カレー玉 ÷ だし=カレースープ自由自在!2015.8.20 スープラボSPレポート・実験編
スープラボ後半は、いよいよカレースープの研究です。(前半はこちら)
ところで、インスタントの味噌汁はみなさんご存じですよね。粉末ではなく生タイプのあれ。具入りの味噌にお湯を注ぐだけで味噌汁がたちどころに出来上がり。そんな便利なインスタント味噌汁を手作りしたのが「味噌玉」です。
写真のボール状のがマイ味噌玉。味噌と鰹節、乾燥わかめ、それにすりごまを混ぜて丸めてあります。乾燥のねぎや青菜を加えても。お湯を注げばインスタント味噌汁と同じように、いつでも手軽に味噌汁が飲めます。
と、いきなり味噌汁の話から始まりましたが、今日の本題はカレー。今回ラボでお出しするカレーはこの “お湯で割って食べる” 味噌玉をイメージしたもの。いうなれば「カレー玉」というわけです。玉じゃないけど。
カレールウをお湯で割ると何になる?
さて、カレーといえば無視はできないのが、普段よく使っているカレールウ。カレールウには味、香り、うまみ、とろみ、油分など、カレーに必要なものがギュッと詰まっています。あれ、お湯で溶くだけでもかなり美味しいのではないでしょうか。
やってみました。
具は入っていないのでやや寂しいですが、味は十分。香りはむしろ具を入れたときより立っているぐらい。これをごはんにかけたら…
おいしい!もうこの後の実験はやめようかと思うぐらい、スパイシーでうまみのあるカレースープ発見です!
そう、ルウには様々な要素があらかじめ入っていて、カレー作りもルウさえあれば味は95%ぐらい決まったようなもの。
玉ねぎを飴色になるまでせっせと炒めたり、ケチャップやヨーグルトやインスタントコーヒーやすりおろしりんごを入れたり、私たちがカレー作りにかけているあの手間と工夫は無駄とは言いませんが、まあ、自己満足と思ってよいでしょう。
身もふたもない話をしてしまいました。これから作ろうとしているカレー玉はこのカレールウの要素を手がかりにして作る、うまみと香りと味のカレーベースです。これをお湯やさまざまなスープでのばすことで、濃度や味の好みを自分に合うようカスタマイズできます。
わずか10分!缶詰サバカレーで覚える「カレー玉」の作り方
今日のラボではカレー玉の基本構造を覚えてもらうために、料理デモからスタート。作るのはサバとトマトのカレー。材料はこれだけ。調味料はスパイスと油と塩です。
まずは「香り」。油に粒のクミンシードを入れて火にかけ、ゆっくりとあたためます。香りがたったところで、刻んだトマト1個分を入れます。
熱い油にトマトを入れるときは気をつけて。
少しトマトの水分を飛ばすことが大切。
ここで欲しいのは野菜の「うまみ」。トマトから水が出ていくときに、野菜のアクや臭みが抜けていき、うまみが強くなります。
たまねぎや長ねぎなども同様で、野菜は少し水分を出すように炒め煮してやると美味しくなります。水分が出やすくなるよう「塩」も少々加えて。水分が飛んだらカレー粉でさらに「香り」を重ねていきます。
スパイスは基本的に火を入れると香りが飛んでしまいますが、先に入れておくと素材に風味が染み込みます。ホールは最初に、パウダーは後でが基本。私はカレー粉は最初の方でも(たまねぎやトマトを炒めるときに)入れています。
そしてSBのしょうがチューブをまるっと1本!「辛み」「香り」をプラス。
しょうがもスパイスの一種。もちろん生でもいいのですが、チューブならすりおろす手間もかからないし、よい感じに「とろみ」もつくので便利です。
さらにピーナツバターで「コク」と「とろみ」づけ。これでほぼペーストはできあがったようなもの。
水気を切ったサバ缶を加え、軽く温めてできあがり。(詳しいレシピはこちらへ)写真はすでに水を加えて、スープ状にしたものです。
このように、カレーは材料を炒めながら「香り」「うまみ」「とろみ」「塩味」「コク」…などを必要量追加していきます。
カレーは複雑にするほど美味しいと思う人も多いのですが、やみくもに味を重ねる必要はありません。まずどんなカレーにするかをイメージし、それぞれの素材がどんな役割を持つのかを意識して作ると、シンプルな素材でも十分に美味しく仕上がります。このサバカレーも、カレーの基本と思われている炒め玉ねぎは使っていませんが、トマトとサバのうまみ、ショウガの辛味と香りで美味しさが足りないということはないと思います。
4つの「カレー玉」と3つの「だし」で作るカレースープ
ラボでは、このサバカレーを含め、4種類のカレー玉と3種類のだしを用意して、それらの掛け合わせでどんな味が生まれるか、みなさんに試してもらいました!まずは4つのカレー玉(カレーペースト)をご紹介します。
右から(1)魚介のレッドカレー、(2)豚肉とフルーツのカレー、(3)サバとトマトのカレー、(4)ラムとひよこ豆のカレー。
どんなカレーか詳しく説明します。
(1)魚介とたけのこのレッドカレー
あさり、えび、塩だらに、たけのこと長ネギを合わせてナンプラーで味付けした、さらっとしたカレー。こぶみかん(バイマックルー・カフェライムリーフともいいます)の葉とバジルを使うことでタイカレー風に仕上げてます。写真で上に飾っているのはバジルの葉。こぶみかんは乾燥葉で、煮込むときに入れます。
(2)豚肉とフルーツのカレー
バナナとパイナップルをたっぷり使った、甘いながらもしっかり辛みもあるカレーです。フルーツと相性の良い豚肉にしっかり塩をして、コロコロに揚げ炒めしたものを加えています。黒胡椒をがつがつ効かせてスパイシーに。
うまみのベースは飴色たまねぎ。ちなみに、たまねぎの甘みは透き通るまで炒めれば十分に出ます。飴色まで炒める意味は焦げた風味や色をつけるところにあり。味のイメージによって炒め度合いを変えています。
(3)サバとトマトのカレー
デモで作ったサバカレー。昨年のサッカーワールドカップ開催のときに世界のスープを調べていて、西アフリカにピーナツと魚、トマトを使った料理が多いと知りました。それにカレーを加えたらと思ったのが発端です。しょうがをどっさり入れて、辛みと風味をつけるのがポイント。写真のカレーには、デモでは入れなかったコリアンダーの粉末もたくさん入っています。
(4)ラムとひよこ豆のカレー
たっぷりクミンを効かせたラム肉と、コロンとかわいいひよこ豆のカレー。ラムから出るこってりした脂とうまみが豆にまとわりついた濃厚な味です。カイエンヌペッパーを大量に使い、ビリビリ辛い!北アジアの雰囲気をたたえたカレーです。たまねぎとトマトがベース。
そして、これら4種のカレー玉を割るスープはこの3種類。
手前より(A)チキンストック、(B)トマトブロス、(C)ホットウォーター。
(A)チキンストック
鶏ガラと少量の野菜をていねいに煮だしました。昆布やレモンを使った、水炊きのだしのようなクリアなチキンスープです。
(B)トマトブロス
半割トマト(今日はたまねぎも入れました)を、水からゆっくりと1時間半ぐらいかけて煮だしたトマトブロス。トマト味なのに色は透明という、不思議なスープです。カレー玉にはトマトをうまみとして使うことも多いので、とても相性がよいものです。
(C)ホットウォーター
気取った言い方をしましたが、要するにお湯。味の濃いものはこれで割るだけでも十分。他のスープと合わせて、軽く塩を入れてあります。
さあ、4つのカレー玉と、3つのブロス。簡単に考えても、最低12種類は試せる計算ですね。
それでは実験開始です!
うまみ、辛さ、塩味。味覚は想像以上に個人差が大きなもの。同じカレーを水で割った方が好きという方も、チキンブイヨンで割りたいという人もいるはず。スープの分量によって、とろみのあるカレーソースやサラサラのカレースープになります。隣の人と情報交換しつつ、自分好みの味を作ります。
「フルーツカレー×トマトブロス」や「ラムと豆のカレー×トマトブロス」が人気だったよう。ワイワイ盛り上がる!
スパイスと素材の組み合わせひとつで、味の世界旅行。
今日ご紹介した4つのカレー玉。思いがけない組み合わせもあるように見えますが、素材やスパイスはいたってシンプルです。
青トウガラシやココナツミルクがなくても魚介類にこぶみかんを加えるだけで一気にタイカレー風になりますし、ラムにクミンを合わせるとそれだけでシルクロードな雰囲気に。
スパイスを使った料理は世界各地にあります。その国で好まれているスパイスは土地の素材と相性が良いもの。作りたい味に対して何が一番「らしさ」を出してくれるのかを考えると、スープの性格がはっきりします。
作り方の基本はすべて同じ。
1 スタータースパイスの香りを油につけ
2 たまねぎやトマトなどベース野菜を炒めてうまみを出し
3 カレー粉と塩を加えて味と香りをつけ
4 食材を加えて加熱し必要に応じてスパイスをプラス
5 好みのだしや水でのばす
4番で止めたものが、カレー玉。軽くゆるめてカレーとして食べても、さらっとのばしてカレースープにしても、あるいはごはんに混ぜてドライカレー風でも、アレンジ自由自在です。少人数分でもできますし、大鍋でたっぷりカレーを作ってしまうよりコンパクトに保存できて便利です。ぜひお試しください。
さて、スープラボは盛況のうちに終了。帰り際にエスビー食品からスパイスの嬉しいプレゼントが。私も、フェネグリークというスパイスをいただきました。使うのははじめてです、どんな香りなんでしょう。新しいカレーができたらご紹介します。それではまた次回!
拡大版スープラボ「夏、スパイス、スープカレー」
presented by 有賀 薫
2015.8.20 19:00-21:00 神保町 LAB and Kitchen
協力:エスビー食品株式会社(鵜川俊明・浅賀俊介)
鍋提供:ル・クルーゼジャポン株式会社
調理補助:杉山トモ子
Special Thanks:矢嶋文子・大塚美保子・凛福子
写真協力:小須田夏美・鷲頭修作・西山友美・都久美
プロデュース:サカタカツミ
読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。