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怪異再現スケッチ かお

【概要】
怪異目撃者の再現スケッチを一部公開する。併せて、目撃者が再現スケッチをした際の言動記録を一部公開する。

【前提】
目撃者本人による再現スケッチは学会に数多く保管されている。再現スケッチはいずれも安全な室内で目撃者の精神が安定していることを確認してから行われる。
怪異を目撃した場所・時間・経緯など、先の聴取で提供された情報を再度確認したのち、怪異についての詳細な聞き取りを始める。その過程で、怪異の容姿を覚えている目撃者には紙とペンを渡し、簡単なスケッチをしてもらう。

【怪異スケッチ集】
以下の写真資料は、“人型である”、“顔が描かれている”、“正面を向いている”、という共通した特徴を持つスケッチである。

▼目撃者 29歳男性
 「幽霊にストーカーされている」と学会へ相談。自宅の鏡、電車の窓、ロッカー内の鏡、ビルの窓、暗いスマホ画面、などで目撃するという。聴取の際、書類に日付を記入するためスマホの画面を見た目撃者は、愛おしいものを見るように「いました」と言った。



▼目撃者 67歳女性
 目撃者が経営している店の閉店作業時、半分閉めていたシャッターの向こうから「お、お、お、お」という男の声がした。半分閉まったシャッターに目元は隠れ、口から下が「お、お、お」と繰り返している。客だと思った目撃者がシャッターを上げると、異様に眼球が膨張した男が立っていた。目撃者は店内に逃げ込み警察に通報したが取り合ってもらえず、学会へ通報した。



▼目撃者 13歳女性
 目撃者が通う学校の家庭科室内で見知らぬ生徒と遭遇。口が通常の3倍ほど大きく、そばにはカエルの足と魚の目が落ちていた。見知らぬ生徒がニィと歯を見せて笑った瞬間、その場に全ての歯がどさどさと落ちたという。悲鳴をあげて家まで逃げ帰り、保護者が学会へ通報。目撃者はスケッチを描いては破りを数回繰り返した。精神が不安定な状態となったため、聴取は途中で中断された。



▼目撃者 52歳男性
 「赤ん坊の首だけが浮いている」と学会へ通報。目撃者は元学会関係者で、怪異生物を保護・保管する設備に詳しい模様。
目撃者が布団で就寝中に寝返りをうち、ふと目をあけると首だけの赤ん坊が至近距離で浮いていた。目撃者は「幽霊とまぐわった、自分の子かもしれない」として、学会で“浮かぶ赤ん坊の首”を保護してほしいと、しっかりとした口調で言った。怪異汚染の影響を受けている可能性アリ。



▼目撃者 36歳男性
 「うつってしまったかもしれません」という目撃者からの通報を受け、心霊写真の類いだと断定して調査員が対応。目撃者は写真やカメラなどを持ち込むことはなく、目撃した怪異について詳しく聞こうとすると無言となった。代わりに紙とペンを渡すと、にこにこと前の虚空を見たまま手を動かし、顔らしきものを描いた。
なにが“うつってしまった”かの詳細は不明。



▼目撃者 24歳 女性
 手足が異常に長いワンピースの女に声をかけられたとして学会へ通報。絶対にヒトではなかったと言う目撃者は何かに焦っているような素振りを見せていた。順を追って聴取を進めようとした調査員に目撃者は苛立ちを露にし、スケッチ用として渡そうとしていたノートのページをちぎり取ってスケッチを始めた。



▼目撃者 36歳 男性(スケッチ中の記録あり)
 顔が見えるとしきりに訴える。詳細を聞き出そうとするも要領を得ず「見えるんです、とにかく」と困惑した様子を見せる。見えている顔の特徴として、口を大きく開けているとのこと。
①スケッチ1枚目
 ノートとマジックを渡す。絵は苦手だと言う目撃者は恐る恐る顔のようなものを描き始める。目撃者は描いたスケッチに納得していない様子。

②スケッチ1枚目(2)
 しばらく①の状態のスケッチを眺めていた目撃者は、突然顔を上げ、「あ」と短く声をあげる。直後、「まちがえたまちがえたまちがえた」と抑揚のない声で呟きながら、①の状態のスケッチを黒く塗りつぶし始める。
異変を察知した調査員がマジックを取り上げようとするも抵抗し、ひたすら黒く顔を塗りつぶしていく。一通り塗り終え再び静かになった目撃者に、描き損じであれば次のページにスケッチをし直してもよいという旨を伝える。

③スケッチ2枚目
 目撃者は②の描き損じページを破り、次のページも破り、さらにそのページを半分に破る。そして②のスケッチと2枚に分かれた白紙のページを交互に見てから、調査員に向かってけたたましい笑い声をあげる。
警戒しながら様子を窺っていた調査員がその時点で強制的に聴取を終わらせようとしたが、目撃者は大声で笑い、「ほら似ています!」と叫びながら激しく抵抗する。
駆けつけた他の学会職員たちにより目撃者は隔離棟の処置室へと搬送された。


スケッチをしていた机には、顔が完成していた。






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【総括】
このように、怪異に接触した可能性のある目撃者はどれだけ精神が安定しているように見えても急変する場合がある。
学会が所有している怪異汚染測定装置は調査員用のものであり、一般人用に数値を調整した専用装置が必要だといえる。
また、怪異汚染の影響を受けやすい目撃者と密室で対面する形での聴取は調査員への負担が大きいため、極力接触を避けるなど聴取方法の改善が課題となる。
2024年度より資料管理方法の見直しを行い、デジタル機器を使用したスケッチを試験的に導入している。

【補足】
目撃者たちはその後正常に戻り、各々日常生活を送っている。

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