見出し画像

ヒーくんの人形

【概要】
狐窓市民より提供された動画資料を公開する。

【経緯】
2020年6月24日に自宅に設置した定点カメラがとらえた映像。

狐窓市民(Yさん 一軒家に独り暮らし)は2018年頃から家の中での不審な物音に悩まされていた。
音の種類として、
・無人の二階でドサッと何かが落ちる音
・内側から窓を指先でコツコツコツ、と規則的に3回鳴らす音
・スリッパを階段から落とす音(写真1)
・こどもの声(意味は聞き取れないが敬語を話しているように聞こえる)
・ドアの取手を弾く音(写真2)
・触れていない五月人形のオルゴールが勝手に鳴る
などがある。


(写真1)
(写真2)


人間の足音程度であれば隣家から物音が反響して鳴る場合があるが、Y家の隣は小さな公園と古い空き家である。
念のため空き家を調査したところ、怪異汚染の数値に問題はなかった。公園からは遊具が撤去されており、砂場と錆びたベンチがある他はほぼ草地である。Y家の調査中ひとりも利用者はいなかった。

頻繁に物音は鳴っていたものの、Yさんは仕事でほとんど家を空けていたためあまり気にとめていなかったという。
2020年春頃から在宅勤務が増えたことで、日常的に鳴る物音に精神的ストレスを感じ始める。
中でも二階で鳴るオルゴールの音には強い危機感を覚えたのだという。

Y家には2016年までYさんと両親が同居していたが、両親は高齢の母(Yさんの祖母にあたる)の介護のために実家のある■■県へ移り住んだ。そのため自宅にはYさんの両親が所有していた物が多い。オルゴールが二階のどこから鳴っているのかYさんは知らなかった。

はじめは無人の二階で高い音が一瞬鳴るだけだったが、そのうち音階が分かる程度に鳴り続けるようになった。Yさんはオルゴールが鳴るとテレビの音量を上げるなどして極力無視をするようにしていたものの、しつこく鳴る音に恐怖よりも苛立ちが勝り、ある時様子を見に行くことにした。
オルゴールから鳴る曲は童謡「こいのぼり」であった。Yさんが音のする方へ近付くと、ドサッという何かが落ちる物音がして、オルゴールは止まった。
その先には、物置部屋に置かれた五月人形があった。

[Yさんがその時実際に撮った写真]


五月人形の専用ケースにはオルゴールが内蔵されており、中央下部にあるネジを巻くと「こいのぼり」が鳴る仕組みとなっている。

Yさんはこれまで自宅に五月人形があることに何の疑問も感じていなかったが、Yさん含めきょうだいに男児は居なかった。
五月人形を入手した経緯についてYさんが母親に電話で尋ねると「ヒーくんの人形」と答えた。
Yさんは“ヒーくん”という人物に心当たりがなく、詳しい話を聞こうと質問を重ねたところ、母親の態度が急変し「ヒーくんのでしょ!」とヒステリックに叫んだ。
Yさんは怖くなり、それ以上母親に人形のことを尋ねるのを止めた。

その後も自宅ではオルゴールが鳴り、さらにドサッという落下音もセットで鳴り始めた。
あまりの不気味さにYさんは自宅に居られなくなり、事情を話して知人の家で寝泊まりするようになる。その際知人に定点カメラを設置してみることを提案される。
提供された映像資料は、その頃撮られたものである。

[映像資料]


機材の調子が悪く、オルゴールが鳴り始める瞬間は撮れていなかった模様。
映像では「こいのぼり」のオルゴールが一部流れ、音が止まった瞬間に黒いものが上からドサッと落下する。よく見ると人毛のようにも見えるが、この部屋でそのようなものが落ちていることはなかった。


[落下物が映るシーンの静止画]


映像を確認したYさんは自宅をそのままに、引っ越しを決意した。

現在は無人の家となっている。


【考察】
・“ヒーくん”という男児の存在がこの怪奇現象に大きく関わっている可能性がある。
・Yさん協力の元、戸籍謄本を確認してもらったところ、子の数はYさんの認識と相違なかった。
・五月人形は一般習俗上では男児の誕生を祝うものとされている。また、人形は身代わりとなって災厄から子を守るものとされる。
・“ヒーくん”は戸籍に載る前に他界したこの世に生まれなかったY家の長男であると仮定する。
・五月人形が、何らかの理由で誕生しなかった男児の“身代わり”となったのであれば、現在の人形は“ヒーくん”である可能性がある。


【補足】
▼Yさんが必要な荷物を取りに家へ立ち寄った際、近隣の住人に「親戚のお子さんですか?」と声をかけられた。
言っている意味が分からなかったYさんに近隣住民は、最近この公園で立ち尽くす見慣れない男児を見かけ、どこの家の子かと聞くとYさん宅を無言で指差した、といった内容の説明をしたという。

▼周辺の住民に聞き取り調査を実施したところ、Y家が無人の家となっていることに驚くような様子を見せた。

▼毎日夕方の散歩コースとしてY家に面した道を通る女性は、家の中でこどもが走り回るぺたぺたという音を聞いており、その足音が「ひとりじゃなかった」と証言した。

▼Y家のあるエリアの担当である配達員は、玄関のドアを内側からガチャガチャと揺らす音を耳にしており、「鍵の開け方がわからないこどもの仕業だと思った」としている。
さらにその際、ドアのすぐ向こうで声らしき音も聞こえたという。こどもにしては太く、くぐもった大人の声で「おあぁなん」と言っていたのが不気味だったのでよく覚えていると配達員は証言した。
(「おかあさん」と呼んでいる?)

▼Yさんの知人が事情を聞きつけY家を外から観察していたところ、二階の窓のカーテンが揺れて、隙間から呆然と部屋に立つ大人(女性のように見える)と、その手を引く小学生ぐらいの男児の姿が見えたという。

▼他にも、オルゴールの音が聞こえる、階段を物凄い勢いでかけ下りる足音が聞こえる、こどもの小さな笑い声が聞こえる、大人の喃語が聞こえる、など数々の現象が起きているため、学会は怪異汚染除去の専門機関へ引き継ぐ流れとなった。

Yさんはしばらくこの件には関わりたくないとしている。

【追加情報】
Y家が建つ前、この土地には小さな4階建てのビルが建っていた。ビルは火災により全焼、その際火から逃げようとした若い女性が4階の窓から飛び降りて亡くなったとの情報あり。
Y家で疑似家族形成か。関連性の有無、真偽は定かではない。

(※Yさんと共に一連の報告を受けたYさんの知人には「ふたり寄り添って暮らしているのかもしれない」と情をかけるような言動が見られた。必要のない同情は危険であるため、個別にカウンセリングを行った。現在の精神状態に問題はない。
専門機関には早急に、徹底した怪異汚染の除去に取りかかるよう依頼済である)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?