「NPO法人」について
NPO法人というものがある。<「Nonprofit Organization」又は「Not-for-Profit Organization」の略で、広義では非営利団体のこと。狭義では、非営利での社会貢献活動や慈善活動を行う市民団体のこと。最狭義では、1998年3月に成立した特定非営利活動促進法により法人格を得た団体(特定非営利活動法人)のことを指す。>という(Wikipediaより)。
米国だと、ビジネススクールを卒業した優秀な人材が、NPO法人に就職するのは決して珍しいことではないと聞いたことがある。そもそも、NPO法人の数も多いし、規模も違う。寄付金額もケタ違いである。日経の記事によれば、<米国の個人寄付総額は約34.6兆円(名目GDP比1.55%)。約1.2兆円(同0.23%)にとどまる日本の28倍だ。>とのことである。
日本の場合、NPO法人というと、「安い報酬」が当たり前のような印象がある。いろいろなところからの寄付金や公的資金で成り立っている以上、常勤の職員とはいえ、あまり高額の報酬を払うのが躊躇われる風潮があるのかもしれない。「清貧」を尊ぶ世の中の価値観も関係あるだろう。
その結果、「やりがい搾取」というか、関係者の使命感とか善意を踏み台のようにして、本来、払うべきものを払っていないことが当たり前のようになってしまい、そうした構造が常態化してしまっているとすれば、社会的にもいろいろと問題がある。
本来ならば、優秀な人材を確保するためにはそれ相応の報酬を払うのは当たり前であり、米国のNPO法人が優秀な人材を集められるのも、一般企業並みの報酬を支払っているからである。
優秀な人材が集まらず、ボランティアや半ば手弁当の人たちの善意で成り立っているような構図というのは、言い換えれば、企業経営的な目線で取り組めば、もっと社会に大きなインパクトを及ぼす可能性がありそうな活動であっても、イマイチ盛り上がらず、効率化や生産性も上がらないまま放置されてしまっているということになる。たいした給料も払えないから、本当は活動を続けたい人材であっても、生活面から継続することが難しくなる。担い手も、受益者も決してハッピーとは言えない状況である。
一方で、NPOを「隠れ蓑」のようにして、ひと儲けをたくらむ輩も後を絶たない。役所の公金が絡むような話に多い。怪しいコンサルタントが登場して、案件を仕切ったり、いろいろな登場人物が出て来て、不透明な経費が出て行ったりするようなケースは特に要注意である。役所の方も予算をつけたら仕事が終わったような感覚になってしまい、その後のチェック機能が十分ではないことも、横領とか不正受給といった不祥事の原因であろう。
<米国では市民による監視団体が非営利団体の財務や活動に関する情報を収集し、評価や格付けを行う仕組みがある。英国では政府から独立した第三者機関である「チャリティー委員会」が法人の認証や監督を担う。>とあるが、日本の場合、そうした監視を担う機能はなく、上記のとおり行政によるチェック体制もあまり期待できない。というか、誰が責任者なのかも曖昧である。
<NPO法人は設立趣旨書や事業計画書などを所轄の自治体に提出し、認証を受ける仕組みだ。その後は毎年、事業報告書などを公開し所轄庁に提出すれば済む。>と書かれているように、提出義務のある財務諸表(活動計算書、貸借対照表、財産目録)について、NPO法では統一的な会計基準は定められていない。NPO法人用の会計基準としては、「NPO法人会計基準」に準拠することが望ましいとされてはいるものの、実際には強制力はないので、NPO法人ごとにばらつきが生じてしまっている。これでは外部の有識者がチェックしたり、相互に比較検証することも難しい。
NPO法人への寄付金は税額控除もあることだし、ちゃんと正しい活動をしているのか、NPO法人によって個人の浄財が正しく使われているのかチェックすることは、社会的に見ても必要なことである。せめて、一般企業並みのチェックが行われるように、会計基準くらいは整備する必要があるのだろう。
NPO法人=非課税ということだが、たしかに、法人税関連では「公益法人等」とみなされており、特定非営利活動に関連する所得に法人税はかからない。一方で収益事業(法人税法施行令に定められている34業種)に関する所得には課税される。非営利活動だって適正に運営されていなければ、法人税を課税するということに改めれば、税務署も目の色を変えてチェックに来るのではないだろうか。
要するに、NPO法人であろうと、万事、せめて「一般企業並み」に型にはめるようにすれば、いろいろなことが改善できそうな感じがする。
子どもの小遣い帳みたいな稚拙な財務諸表は認められず、「NPO法人会計基準」への準拠が求められる。役所の認証を受けているんだから当然である。認証した役所だって責任がある。中途半端な活動をしていたら、普通の役所よりもずっと怖い税務署がやって来て、非営利活動とは認めてもらえず、しっかりと課税される。そうなったら、困る人たちが世の中にはたくさんいるのだろう。
たぶん、日本はNPO法人に対していろいろな意味で甘いのだと思う。甘いから、まともな給料を払えなくても、世間に大目に見てもらえる。大目に見てもらえるから、ますます増長する。悪循環である。
どんな目的で活動する組織であろうと、活動するからには義務も責任も求められるのは当然である。社会的責任というやつである。また社会的責任を果たせない組織は、営利だろうと非営利だろうと、しっかりと取り締まるしかない。