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全身ユニクロでユニクロ行くとき

ちょっぴり緊張することって多い。電車待ちの先頭とか、友達との待ち合わせとか、喫茶店で、さっき雑貨屋さんで買った透明なフィルムに包まれた新しい手帳を開きたくなってしまって、パリパリ音を鳴らしながらその手帳を取り出すときとか。あとはそう、全身ユニクロでユニクロに入るときとか。

電車待ちの先頭だとしても、私は降りる人が最後まで降りきるまで扉の横に垂直になって待っているから、椅子取り合戦の参加者であるサラリーマンたちから反感を買う。サラリーマンが私の肩にぶつかりながら私を抜かして大股で車内に入っていく様子を見ていると、だけど降りる人がかわいそうだから待っちゃうよなあと自分のことを慰めている。

友達との待ち合わせは、あんまり仲良くない人と待ち合わせするときほど緊張する。最初の顔、どうしようかなって迷ったりする。ニコニコとした顔で、しかも駆け寄れるのは上級者。手を振りながら携帯を鞄にしまいつつ、待った〜?と言えるのが一番多い気がする。私はただ、相手を探すでもなく真っ直ぐ前を見つめたまま黙ってる。相手が見つけてくれて、相手がどんな顔したか見てから自分の反応も決めるというひねくれ者。

さっき買ったばかりの新しい手帳なんて、それだけでテンションが上がってしまう。そんなに何冊も購入するものでもないから余計に自分の中で特別感が増す。最初は鞄の中で見つめるだけでいいのだけれど、そのうちだんだん、触りたくなってくる。表紙の質感を思い出したくなる。あ、1ページ目どうなってたっけって思い始めたら止まらないから、静かな喫茶店でも構わずに透明フィルムをパリパリと音を鳴らして新品の手帳を取り出す。ページをめくったら、その、硬くて真っ白な触り心地に「これからよろしくお願いします」と言わなきゃいけない気持ちにさせられる。


ユニクロの新作、なかなか良いって評判だよな。と、一人でフラフラ出かけている時にふと思い出す。そういえばあの駅に直結してるショッピングモールに大きなユニクロがあったよなと思い出す。わざわざその駅で降りて、ユニクロの目の前まで来て私は気づく。「今日、全身ユニクロだ」
店員の目が気になってしまう。店員に間違えられたらどうしようという無茶苦茶な考えも浮かぶ。
ええいだけど、買いたいもんね!と思っていざユニクロに入ってみる。
何人かの店員とすれ違う。大丈夫、害は加えられないはず。
手に汗、額にも汗、ギュッと手と手を握り締めて、私はそれでも店の奥に進める。それだけで強くなれる気がしてる。

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