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ポスターの目玉歪み現象について

【概要】
広報マスコット紹介ポスターに歪みが生じる現象を記録した。


問題のポスター

 

【経緯】
枯レ尾花調査学会(旧 日本怪異調査学会)には、一般向け広報が存在する。公式マスコットは学会が初めて入手したとされる怪異生物の記録写真を元に作成された。


怪異生物1号とされる写真

 

2024年9月10日正午ごろ、マスコットの紹介ポスターを一新し、各所に設置。同日21時ごろ「ポスターの絵柄が歪んでいるようだ」という匿名での通報を受ける。
怪異現象発生の可能性があるとして、一般市民の目に触れる場所のポスターを全て回収。
学会の怪異生物を専門とする研究班の施設にて定点観測を実施。ポスターは物質であると、怪異物質を専門とする分析班も翌日に観測を実施し、合わせて二日間ポスターの歪みを調査した。

【記録】
[研究班]
2024年9月10日
・21:36 観測開始、既に歪んでいる。マスコットが身を引くような動きとなっている。
・23:49 身を引いていたマスコットが身を乗り出すように移動。膨張を確認。
2024年9月11日
・1:33 さらに膨張が加速。目を中心に膨らんでいる。
・2:30 原型が無くなるほど膨張。周りの文字はポスター外へ押しやられている。
ここで機材トラブルがあったため、観測部屋へ研究員が立ち入るとポスターは元に戻っていた。


[分析班]
2024年9月11日
・20:00 観測開始、変化は見られない
・22:55 マスコットの目が大きく歪み始める
・23:28 渦を巻くように歪みは加速し、マスコットの目の周辺が原型を無くす。
・23:57 渦がピークを迎える。同時にカメラが横になぎ倒され、撮影が中断される。
無人であることが発現の条件であると推測した分析班はしばらく観測部屋に入らず、外から様子を窺った。機材類が床を引き摺る音を聞き取った分析班は、危険な状態であると判断し部屋のドアを開けた。ポスターは元の絵柄のまま、機材類はポスターに引き込まれるような形で散乱していた。


【考察】
・ポスターの歪み方によって周囲に物理的な影響を与える可能性がある。
・ポスターの歪みはマスコットの“目”を中心に発現する。
・ポスターの歪みが発生する条件は、ポスターが人の目に入っていないことである。
・ポスターの歪みは、カメラを通せば確認することができる。
・最初にポスターの歪みを通報した人物はカメラを通してポスターを見ていた?

【追加資料】
通報時の音声を入手。
(以下、通報者の音声のみ書き起こし)

「あのぅ、すみません。おたくの所のポスターなんですけどね、なんかこう、ぐにゃってなってて……」
「いやポスターがというか、えっとぉ、このキャラクターそのものが動いてるっぽくて、ヤバくね? みたいな。ほらおたく、怪異屋さんやってるでしょ?」
「え、そうなんですか? へぇ。いやいやでも絶対動いてるって、確かに今この目で見てるんですよ。怖いの苦手なんだけど俺……どうしよっかなぁ」
「え!? 言うの遅いって! もう普通にペタペタ触っちゃってるから!」
「なに、場所? あぁ、どこだここ? えっと……たぶん、■■町の■■■■通り付近だったと思います。たしか、その辺りで……だった、はず」
「とにかく俺ここから動けないんで、早めに回収してってもらえます?」
「離れてって言われてもさぁ、だから、俺ここから動けなくて、なんでかなぁ、なんでだよほんと、なんで、どうして、俺だって帰りたいんだよ、どうして、どうして、どうして、どうして!」
「だって、俺悪くないのに、普通にいつも通り、いつも通りだったのに、遅くまで仕事して、くたくたで、こんなことなら何もかも投げ捨てて行きたいところへ行けばよかった、なんでこんなところで俺は、嫌だ……」
「…………はい、すみません、お願いします。たぶん、見つけられないと思いますけど…………でも、お願いします。探しに、きてください」

通報者の様子がおかしかったため近くの調査員を現場へ向かわせ、通報者の保護とポスターの回収を依頼。
調査員は「人間はひとりも居なかった」として、ポスターのみ回収した。


回収された現場のポスター。“ペタペタ触っ”た痕跡がある。

 

■■町■■■■通り付近の道路では先月、バイクの死亡事故が発生している。



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