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【読書】2月に読んだ本 8冊

2月に読んだ本のおさらいです。

彼女が私を惑わせる / こかじさら

実家に帰る新幹線の中で読了。
ひょんなことから人気料理研究家に成り上がった佐和子と、彼女に惑わせられた女たちの話。何の取り柄もないのに担ぎ上げられたせいで、少しずつピントがずれていく佐和子。土台がしっかりしていないと、どんないい家を建てても崩れるが人間もそれと同じ。
多角の視点から語られることで佐和子の鈍感さ、痛さ、浅はかさ加減が少しずつ浮き彫りになり、最後の章で佐和子視点になることでそれが決定的になる描き方は上手いと思った。にしても、現代の消費社会じゃ、こんなのザラにあるんだろうなぁ。


今宵も喫茶ドードーのキッチンで。 /  標野凪

長野に帰る新幹線の中で読了。
コロナ禍で息苦しさを感じる人々にそっと救いの手を差し伸べるような、おひとり様専用の喫茶ドードー。そこにやってくるお客は、SNSに翻弄されたり、仕事に追われたり、要らぬ心配でヤキモキしたり、心がすり減る毎日にコロナが加わったことで、さらに過酷な日々を強いられた現代人。
将来この本を読み返したとき、あの頃はこんなふうに、みんな疲れきっていたよね、と懐かしみたい。


綴られる愛人 / 井上荒野

文通仲介システムを利用して手紙を交換する凛子とクモオ。素性も知れぬ男女が出会い、のめり込んでいく様子が描かれる。
こういうときに純粋なのは男の方で、女はいつも冷静なのかもしれないと思う。
クモオの手紙の文面を読むだけで乾いた笑いが出てしまうほど、最初から最後までクモオは幼稚で、不憫だった。そしてこの絶妙にダサく、イラつく文面が書ける井上荒野さん、すごい(褒めてる)。凛子にもクモオにも共感するところがなく読み終わり、モヤモヤが残る1冊だった。先日読んだ辻村深月の「嘘つきジェンガ」の第一話を思い出した。


トリカゴ / 辻堂ゆめ

教育格差、貧困、さまざまな理由で無戸籍で生まれた子供たち。成長した彼らは一体どうやって生きていくのか。国で決められた制度を誰かが声高に叫んだとしても、届いてほしい人には届かないのだなという絶望。結局は意識高い人にしか届かないんだよな。そして広まらない。
物語の中ではいい人に巡り会い、希望の見えるラストになったけど、これでもまだ美談なのだろうなと思うと悲しくなった。


花屋さんが言うことには / 山本幸久

何も考えず、サラッと読める内容。お仕事小説でもあり、人情小説でもある内容。うまく事が運びすぎなところもあるけど、終始かわいい物語だった。続編できそう。


あの日の交換日記 / 辻堂ゆめ

交換日記がテーマの連作短編集、というより、読み応えのある長編を読んだような後味の一冊。とても面白かった。今月のナンバーワン。
それぞれの物語が一つずつしっかりしていて、それぞれのラストでウルウル。繋がり方も見事で、ラストの日記で気づけば号泣。
生徒一人ひとりとこんな丁寧に向き合う先生が世の中にたくさんいたら、どんなに子供たちが生きやすい世の中になるだろうと考えずにはいられない。


スモールワールズ / 一穂ミチ

残酷で厳しくて哀しいけど、共感できるところがたくさんある本だった。帯に書かれていたように「この物語はきっと誰かの宝物になる」という一文から想像した、キラキラ世界とはまったく違っていた。
でもそこにあるのは、人が生きる世界。
歓びと悲しみと、整理のつかないいろんな思いと共に、人生は成り立っている。わたしも。


正しい女たち / 千早茜

温室の友情の4人の話だけでも1冊できそう。ただ、誰とも友達にはなれなさそうだとは思う。友情っていいな〜!とはまったくならないところがまたこの本の面白いところ。麻美の結婚生活は地獄だし、恵麻と遼子の異常なまでの近さも怖い。唯一環だけは人間臭くてよかった。 にしても誰1人共感できなかったのに面白かった。


3月に続く。

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