紅の豚のフィオはやっぱり凄かった
東京大学航空宇宙工学科/専攻 Advent Calendar 2019 12日目の記事です。昨日のtesiyosi君の記事に引き続き学部4年生の若造がお送りします.
今回は航空宇宙の人が卒業するための最後の関門である卒業設計で選んだ水上機のお話をします.
卒業設計とは
弊学科にはシステムコースと推進コースがあり,システムコースは航空機と宇宙機から選び,推進コースは好きなエンジン(ロケット,ジェット,レシプロ)を選んで12月から2月までの3か月間で設計する卒業設計という素敵な必修科目があります.詳しくは以下の航空宇宙工学科のサイトを参考にしてください.
※今年の推進コースではレシプロエンジンの希望者がジェットエンジンに飛ばされたらしいので全員が好きなものを設計できるわけではなさそうです.
飛行機の選定
航空機を設計するコースでは11月の下旬にガイダンスがあり,設計したい航空機を既存機のデータを参考に設計要求を決定することが求められます.
私は水上機を選んだのですがその理由の一つが紅の豚という映画です.
ハイスペック女子フィオ
多くの人がご存知のとおり,紅の豚は豚が飛行機に乗る物語でその主要なキャラにフィオという女の子がいます.
このフィオという子は主人公マルコの飛行機を一人で設計したハイスペックなキャラクターでこの映画を見た学科民は以下のようにコメントしています.
そもそも,卒業設計で私たちが設計するところは主要な構造までであり実際に飛ぶ飛行機とは多少のギャップがあり,17歳の時点で航空宇宙工学科の卒業生より優秀であるということは否めないでしょう.また,飛行機ですら難しいのに彼女は更に難易度の高い飛行艇を設計しているという点で圧倒的な実力の差を感じます.
ではこのフィオがいかにすごいかを水上機や飛行艇の設計に焦点をあてて解説していきます.
着水できる飛行機の種類
私は何も知らなかったのですが,そもそも着水できる飛行機には大きくわけて以下の3つ種類があるようです.(この違いを17歳で知っているフィオ凄い..)
Float plane
(↑Float Planeの例:https://www.turbosquid.com/3d-models/3d-seaplane-dhc-6-arnold-model-1143495 より)
胴体や主翼からフロートを下してフロートの浮力により浮く飛行機をフロート機と言うそうです.
Flying boat
(↑Flying boatの例:https://www.shinmaywa.co.jp/aircraft/amphibian/index.html)
Flying boat(飛行艇)は主に胴体で着水する飛行機のようです.日本の新明和工業という会社が製造しているUS-2という救難飛行艇はこれにあたります.
Amphibious aircraft
(↑Amphibious aircraftの例:https://www.vikingair.com/viking-aircraft/dhc-6-twin-otter)
Amphibous aircraftは水陸両用機と呼ばれ,フロートや胴体にギアがついたものを言うそうです.ちなみに先ほどの新明和の飛行艇はギアがついてるので水陸両用飛行艇のようです.
水上機が難しい理由:フロートの設計
この三つの種類がある水上機に関して難易度の高い点を考察していきます.
とりわけハードルが高いものはフロートの設計で,以下のような要素でフロートと船体は構成されています.
(↑Float の構成要素:http://avstop.com/ac/flighttrainghandbook/characteristicsofseaplanes.html)
浮くだけしか役割が無いと思われていたFloatには様々な機能があるため,標準的な飛行機よりも設計項目が多く,設計に多くの時間を要します.
1つ例を挙げて説明すると,STEPというのは水面に接するところの段差で,これあることでスリップストリームと呼ばれるらせん状の空気流が発生して離陸距離が短くなるそうです.
マリオカートのSSと同じですね!
(↑マリオカートのスリップストリームの例:https://www.nintendo.co.jp/3ds/amkj/technique/technique5.html)
まとめ
少し調べただけですが水上機はどうやらやることが多そうです.卒業設計は普通にしんどいといわれているのに,設計項目が増えるなんてしんどい..
フィオは17歳で飛行艇を設計し納品までした天才エンジニアであることが少しは実感してもらえたでしょうか?
齢23の私は心が折れそうなので研究室の同期とマリオカートをしながら現実逃避をします.
まだ卒業設計を始めたばかりでわからないことが多くよくわからない記事になってしまいました.明日は構造系の先輩がとても素晴らしい記事を書いてくれると思うのでそれを読んで勉強します.
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