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ぼくに「先輩風壱号」をベタ褒めする時間をください

ヤッホーブルーイングという会社をご存知でしょうか。

社名よりも商品名のほうが有名かもしれませんね。

「よなよなエール」
「水曜日のネコ」
「インドの青鬼」etc...

クラフトビールのヒット商品を連発する、気鋭のビールメーカーです。

この会社のプロモーション用Web動画「先輩風壱号」。

コレが広告として素晴らしすぎるので、ちょっとレビューしていきますね。

まずは現物をご覧ください。

この爽快感。なのに誰も激しく傷ついてない感じ。優しくていいですよね。

細かい内容や演出についても色々と語れるところはあると思うのですが、ぼくがよいと感じるのは、この動画の背景にある戦略です。

ちょっと話題が変わりますが、みなさんはビールメーカーといえば何を思い浮かべるでしょうか?

いや、ここまでヤッホーブルーイングの話をしてきたので、ヤッホーブルーイングが思い浮かぶのかもしれませんが、もうちょいフラットに考えてみてください。

サントリー、アサヒビール、サッポロビール…

あきらかに、このあたりの会社が強いですよね。

ヤッホーブルーイング社は、こんな業界の巨人たちとお客さんの取り合いをしないといけないわけです。

当然、これら上位メーカーと同じやり方をしていたのでは、知名度とブランド力の差で大敗することは目に見えています。

であれば、どうするのか? 上位の会社にはない、新しいコンセプトを掲げる必要があるのです。

ただし、コンセプトは何でもいいわけではなく、世の中の人が共感するようなものでなければいけません。

「世の中人が共感する」「他の会社が広告に利用していない」という2つの条件を満たす広告表現は、それなりに難しい。なぜなら、各社とも世の中の人に共感されるような広告表現を目指して考え抜き、過去何十年にわたって色々な広告を出し続けているからです。

こんなとき役に立つのが、同時代性という概念。

今の時代だからこその商材の価値は何か、という考え方です。

ビールを飲む場といえば、やはり飲み会。しかし現代の若者は飲み会が苦手。ネットの普及によって「付き合いたい人とだけ付き合う」というコミュニケーションが成立してしまった現代、若者は「気の合わないオジサン」とお酒を飲み語らうだけの耐性がないのです。でも、社会人のお付き合いとして飲み会には行かないといけない。…モヤモヤしますね。

そんな若者の心に刺さる先輩風壱号。

これにより、ヤッホーブルーイング製のビールには「飲み会の悩みを解消し、世代の違う人ともポジティブに仲良くなれる」というイメージがくっつきます。

イメージがくっついたビールは、それだけで買いたくなるし、飲みたくなる。これは理屈ではなく感覚的な話です。
ブランドの概念が関わりますが、これについては別の記事にて)

いかがでしょうか。この、大企業に勝てない弱小企業(は言いすぎですが)なりの上手い戦略。

「大企業には勝てないんだから、身の丈に合った売上を維持していこう」

ではなくて、他の企業が目をつけていない「広告の隙間」はどこなのか?

これを見極められると、商品の売り上げは"一線"を越えられるのではないかと思います。

それではまた次回の記事で!(フォローよろしくです)


余談:「水曜日のネコ」のネーミングについて

あるイベントで、ヤッホーブルーイング社の井手直行社長が語ってくれたお話です。

「ビールを飲まない」という女性をあえてターゲットとした、飲みやすさ重視のクラフトビールであるこの商品。ビールとは思えないような不思議な名前をしています。

なぜ「水曜日」なのか? なぜ「ネコ」なのか?

統計調査によれば、水曜日は最もビールの消費が落ち込む曜日なんだそうです。

一番消費が多いのは金曜日。大手各社は「花金にビールで1週間の疲れを吹き飛ばそう!」という広告メッセージを放っています。

もちろん、大手と同じやり方では埋もれるだけ。

井手社長は、居酒屋で飲んでいる女性にひたすら声をかけ、取材をしたんだそうです。

すると見えてきたのは、「1週間の中休みとして水曜日にビールを飲む」という需要。統計上は表れないほどニッチな需要だからこそ、逆に「伸びしろ」がある。

ビールの名称に「水曜日」がついているのは、あまり広まっていない「中休み飲み」を女性に提案するための表現なのです。


あ、「ネコ」は女性が好きなものだからつけたそうです。


それでは。

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