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豆乳&漢方で、台湾スープナイト。2017.4.7 スープラボ・レポート

久しぶりのスープラボは、3月に訪れた台湾の味がテーマ。題して「豆乳&台湾スープ」です。とくに、台湾の朝ごはんスープでもある「鹹豆漿(シェントウジャン)」を、とことん研究しました。

鹹豆漿とはナニモノか?

さて、最初に、鹹豆漿(シェントウジャン)とはつまりどんなスープなの?という説明をしておきます。

豆漿(ドウジャン)とは豆乳、「鹹」は塩辛い、という意味。つまり、鹹豆漿とは直訳すると“塩豆乳”のこと。実際に食べられているのは、あたためた豆乳を酢と醤油のはたらきで、ふるふるとおぼろ豆腐のように凝固させたものです。具として小さな干しエビやザーサイ、油條(ヨウティアオ)と呼ばれる揚げパンや青ネギなどが入っています。
台湾で鹹豆漿がどんなふうに食べられているのかもこちらにまとめましたので、こちらもぜひお読みください。

さて、今回のスープ・ラボでは、この鹹豆漿の具や調味料をいろいろ変えて楽しもうという鹹豆漿バイキングを行いました。

鹹豆漿がどういう構成になっているかをご説明しつつ、バイキング内容の紹介です。

 1.豆乳

ベースになるのは、もちろん豆乳です。

豆乳にもいろいろありますが、高級品である必要はありません。台湾の豆乳は薄かったです。
ただ、無調整であることが肝要。今回はスーパーでごく普通に買える豆乳を使いました。これを温めます。温め過ぎると分離してしまうので注意しましょう。レンジであたためるのが吹きこぼれずこびりつかず、オススメです。

 2.調味料

基本は、酢と醤油です。豆乳と調味料があれば、鹹豆漿は成立します。酸と塩分が、豆乳を凝固させるのです。
酢は、普通の酢で構いません。

今回ご用意した酢。手前左から反時計回りに、千鳥酢(米酢)、富士玄米黒酢、ポン酢、台湾の工研烏酢、バルサミコ。台湾の酢を、と思い、酢として売られていた工研烏酢を買ってきたのですが、これウスターソースでした。でも台湾でも黒酢として売られているようです。アバウトですね。


続いて、醤油は、キッコーマンの濃い口しょうゆ、金麗醤油。粗塩も加えました。金麗醤油は少し甘めで、刺身醤油のような台湾の醤油です。

また、ラー油やチリソースを好みで振るとアクセントに。辛いのが苦手な人は、ごま油をかわりに使うとコクがつきます。辣油、石垣島の食べるラー油、豆板醤、山椒、胡椒、ごま油を用意してみました。

 3. 具材

一般的な豆漿店でよくある具材は、干しエビ、ザーサイ、青ネギかパクチー、そして油條という揚げパンです。岩海苔を使うこともあるようです。

今回のラボでは、これらの具材を他の具材に置き換えられるよう具材を用意してみたので、ご紹介します。

まずは、“うまみ”を出す素材。桜えび、ひき肉、そして豆腐。今回は、台湾から鹹豆漿に使われていた、小さな白い乾燥えびを買ってきましたので、それを使いました。日本では手に入りにくいので通常の桜えびでいいかと思います。

次に“歯触り”を出す素材。ザーサイ、メンマ、切り干し大根。ザーサイとメンマは、桃屋のもの。切り干し大根は醤油とごま油で下味をつけてあります。

“香り野菜”は、青ネギ香菜(パクチー)です。色味も添えます。

それから、忘れてはならないのが、“コク”“歯触り”を出す素材です。通常は油條(ヨウティアオ)という揚げパンを入れます。日本ではなかなか売っていませんし、作るのは大変なので、代用のものをいろいろ考え、焼いた油揚げ、仙台の油麩(あぶらぶ)を用意してみました。ゲストが松山あげも持ってきてくださったため、それもプラス。

さあ、準備は整いました!
うまみを出す食材(えび、ひき肉、豆腐)は、あらかじめ豆乳に入れてあたためてうまみを移し、追加でトッピングもできるよう卓上にも出してあります。

 4.味の構成

鹹豆漿のスタンダードな形は、これです。
豆乳+(醤油、酢)+(エビ、ザーサイ、青ネギ、油條)
詳しいレシピはcakesのこの記事で

それぞれのパーツの役割を見ると、
豆乳=うまみ、甘味
醤油=塩味
酢=酸味
辣油=辛み
エビ=うまみ
ザーサイ=うまみ、歯触り
青ネギ=香り
油條=コク、歯触り

となっており、ベースはシンプルながら甘、塩、酸、辛というおいしさの要素があり、そこに具材によってさらなるうまみや歯触り、香りやコクなどを複雑に重ねていることがわかります。

鹹豆漿のレシピを作るときは、これらの機能の部分が共通するものに置き換えるとうまくいきます。ただ、ベースの部分がすでに美味しいものなので、ある程度何を入れても間違いありません。

TwitterやFacebookで皆さんがいれていた具を見ると、
塩昆布/おろし生姜/長ネギ/青のり/すりごま/味噌/卵豆腐
麻婆茄子/しらす/ゆでた小松菜/あおさ天ぷら/揚げ玉(天かす)
そぼろ/フリーズドライパクチー/鶏むね肉/しめじ
と、アレンジいろいろ。

さて、参加者のみなさんそれぞれ、オリジナル鹹豆漿を楽しんでいました。聞いた中で、良さそうだったレシピをご紹介します。

ひき肉+黒酢+醤油+香草+石垣ラー油+エビ追加

ひき肉そぼろは、豚ひき肉を炒め、砂糖と醤油で味付けをしてあります。ぐっとうまみが増してリッチな鹹豆漿に。

豆腐+ポン酢+切り干し大根+千鳥酢

こちらは和風ですね。写真は青ネギトッピングですが、豆腐と油揚げを重ねると精進風になるというアイデアも。

実は今回、もう一つ具材を用意しました。それが、これ。

なとりのイカフライです。これを手で割ってトッピングすると、ジャンキーな味わいが楽しい鹹豆漿になります。「豆腐+玄米黒酢+イカフライ」「肉+香菜+イカフライ」などが美味しかったとのこと。楽しさもアップです!

台湾の豆漿店で出てくる油條や、蛋餅(ダンピン・薄焼き卵を巻き込んだ台湾風のクレープのようなもの)も食べつつ、みなさん相当量の豆乳を消費しました。

台湾スープについて

鹹豆漿をあれこれ試し、ここで終わっても良いのですが、台湾スープについてもう少しお付き合いいただきます。

実は台湾はスープ天国なのです。レストランのメニューにも本当にたくさんの種類のスープがあり、美味しいんです。

干し椎茸や干しエビ、煮干し、鶏や豚など、日本でも馴染み深い食材で出汁を取っているようで、すんなり入って来ます。

漢方素材や八角など中華独特の素材が使われているものも多いです。詳しくは、こちらのnoteの記事をご覧ください。

今回のスープラボでは、多彩なスープの中から、私が台湾で食べて美味しかった「四神湯(スーシェンタン)」という薬膳スープをアレンジして、出しました。

四神湯の四は、このスープに使われる漢方が4つあることに由来します。淮山(山薬)、茯苓、蓮子、芡実。効能などについてちょっと解説しますね。

●淮山(タイザン) ヤマイモ(自然薯)。滋養強壮、アンチエイジング。
●茯苓(ブクリョウ) キノコの菌核(サルノコシカケ)利尿、むくみ対策、精神安定
●蓮子(ハス) ハスの実。疲労回復、デトックス、便秘、カルシウム
●芡実(ケツジツ) オニバスの趣子 滋養強壮、精力剤

台湾の店にはこうした薬膳ミックスが売られていて、肉や魚と煮込むだけで美味しいスープができます。

私が台湾で食べた四神湯には、4つのスパイスの他に、なつめ、クコの実、ハトムギなどが入っていましたが、今回はなつめとハトムギをプラスしてみました。

スープベースの肉は豚や鶏のモツを使うのが本来ですが、新鮮なものが手に入らず、骨付きの鶏肉と、砂肝を使ってみました。ひたすら煮込んで、スパイスやムギは後から入れています。

できあがりは複雑な味わいです。でも作り方は材料をひたすら煮るだけと、とても簡単。
台湾のスープは全体にシンプルに作られています。具材が変わると、スープの味も変わる。余計なものを入れていないから、素材の味が引き立ちます。この四泉湯もとてもスッキリした味で、お店で食べた時には漢方の入った酒を好みでふりかけて食べるようになっていました。

中華料理といっても、野菜をさっと炒めたり和えたりというような家庭的な味の料理が多く、外食続きでもあまり食べ疲れない台湾グルメ。その最たるものが、スープだという気もします。

さて、約2時間の台湾ナイト、いかがでしょうか。台湾スープの雰囲気だけでも感じていただけたら幸いです。


スープラボ#16
2017.4.7(金)19:00〜 湯島イワシハウス




読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。