世界一の貧困国が被災国を援助する不思議
一言でいうと
返報性の法則は国をも合理的な判断力を失わせる?
活用シーン
意思決定におけるバイアス
内容
1985年エチオピア。国の経済は破綻に瀕し、食糧供給は干ばつと内戦によって徹底的な打撃を受けた。そして、何万人もの民衆が病気と飢餓のために死に瀕していた。
このような状況にあって、エチオピアはメキシコに五千ドルの救援資金を送った。エチオピアの赤十字の現地職員が、その年メキシコ・シティで起こった地震の犠牲者を救済するために資金を送る決定を下したという。
この決定の根拠にあったのは、1935年にエチオピアがイタリアから進攻された時メキシコが援助をしてくれたお返しとしてとのこと。
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ (著),
この話は、「返報性の法則」というものの影響だ、と著者は言っています。返報性の法則というのは、何か施しを受けたら、それを返さないと気が済まない、という心のクセというか、パターンです。わかりやすいところでいくと、「試食をした以上は、買わなきゃいけない気がする」なんていう心の動きです。
さて、ここにご紹介した話は、人として感動する物語ではあるけど、エチオピア国民としては、ちょっと首をひねるシーンでしょう。
ただ、おそらく、このエピソードにおけるメキシコ援助を決めた人の頭の中には「あの時のお返しを!」という思いでいっぱいで、周囲のことが見えなくなっていたんじゃないかと思います。木を見て森を見ず現象とでも言いましょうか。部分最適をやらかしてしまったわけです。
そういえば、日本にマスクがないのに海外に大量に送った人もいましたっけ・・・。
何かしらの思いにとらわれると。人はそれが正しいと疑わなくなり、その方向とは別の考え方を一切シャットアウトして走り出すことも多いと思います。
ところで、日本ではお祝いをもらったりすると、お礼状を出したり、お返ししたりする習慣があります。最近はすたれつつあるこの習慣、実は、こういった返報性の法則に縛られないように、「あらかじめ何かしらのお返しをする」という習慣づけをすることで、判断を誤らない工夫だったのでは・・・?なんていうと考えすぎでしょうか。
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