見出し画像

課題を1つ1つクリアし、少数精鋭で進めた3年間――カラダノート・東証マザーズ上場までの道のり【前編】

2008年の創業から12年、株式会社カラダノートは2020年10月27日に東証マザーズに上場を果たしました。上場までに訪れたさまざまな紆余曲折をどう乗り越えていったのか。取締役の平岡晃、管理の吉村淳、広報の彦坂真依子の3名で座談会を行いました。前編では、上場準備をスタートした2017年から、承認が下りるまでを振り返ります。

上場により、今までになかった大企業やメディアからの問い合わせが増えた

画像2

株式会社カラダノートは、2020年10月27日に東証マザーズに上場しました。代表の佐藤竜也が1人で創業してから約12年、ビジネスモデルは時代に応じて変化させながらも、軸となる「健康領域」への想いは一切ブレることなく進化してきました。

2016年に「家族の健康を支え 笑顔をふやす」というビジョンを社員全員で再定義し、ママを起点としたサービス提供をする事業を展開。現在(2020年12月)は、ファミリーデータプラットフォーム事業をメインに、幅広い世代のライフステージに合わせたコンテンツやサービスを提供しています。

カラダノートが東証マザーズに上場承認を受けたのは2020年9月23日。上場承認が公表されてから、会社のステークホルダーの皆様や、社員の家族・友人から数多くの反響をいただきました。

彦坂「上場という大きい階段をひとつ登ったことによって、市場からの見られ方が変わった部分はあります。問い合わせもたくさん来るようになりましたし、取材させてくださいという話も来ています。

今日もちょうど佐藤が話していたのですが、会社としてのステージが上がったことによって、今まではアプローチしたくてもできなかったような大企業や、企業としての先輩からお声をかけてくださるようになっています。

対応中のものも含め、少しずつメディア露出は増えて、コーポレートサイトのアクセスも何倍にも増えてきました。」

妊娠育児層をメインターゲットにしたビジネスモデルのため、これまでは市場への大きなアプローチやタイミングが難しい部分もありましたが、上場を機に広がりを見せています。

さまざまな部分で上場の影響力を感じている現在。ですが上場までの道のりは、決して順風満帆ではありませんでした。

業績面は社長が、コーポレート面は平岡が中心となる役割分担

画像1

カラダノートがかねてから上場を見据えてはいたものの、本格的に準備を始めたのは2017年のことでした。中心になって進めた平岡がカラダノートに入社したのは2017年2月。コーポレート業務全般的に担当するとともに、監査法人との面談など、上場準備をスタートさせました。

平岡「2017年の4月〜5月から面談を始めました。監査法人を決めて、最初にやらないといけないのは、課題調査というもの。カラダノートが上場するにあたってこれが足りませんという課題をもらうわけです。まだ社名が旧社名の『プラスアール』の時でしたね。そこから課題を1個1個潰していく、地味な作業が始まりました」

監査法人から提出された課題調査報告書には、人やシステムに対する指摘の割合が高くなっていました。そこで平岡は、稟議システム、勤怠管理のシステム、業績管理のシステムなどを導入し、さまざまな情報を可視化できるようにしました。

平岡「上場に向けて重要なことに、『業績をいかに成長させていくか』と、『コーポレート全般の体制の方をどうやって整えていくか』という大きく2つがあります。前者は社長を中心に、コーポレート体制整備は私を中心にやっていくことにしました」

社内に、実際に上場を経験したことのあるメンバーはゼロ。その中でも平岡は、前々職で上場準備の経験があったため、主軸となって体制準備を進めていきました。一方でそのプロセスには、たくさんの反省点もあると感じています。

平岡「今でこそfreeeやマネーフォワードなどのクラウド会計サービスが市民権を得ていますが、その当時は、存在してはいるものの、まだ知名度が低かったり、監査法人が受け入れ難かったりする側面がありました。

それもあって、当時は勤怠に課題があるから勤怠システム、会計に課題があるから会計システム、というように、課題に対して部分部分でツールを入れていってしまった。今考えると、最終的なゴール地点を考えてシステムを入れられるとよかったなというのは反省点ですね」

少しずつ会社としての体制を固めていく中で、財務と経理を明確に切り分ける必要がありました。そして2019年に財務経理担当として吉村が入社。そこから、管理体制が強化されていきました。

少数精鋭で進めつつ、適切なタイミングで人材を増やす

画像4

平岡「監査法人からは、管理体制について最初から課題と言われていました。『まだですか、まだですか?』と急かされながら(笑)、1年くらいは財務経理の担当者を探した気がします」
吉村「上場にあたって有価証券報告書など、開示資料を作る必要があります。あと税金回りですかね。そのあたりの経験者がいないという状況で、自分は上場企業でそういった経験をしていたので、カラダノートに不足しているピースをある程度埋められるだろうということで入社しました」

上場企業で経理業務の経験がある吉村の入社は、カラダノート上場に向けて大きな一歩になりました。

またカラダノートは、上場時点でも約30名の少数精鋭。その中でも、IPO業務に関わるメンバーは非常に限られた人数で進めていました。

平岡「上場するにあたって管理部門はすごく重要で、期限通り出さなきゃいけないものが大量にありますし、同時に一番不正を働きやすい部門でもあります。

その部門に対して牽制を働かせるために、通常業務での切り分けを行いつつ、IPO業務を並行してやっていかなければなりません。そこにはある程度人数が必要になります。

IPO業務は、自分たちの会社内で全て行う会社もあれば、コンサルを入れて進める会社もありますが、カラダノートは自分たちでできると思ったので、コンサルは入れずにやってみました」
吉村「そこはすごいですよね。新規上場企業の中で最小人数に近いんじゃないですかね?しかもコンサルを入れずに、最初のフェーズは平岡さん1人でずっとやっていたことを考えると、それはもう誇れることだと思います」
平岡「皆さんの協力があってできたことです。大変なことも多かったですが、竜也さん(代表の佐藤)にIPO準備の過程においては過剰な心配をかけずにできたかなと思っています」

コーポレート側の課題を厳しく突かれた、上場への大きな山「証券審査」

画像4

2020年に入ると、証券会社による審査が始まりました。証券会社の担当者が、東京証券取引所(以下、「東証」という。)に推薦状を書くだけの信用に足る企業かどうかをチェックするものです。事業面、管理体制面、どちらもさまざまな角度から質問されるこの審査は、上場承認にあたり非常に大きな山となります。

平岡「事業概況、管理体制、リスクコンプライアンス・・・。毎回100問くらい質問をされて、それに対する回答とエビデンスを2週間後のほどの期限で用意します。1回目の審査で、個人情報の管理体制など法務面の体制を整えてくださいと強く言われました。

それらの体制強化と課題の潰し込みをしたのが4月〜6月くらい。時間的にもギリギリの状態でした。業績の進捗は良かったので、コーポレート側が詰められて遅れてしまうのだけは避けなければならないなと、私の責任だなと感じました」

4回の証券審査を通過すると、その後は東証審査が待っています。今後は東証の担当者からヒアリングを3回にわたり受けていきます。

平岡「証券会社が審査してくれたあとなので、東証審査での質問はざっくりしているというか。証券審査の3分の1くらいの質問数で同じようなことを聞かれるので、私は東証審査が大変だったという記憶はそんなにないです」
吉村「いや、自分は死にそうでしたけど(笑)。でも結果的に東証審査はストレートで通りましたね」

最後の東証審査が終わると、ほぼ上場承認が下りるだろうという見込みが立ちました。

そして上場承認の当日15時、吉村が印刷会社で開示資料を提出。平岡が情報の開示がされていることを確認したのち、彦坂が東証の記者クラブに資料を投函しに行きました。

彦坂「こぼれ話なんですが、その日に投函するのはホチキス止めされた10枚ほどの資料でした。でも私は何を勘違いしたのか、100ページくらい目論見書も投函しなきゃいけないと思っていて。しかも投函する時に必要なのは60部。だから、100ページくらいの重い資料を持って、ふらつきながら東証に着いたら、証券会社の当社の担当者の方に『今日はこれじゃない』って言われて(笑)、そのまま持って帰ってきました。その後3日くらい腕が痛かったです(笑)」

東証で情報が反映されたことが確認できると、ようやくカラダノートのWEBサイトのIRページが立ち上がり、情報が公になりました。カラダノートが大きな一歩を踏み出した瞬間でした。

(後編に続く)

・・現在、採用募集中です・・