見出し画像

「許す」ための具体的方法 許す技術②

前回は「許すことがいかに大切か」という話をしました。

今回は、どうしても許せないことを許すための具体的な方法を並べてみます。

注・必ず「負担のかかりすぎない」範囲で実行してください。苦しい出来事を思い出すだけで辛い方、発作に襲われるなどの場合は、医療機関に相談の上適切なサポートを受けるようお願いします。

さて、ここでご紹介する方法は全部で3つです。

1 感情を出し切る
2 行き止まりに着くまで原因を検証する
3 許せない相手を「乗り越える」

具体的な方法の話なので、淡々と行きます。

1 感情を出し切る

許せない出来事は、あなたの心の中にムービーのような形で保存されていますよね。

そこに誰がいたか。どんな言葉があなたに掛けられたか。あなたはどんな気持ちになったか。あなたはそのムービーがちらつくたびに逃げたくなって、頭の中から振り払おうとするはずです。でも、やはりことあるごとに「それ」の再生が始まる。

…不快になるとわかっているのに、どうしてこんなことを繰り返してしまうのか。

その原因の一つに「あなたの感情が解放されたがっているから」ということがあるのではないでしょうか。

あなたの中にトラウマのようにこびりついたそのシーンが実際にあなたの身に起こったあの時、あなたは何かの感情を押し殺してはいなかったでしょうか。

苦しい。痛い。怖い。悔しい。憎たらしい。そのようなマイナスの感情が確かに沸き起こったけれど、そのような感情を感じてはいけないと、自分に禁じてはいなかったでしょうか。泣きたいのに、泣けなかった。怒りたいのに、怒れなかった。苦しかったのに、平気なふりをしていた。

多分あなたは無意識に、問題のシーンを思い出すことによって、その時眠らせた感情を解放しようとしているのではないか。

であるとすれば、その時の感情を存分に味わうことができたなら、そのシーンを思い出す必要はなくなるはず。

そう理屈通りにいくか?と疑わしく感じられるかもしれませんが、私自身も実際に試して効果のあった方法です。

許せない出来事、そのシーンを思い浮かべると、嫌な気持ちがブワッと心の中に広がるはず。その気持ちを押し込めて隠してしまうのではなく、どんどん外に出してあげてください。

具体的には、人に話すか(ただし聞いてもらうだけ。共感などは求めない)、紙に書き出してください。もうなにも言葉が出てこなくなるまで。
今後「許せないあのこと」が心に浮かぶたびにこれを繰り返します。

またそうでなくても、なんとなくもやもやと気持ちが晴れない時は、そのモヤモヤをなるべく言語化してみると、思いもしなかったような形で「許せないあのこと」に繋がる場合があります。

嫌な気分は、抑えこまず言葉にして吐き出す。これ大事です。

2 「なぜ」を問い続けてみる

さて、1を繰り返しやっていると、思い出したくもない、見たくもない、でも思い出さずにいられない「許せないあのこと」が、ずいぶん冷静に観察できるようになってくるのではないかと思います。

そうなったら次の段階にいきましょう。「なぜあのことが起こったのか」について考えてみます。

あなたを傷つけたあの人は、なぜ、あなたを傷つけずにはいられなかったのか。これを「あの人が悪人だったから」で終わらせず、「あの人はなぜ悪人になったのか」「なぜ悪を働かずにいられなかったのか」というところまで想像してみるわけです。

例えば私の場合…私が許そうと試みたのは母親でしたが、なぜ母は私の人生をコントロールしまくったのか?

「母は祖母に愛されたかったから」というのが、私の考えた原因です。母もまた、人生を祖母にコントロールされ続けた人だったから。母は祖母の理想の娘であるために、自分の娘である私を完璧に育てる必要があったのです。(実際私は、祖母の前では演技をするように、学校の成績や収入や肩書きなどを「盛る」ように言われていました)

あなたを傷つけたあの人は、いったいなぜそんなことをしたのでしょう?
相手にも相手なりに、何か理由があったはずです。

こういう話をするとよく勘違いされるのですが、私は「あなたを傷つけた人は悪くない」という話をしたいわけではありません。もちろん、「あなたが勝手に傷ついただけ」という話でもありません。

あなたを傷つけたあの人はなぜそんなことをしたのか。本当の答えは分からないとしても、想像して、理解してみる。最低のクソ野郎のことも、そいつの考えを想像して、理解して、納得してみる。「納得」には、非常に強い力があります。人は良くも悪くも「納得」した対象については、考えるのをやめるようにできているからです。とりあえずでも納得することができれば、相手への生々しい怒りは確実に薄れていくものです。

世の中の9割9分の人は悪意なんかなくて、「相手のためによかれと思って」とか「自分の心身を守るために仕方がなく」とか「自分ばかり損をしているから、その分を取り返したくて」とか、そんな理由で悪いことをするものなのです。それが客観的に見て正しいかどうかは別にして、本人はそういうつもりです。

「なぜ」を繰り返した先には必ず「相手が弱い人間だったから」という納得が待っているはずです。

3 許せない相手を「乗り越える」

1を経て2の段階を越えると、かなり高確率であなたの「許せない出来事」は「恐ろしい存在に圧倒された、傷つけられた」という物語から「弱い人間に利用された」という迷惑話へと変化を遂げているはず(まあこんな言い方はサックリ言い過ぎで、実際にはこの変化こそものすごく大変なことではあるのですが)。

さて、ここで改めて、
許すということについて別の角度からもう一度考えてみましょう。

個人差はあるでしょうが、幼い子どもや動物のすることは、許せる人が多いはずです。

大人があなたのスマホを壊したら腹が立っても、2歳の子どもがあなたのスマホを壊したら、そりゃもちろん悲しいし最悪ー!だしガッカリするけれど、「子供のしたことだからな…」と、水に流そうとするのではないでしょうか。

なぜ子供なら許せるか。それは、子供と自分との間に「高低差」があるからです。子供は大人よりも分別がなく、知識もなく、判断力も大人より劣っているから(これは子供が悪いのではなく、経験がないのだから当然のことです)。

子供や動物を許せるのは、子供や動物が自分よりも弱い、幼い、いわば、自分より下の存在だからです。

ですから、もしあなたが誰かを許せないとするならば、あなたはその相手を「対等な存在」として認識しているということです。少なくとも、自分と互角以上の存在だと思っているはずです。

だから、この際それをやめてしまえばいいのです。自分を相手の上に置く。または、相手を自分の下に置く(あなたの心の中でのみそのように扱うだけで、相手にそんな失礼なことを伝える必要はありません)。

相手の行動が弱さゆえだった、と認識できた後でなら、それほど苦労なくこの切り替えが行えるのではないかと思います。

相手が劣った存在だと認める。

するとどうなるかというと、腹を立てるのがバカらしくなります。

ここでも例を挙げると、私は母のことを「子供っぽくて、考えの甘い人なのだ」と決めてしまうことにしました。というか、冷静に観察してみるとそんなのはわかりきったことでした。

この考えは非常に役に立ちまして、母がくだらないことを言ってきても仕方がないと思えるし、たまに母の素敵な部分が垣間見えたとき、そこに心底感動できるようになるのです。

親に腹を立てている多くの人、自分の親は毒親だということに気づいている人たちが、親に失望したと言いながらも親を許すことができないのは、心の底の方で、親を見くびることができない、親に対して諦められないからだと思います。

親は絶対に自分よりも偉い、自分よりも上だという子どもの頃の思い込み、あるいはそうであって欲しいという願いを引きずってしまうのかもしれない。子の愛というのは偉大で、切ないものですよね。

しかし、1、2のステップを正確に、じっくり時間をかけて踏んだ後でなら、親を許す=親を乗り越える ことは十分に可能だと私は考えます。

まとめ

まとめるとつまり、許すための具体的な技術というのは、

飲み込んだ自分の感情を吐き出し終える>客観的に物事を観察し、敵の弱さに気づく>敵を乗り越える

という3ステップによって成されます。

ちなみに「推しにも石油王にも出会えない私たちの幸福論」では、特に1の方法をもっと詳しく解説しています。

しかしこうやって具体的な方法論を読んで見ても、やっぱり許したいという気持ちになれない、あるいは、許したいと頭では思っても心が拒否をする。そういう場合が大いにあると思います。許せないことを許せと言われて、はいわかりました!なんてすぐ許せるようには、人の心はできていない。

実は、ここのところが最大のポイントだと私は思っていますし、それがこの本を書いた理由でもあるのです。

というわけで次回は、それでもあなたが「許す」を選択できない理由について。↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?