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CCCサポートという名の、ひとり旅【UTMB2019シリーズ】

<CCC サポートについて>

今年2019年のCCCは、エリートランナーとして出場する、長田 豪史選手(mont-bell)のサポートをさせていただきました。

去年、UTMBでサポートを経験したものの、去年は完走目標の市民ランナーの方のサポートだったため、全く勝手の違うサポートになる。
しかもUTMBほどサポートエイド数もなく、サポートが許可されているのは3箇所のみ。

しかもそれをマイカーを使わず、大会のシャトルバスのみでサポートしようという、ちょっと無謀な挑戦(だったと思う)。

距離の短いCCC、大会のシャトルバスのみで、どこまでエリートランナーのサポートができたのか、奮闘の記録。

<事前準備とリサーチ>

まず、国内での事前リサーチ。
幸い去年の紙パンフレットが残っており、そこに大会オフィシャルバスのタイムテーブルが掲載されているので、それをもとにおおよその算段を立てる。

CCCのサポートエイドは、
C5  Champex-Lac / シャンペ湖
C6  Trient / トレント
C7  Vallorcine / ヴァロルシーヌ
の3箇所

まず、シャンペ湖が大会バスだとオルシエール/ORSIERES(OCCスタート場所)でバスの乗り換えが必要で、行き来に時間がかかる。
そして大会バスが1時間に1本しかなく(タイミング/路線により変動有り)、エイド間移動は選手到着タイミングにより相当左右される。(しかも事前に読めるものではない)
さらに、トレントとヴァロルシーヌは距離が近く、 直線的な区間なので、エイド間間隔がつまっている。

上記理由から、長田選手のサポートは、シャンペ湖とヴァロルシーヌに絞ってのサポートにすると決断した。
早い段階でこの決断ができたので、長田選手へは早めに伝えられたので、選手とのコミュニケーション上は問題なかったと思うが、それでもやはり、3つしかないサポートエイドの1つをスキップせざるを得ないことが心に引っかからなかったわけがない。

<Chamonix入りしてから>

恋焦がれた憧れの地・シャモニーに、人生2度目の降り立ち。私自身MCCへの出場もあったため、受付会場には8/25(日)に行き、ここで最新の大会バス時刻表や大会パンフレットをゲット。去年はパンフレットに時刻表も載っていたが、今年はパンフレットと時刻表が分離。時刻表については各レース(UTMB/CCC/TDS/OCC)ごとの物になっていた。基本的には公式HP記載の情報から変更なし。HPを全てプリントアウトすると大変なことになるので、現地で頼る最終的な紙資料ということで、貴重な資料になる。
資料入手が日曜日、CCCスタートは翌金曜日の朝(8/30 9:00)。それまでは自身のMCCレース、TDSサポート、長田選手との事前ミーティングなど。
長田選手とのミーティングでは、エイド用物資の受け取り、エイドでのサポート内容確認がメイン。とにかくトレイルランニングにおけるエリートランナーのサポートが初めてなので、どうしても身構えてしまう。けれどTDSのサポートなどでバタバタしたまま、CCCレース当日の朝を迎えることになる。

<CCC レース当日>

CCCのスタートは、クールマイユール。
9:00スタートのため、早朝にシャモニーからCourmayeur/クールマイユールへ移動。
早めにクールマイユールに到着し、長田選手と共に時を待ちます。クールマイユールで解放されているスペース(スポーツセンター)の一部がスケートリンクなせいか、場内の一部分のみ、とても寒い(笑) (この一部分にお手洗いがあるため、避けて通れない) ちなみにちょっとした売店があり、水やコーヒーちょっとしたパンなど購入できます。

待機エリア(スポーツセンター)からスタート地点までは徒歩10分ほど。長田選手はスタート地点に移動してからウォーミングアップをしていました。
エリートランナーは一般ランナーとは別導線から入場することができ、ギリギリまで準備をしてからスタートラインへ向かっていました。

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今年のスタートでの私の最大のミスが位置取り。スタートすると下り坂を下ってコースに出るので今年は坂の下で写真を撮ろうと構えていたが、スタート直後でごちゃごちゃしていたため、そもそも長田選手を探すことすらできなかった。去年は、スタート直前にかかるCCCテーマ曲"Across the mountain"を聴きたくて、スタートゲートのすぐそばに陣取ったのだが、
今年もそうするべきであった。

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<IN RACE>

スタート後はすぐにクールマイユール→シャモニーへ戻り、1つ目のサポートエイドであるシャンペ湖行きのバスを待ちます。と言っても、シャモニーに戻ってきたのが10:30頃、バスは12:00が始発。しかし、シャンペ湖行きのバスは行列する可能性があり、エリート選手をサポートするなら始発の乗りこぼしは絶対に許されないため、街中でパンなどを調達した後はそそくさとバス停に向かい、キツい陽射しを浴びながら、ひたすら待つ。

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シャモニーの大会バス停留所

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シャンペ湖エイド行きバスの行列

待っている間、長田選手がどのくらいの位置取りで走っているのか気になって仕方がなく、LIVE INFO appをひたすらリロード。(LIVE INFO、レース中の選手を表示させると"IN RACE"って出るんですよね、あれが凄い好きです。)
今年の推移と過去のリザルトを照らし合わせると、トップ選手陣が15分くらい全体的に速い推移… 当日は晴天だったが、日射しがキツかった。それなのにこんなに速いレース展開だとは・・・

<C5 シャンペ湖エイド>

オルシエールでバスを乗り換え、無事にシャンペ湖エイドへ。バスは時間通りに到着し、フリーエリアで選手を待ちます。UTMBの各レースでは、選手に付与されるチケットがないと入れないエリア(アシスタンスエリア)と、チケット無しでも滞在できるエリアがあります。アシスタンスエリアは選手到着の直前にならないと入れないため(入口でチケットチェックあり。何分前に入れるかはその時次第)、フリーエリアでできることをしながら待ちます。

<各エイドで行った準備>
・補給系アイテムなどの基本的な準備
・この後のコースプロフィールの確認
・トップ選手のエイドinを見ながら通過タイムをメモ
・装備チェックの有無、あれば対象アイテムのチェック
・エイドoutの導線確認
・長田選手の近くを走る選手のタイム差と状況チェック
・暑かったので、冷えタオルの用意

LIVE INFOと常ににらめっこをし、長田選手のエイド到着予定15分位前にアシスタンスエリアに入ることができたが、なぜか少しあわあわしてしまった。アシスタンスエリアに入ってから、テーブルの場所取り、動画撮影用カメラのスタンバイ等々をバタバタやっているうちに、なんと、エイドの中で長田選手のほうから「あ、小林さん」と声をかけられてしまう大失態。慌てて場所を取っていたテーブルに長田選手を案内し、補給等を行う。
用意していた冷えタオルを選手の首にかけ、長田選手の話を聞いていると、落ち着いた様子で、状況と走行位置を認識した上でその後の作戦を立てているようで、安心した。
送り出す時はとにかく装備チェックがあることと、エイドを出たら左ということだけ伝えた。

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アシスタンスエリア内 (要チケットエリア)

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装備チェック

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オーラのあるおじさま

あっという間のシャンペ湖エイド…
あわあわしてしまって、まともな写真すら残っていない・・・
この後はまたひたすらに、バスを待つ。
ここまでひたすら待って待ってやっとたどり着いたのに、まさか選手のエイドinを見逃すなんて・・・他の選手が予測タイムより早いか遅いか、綿密に確認しておくべきでした。(この反省は、この後のUTMBで活かされることになる)

ここで一つ問題が発生した。
長田選手は、各エイドごと+予備とでジェルを用意していたのですが、ここまでの道中で足りなくなってしまったそうでシャンペ湖エイドで、残っていたジェルをすべて持っていってしまった。
「ああ・・・自分のMCCで余ったPowerbarを持ってくればよかった・・・」と思うも万事休すであったが、とにかく今できることは全てやらなくてはと思い、すぐにシャモニーにいるはずの今回チームを組ませてもらったサポートチームに連絡をし、サポート仲間が急遽ヴァロルシーヌにジェルを持ってきてくれることになった。自分の無力さを感じたとともに、仲間のありがたさを心から感じた。

<C7 ヴァロルシーヌエイド>

大会バスは時刻表通りに進んでくれて、予定通りヴァロルシーヌに着けそう、という道中でバス車中からトレントエイドが見えた。ちょうど長田選手が通過していそうなタイミングだったので思わずバスを降りて声だけでも掛けたいという衝動に駆られたけれど、ヴァロルシーヌに間に合わなかったら意味がないし、今降りたところで自分にできることは何もないんだと言い聞かせて、ヴァロルシーヌへ。

今度こそ選手を出迎えるぞ!と意気込んで、今度は早め早めの準備、長田選手の前を走る選手数名をサンプリングし、LIVE INFOの予測到着時間からの誤差をおおよそで計算し、見逃しをしないように準備を進めた。

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サポート仲間が急遽用意し持ってきてくれたジェルとおにぎり。
本当にありがたかった・・・
それからバインダー・ラミネート資料などマイグッズたち。

今度はちゃんと長田選手を迎えることができ、チームメイトが急遽持ってきてくれたジェルも渡すことができ、ようやく問題なくサポートができたかなと感じた時には、もう最後のサポートエイドであった。

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スタートから11時間、やっと撮れた。走っている写真。

<CHAMONIX  FINISH>

再び大会バスで今度はシャモニーへ戻る。シャモニーに戻ったのは22:00頃。街中は人がまばらだったが、フィニッシュ付近はたくさんの人で賑わっていた。長田選手の順位とその時フィニッシュしている人の順位を常に照らし合わせつつ、フィニッシュ地点でカメラの明かり合わせをしたりしながら、長田選手のゴールを待った。

最後の最後、どこで出迎えるべきなのか最後まで迷ったが、自分が逆の立場だったらどう思うか?をイメージして、フィニッシュではなく、アルヴ川沿いから街中へ入ってくる曲がり角にあるchalet4810(おしゃれパン屋さん)の前で待つことにした。
どれくらい待ったのだろう。選手のヘッデンが眩しくて分かりにくいけど、長田選手らしき選手がアルヴ川からこちらへ曲がってきた。こちらへ向かってきている中で日本人の方に声をかけてもらっていたからもう間違いないと思った。最後の最後まで全力で走ってきているのが分かったので何も声をかけられず、ただ黙って、手に持っていた日の丸を投げ渡し、ムービーカメラ片手にシャモニーの目抜き通りを全力で並走した。
目抜き通りを抜けて、フィニッシュで待ち構え、あとはもう必死でシャッターを押しまくった。押して押して押した。

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ゴールした長田選手を宿まで送り届けたところで、一度、精も根も尽き果ててしまった。こんなこと、今までトレイルランニングでもそれ以外でも経験したことがなかった。今思い返しても言葉にならない虚無感に襲われた。
(虚無感という言葉が適切なのかもわからないけど)

「私は、シャモニーまで来て、一体なにができたのだろうか。なにをしに、なんのために、シャモニーに来たのか。」

突如湧き出た気持ちを抑えられず、一人ふらふらとフィニッシュに舞い戻り、フィニッシュの横にあるバーで、フィニッシュしてくる眩しいランナーをぼさっと眺めながら、ビールを片手にただ涙することしかできなかった。


つづく。

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