最悪の日も乗り越えられるから。搭乗手続きをしたのに空港内で寝落ちして飛行機を逃した私が言うから間違いない。

最悪の日も乗り越えられるから。搭乗手続きをしたのに空港内で寝落ちして飛行機を逃した私が言うから間違いない。

私は10月過労死するのではないかという忙しさを乗り越えて、飛行機に乗ってタイに行くことを本当に楽しみにしていた。タイにいけるから頑張ろうと思って全ての仕事や実験を乗り切って頑張ってきた。私が全てのタスクを片付けて完璧な状態でイベントに臨める確率は奇跡のように低いのに今回、それがあと一歩で届くはずだったのだ。記念すべき日になるところであった。

その野望はあっけなく崩れ去ることになる。初めて一人で搭乗手続きをすませ、そこまで本当に完璧としか言えない日々だった。

あと少しで飛行機の乗る、そんな時、私はうっかり爆睡して飛行機を逃した。

本当であれば、ちょうどタイについたところだったはずなのに今、羽田空港でこの文章を書いている。何のバグだろうか。

バグっていたのはただただ私なのだけれど。

幸いANAの人が全力で優しくしてくれたおかげで空港内のホテルに泊まり11時にはタイに向けて出発をすることができる。

私は非常にポンコツなので、予定通りに物事が進まないことが多い。常人よりずっとこのような絶望にであうことは多いけど、何度しても慣れないものだ。飛行機の乗り過ごしはさすがに初めてであったが。予定通りに物事を進めるのが難しいくせに予定が崩れることへの動揺は人一倍なのだ。

バリエーション豊かな失敗の中、何回ももう死にたいと思うことを繰り返して23歳の今日まで命を繋いでた。すぐにピーピー泣いて庇護を求める女へのヘイトから、決して泣くまいと思い生きてきた私も流石に号泣した。嗚咽して呼吸困難に陥るほど泣いたのはいつぶりだろうか。多分、不登校だった小学生の時に学校に行きたくないと泣いた時以来である。もしかしたら、ここまで大音量で泣いたのは出生時が最後かもしれない。

今回、160cmの新生児をあやして命を繋いでくれたのはANAの人であった。大変な迷惑をかけたにも関わらずだ。本当に感謝しても仕切れない。今後はANA一筋で神の一柱として信仰していこうと思う。

オギャーオギャーと泣いているときは世界で一番の絶望の最中にいるような気持ちであったが、今は落ち着いている。空港のホテルの柔らかいベッドで寝て起きたら、私ならこのくらいの失敗はするわなと納得したのだ。

絶望的な失敗をしても、なんとかなる。早朝からのタイを楽しめず、船の時間に間に合わなくなっても、きっと行けば、最高が待ってる。望んでいた最高とは違うかもしれないけれど、きっと別の最高が待っていると思う。

「転んでもただは起きない」が座右の銘の欲深い根性を持った人間なので今、このエッセイを書いている。私が文章を書くのは、ただただ自分のためである。少しでもマシな気分になるために書いている。今、昨晩の私と同じように最悪の気分でいる人もたくさんいるだろう。

自分の辛さは自分の辛さで周りに辛い人がいたところで救われるものではないと思うが、ネズミを使った実験によると一人だけ辛い思いをしているよりはマシらしい。
そんな人が一人でもマシな気分になってくれたら私は完全に救われると思う。

人生の予定は狂うものだ。結婚を考えていた人をロクでもない奴に奪われることもあるだろう。ずっとA判定を取っていた入試にうっかり落ちたり、前日にインフルエンザにかかる人の話なんてよく聞く。それに比べれば本当に大したことではないので、恐縮だが、人の辛さは本人だけのものだ。電車が目の前で行ってしまったって絶望的な気持ちになる。全部全部絶望していこう。私は今回の失敗で自分が辛いと感じたならば、思う存分泣いていいということを学んだ。今後はピーピー泣いて庇護を求めていると感じていた女が目の前にいたら、私もANAの人にならい、力の限り庇護していきたいと思う。

流石にこの辛さを超えることは難しいと思う夜は今後、何度でも訪れる。命あるものが必ず死ぬように命ある以上絶望との直面を避けることは難しい。

それでも、予定が狂ったからと言ってそれ以下のものしか得られない訳じゃない。
私の弟は志望校に落ちて入った学校で良い友人を得た。
私は最悪な母校に入ったから、今幼少期からの夢であった作家になった。
今回も夕方にタイについて予定とは違う最高のものを得てくると思う。

最悪だと思った時は、人目もはばからず大泣きしていい。何も考えなくていい。何歳だろうが、新生児の気分になっていい。泣くだけで褒められていた時期が確かに私達にはあったのだ。それでも無理なら柔らかいベッドでぐっすり寝よう。

#コラム #エッセイ

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