ねこさま。

ねこさまが最近、私を家の近所の喫茶店に連れていってくださる。

ねこさまは、向かいのマンションに住む苦労人。

ねこさまがよく、外から私の住む部屋の窓に小石を投げてくるのだが、5階の私の部屋の小窓にコツンとうまく当ててくる。

それに気づいた私が、窓から顔を出すと「お〜い。お茶!」とねこさまは言った。

私は、「は〜い。」と言って、窓を閉め、つっかけを履いて、鍵だけを持ち、家を出る。

ねこさまは、喫茶店に行くとき、私と話すことはない。

カントリーロードを鼻歌で小さく歌っている。


私の妹の名前が雫ちゃんですよ。とある日、お伝えしたら、「それは、惜しかったなぁ」と急に大きな声で、ハハハハハと笑っていた。

月のきれいに見える夜は、ねこさまの体から、よくミルクティーの匂いがしていた。

なんでも、ねこさまの飼い主がミルクティーの香りのする香水を作る名人で、香水作りの仕上げには、満月の光とねこさまのダンスがあればいいらしい。

ねこさまは、金色の毛のねこで、触るとフワフワで柔らかくて、とても気持ちがいい。

いちばん初めに触ったときは、黙って勝手に肩を撫でてしまった。

ねこさまは、とても嫌がって、さっと私から離れた。私は気づかないふりをして、また近寄ったら、ねこさまの目が赤く光った。

私は、びっくりして、思わず、尻もちをついた。

そのとき、私のジーパンのポケットから、家の鍵がポロリと落ちて、その鍵にくっついていた鈴がチリリンと小さくなった。

するとねこさまは、「ニャア」と急にねこらしい声で鳴いたのだ。

鈴猫というらしい。

人間のような背丈になって、人間のように二本足で歩くには、誰かが鈴を鳴らしたら、なれるらしい。
そして、また誰かが鈴を鳴らすと、普通のねこに戻ってしまう。

そのときはまだ、私はそれを知らなくて
ねこさまは、普通のサイズのねこになり、私から逃げて行ってしまった。

私は、その夜、一生懸命、ねこさまを探したのだけど、ポケットにはすぐ鈴をしまっていた。

静かに黙って、ねこさまを探していた。


#小説


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2019年9月 文学フリマ大阪にて「Poet Noe」として初出店を経験。プロフィールが書けなくて困っているくらい繊細です。
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