と『累ヶ淵』と『牡丹灯籠』は日本三大怪談と呼ばれています。場合によっては『牡丹灯籠』の代わりに『播州皿屋敷』が入ることもあります。しかし、お岩さまと累ヶ淵が怖ろしい怪談であることに変わりはありません。
 お岩さまは、すでに何度も書いていますが、あれは実話ではありません。怨霊話で怖いのは、嘘から出た誠のように、噂話に尾鰭おひれがついて、いつの間にか本物の心霊現象を引き起こしてしまうことです。怖い怖いと思っている想いが積み重なって、その想いに応えるかのように本物がやって来るのです。良くあるお化け屋敷も、単なる噂で怖れるあまり、やがて本物のお化けが住むようになります。お化けは〈御化おんばけ〉と呼ばれる種類の半透明の大きなミジンコみたいな化け物です。たくさんの触手で人の頭に触れて、恐怖の感情を介して魂を吸い取ります。そう言う生き物なのかも知れません。吸われている人の目には、とにかく怖いものに見えていて、人に正体を見られることはありません。

 さて、三大怪談と呼ばれる割に知られていない『累ヶ淵』のことについて少し書きます。
 累ヶ淵の正式なタイトルは『真景しんけいかさねふち』、このタイトルは、
——幽霊は神経のせいで見るもんやから。
 と言う理由で〈真景〉と付けられたそうです。果たして神経の所為せいで見るものでしょうか?
 信じない人にはそうかも知れません。霊能力がないから見えないのではなく、見ていても分からない人が多いです。それは幽霊らしい姿形をしているとは限らないからです。
 しかし累ヶ淵の主人公〈累〉は、実話の怪談物語として登場し、当時の記録に残されています。累が憑依した娘の言葉に、最初は村人も信じず、相手にしなかったそうです。しかし、累しか知らない筈のことを次々に言うので、村でも慌てて大混乱しました。面白いのは、方言で話す累の怨霊を祓うのに、僧侶が通訳をつけて対話しているところです。今ならそう言うことは起きないと思いますが、何せ江戸時代のこと。方言が通じないのは普通のことでしたから……。

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