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賞をもらった、その後で

昨晩、年に一度開催される料理レシピ本大賞の発表があり、『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』が、料理部門で入賞しました。

壇上でアンバサダーであるキャイ~ンの天野ひろゆきさんから賞状とガラス皿的な盾を手渡してもらった。編集の野本有莉さんとキャンベルスープ缶のTシャツを色違いで着て、写真見ると親子みたい。

帰ってnoteを覗いたら、野本さんがすでにこんな記事を書いてくれていた。ここまでベタ褒めされることはめったにないので、シェアしておきたいと思う。

実は昨年、私はこの授賞式の会場にいた。壇上に上がってスピーチする著者たちを見て、いつか私もあそこで自分の本について語りたいと願った。まさかこんなに早く実現できるとは思わなかったけれど、でも若い野本さんの「レシピ本大賞とりたいんです」という無謀な目標設定を聞いたとき、あの光景をすぐ思い浮かべたし、壇上でスピーチする自分をイメージしながら、この一年仕事をやってきた。それは、大きなことだったと思う。

さて、料理に限らず、創作というのは、海を沖に向かって泳いでいくようなものだ。安全な浜からはどんどん遠ざかるし、向こう岸など見えるわけもない。海は深く青く冷たくなっていって、一緒に泳いでいた仲間が周囲からいつの間にかいなくなってしまうことも、よくある。

そんな恐ろしい水泳を笑顔でやっているのが、私たちクリエイターだ。基本、沖に出ちゃうような人はどこかしらネジが外れているようなことが多いのでヘラヘラと笑いつつやってはいるけれど、やっぱり少し不安になる日もある。

賞をいただくということは、泳ぎ疲れたときにぷかぷか浮いてきた小さな流木を見つけたようなものだ。ほんの少しの間、そこにしっかりとした手触りを感じ、体を預けられるような存在。嬉しいというよりは、ちょっと休めた、そんな感覚に近い。

きのうスピーチでも話したように、今回受賞した『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』は、私一人で作った本ではなく、編集の野本さんはじめ、デザイナー、スタイリスト、カメラマン、イラストレーターたちの若い感性の力が大きかった。そういう意味では共同作業だ。
また、本が出てからも、書店の方々、それからTwitterやFacebook、そしてこのnoteなどSNSで交流している人たちとの交流がひとつのコミュニティとなって、そこからスープの輪が広がっていった。そういう意味で、大勢の人と作った本だという気がしている。
感謝という二文字にはいつも胡散臭さを感じていたが、それに変わる言葉は見つからなかった。感謝しかない。

賞をいただいたことはとても嬉しかった。同時に、ここがゴールではないこともあらためて感じた。この素敵な流木にずっとしがみついているわけにはいかない。少し休んだら手を離し、また泳いで行く。もう心は、次の仕事に向けて動き始めている。

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さて、そんな私が次にお送りするのは、こちら。cakesの連載『スープ・レッスン』が書籍化します。9月27日発売です。


読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。