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怖い話のウラ話・第4話「町のお化け屋敷」

 幽霊ばかりが人間の魂を吸うのかと言うと、そうではありません。他にも吸う連中がおります。化け物なんかもそのひとつですねぇ。
 幽霊のことも化け物のことも、一般の人々はまとめてお化けと呼んでいるので、区別を知らないように感じます。しかし、化け物には種類が多く、妖怪やら、物の怪やら、果ては魑魅魍魎に至るまで様々な種類があります。
 妖怪と物の怪などを区別しないこともあります。正確に言うと、これらの呼び方が違うのは種類が違うからなのです。
 さて、昔はひとつの町に必ずひとつは〈お化け屋敷〉と呼ばれる建物がありました。そこに、お化けがいるかどうについては分かりません。
 ただ地元では、
「あの空き家にはお化けがいて、入って来た人を呪うンや」
 とか、
「何人かの若い衆が肝試しに行ったンやけど、お化けが出たもンで、そら出たと叫んで、逃げてしまったンや」
 と言うようなお話しをよく耳にします。これが本当のことかどうかは分かりません。多くの場合、行けば行けないことのない微妙な場所に、必ずお化け屋敷があるのです。
 この、
「行けば行けなくはない場所にある」
 と言うのが、お化け屋敷のひとつのポイントです。本当に出るかどうかは問題ではありません。
 また、出たとしても、正体不明のお化けと呼ばれる何かが住むと言うだけで、住んでいるものが幽霊なのか、それとも化け物なのかも分かりません。何度も言うようですが、幽霊と化け物は違う種類の存在です。怖ろしさや祟るかどうかも違います。
 お化け屋敷について、どの種類のお化けが出るのか噂を確かめてみようとしても、
「これは、ハッキリと見た人から聞いた話しやけど」
 と言いはるばかりで、何が何だか分かりません。さらに不思議なことに、雰囲気のある老人が語ったお話しなら、
「信憑性がある」
 と判断され記録に残されたりします。趣きのある古い記録を現代語に訳して読むと、ただのヨタ話しだったりするのです。
 これは、誰が語るのかによって信じてもらえるかどうかが決まるようです。色々なお化け屋敷に関する噂話を調べて見ると、ただの思い過ごしや勘違いである場合がほとんどです。本物のお化け屋敷は滅多にありません。しかし、とても怖ろしいことに、他愛のない噂話や勘違いであっても、長い間、語りつがれる内に、本物の化け物や幽霊が、語られた通りの姿形で現れることもあります。これを〈四谷怪談現象〉と呼びます。
 お岩様の四谷怪談は実話ではありません。しかし、長い間、語りつがれる内に本物の祟りが生まれ、お岩様の亡霊まで現れるのですが、この続きは、また次回。お楽しみに。

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