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いつ落ち着くメンタルヘルス

あと半年で20代も終盤戦に入るらしい

思いもしない友人の結婚発表に面食らう頻度が格段に増えた
殆どすべての友人が就活を経て社会生活を送っているし、ほんの子供だと思っていた後輩まで働き始める
早く結婚した友人の子供はもう手がかからなくなってきたという
私の両親が聞いたらどれほど驚くことだろう
24歳の私はまだこんなにも手がかかるというのに

就職も結婚も出産も大人がするものだと思っているのだ
大人になったら私もしてみようと思うのだけれど
そんな気持ちのまま20代後半に突入するとは思いもしていなかった

大人になりたいと子供でいたいの間を反復横跳びしていた思春期の私に伝えたい
安心してくれ、そう簡単に大人にはならない
そして不安がってくれ、まだどうやったら自分を大人だと認識できるのか皆目見当がついていない

キックバイクでツール・ド・フランスに挑むがごとき周回遅れで人生のすごろくをゆったり進めている私だが、全く進捗がないわけでもない
むしろ、とても大きな成長をした

私は大学時代の殆どを超ド級のメンヘラとして過ごした
自他ともに認めるドメンヘラ

24歳の私は元メンヘラになった
最高でもなく最低でもなく中庸な気持ちでいることが多くなったし、事実をただ事実としてそのまま受け入れられるようになった

一口にメンヘラといっても色々なタイプがいる
最も生息数が多いと見積もられているのは恋愛メンヘラ
この中でもさらに色々なタイプがいるのだけれど、説明しだすと長くなるので、ざっくり恋愛が絡んだ精神不調だとおもってほしい
私の場合はジャンルを問わずしてとにかく自意識をこじらせていた
心に小さな李朝を飼っていて今にも虎になってしまいそうだった
完全に自分ひとりでぐちゃぐちゃの自意識をこじらせていた訳ではなく、原因になるような言動をしてきた人はいるのだけれど、その種を後生大事に育て大輪の花を咲かせたのはほかならぬ私である
例えば私の容姿コンプレックスを植え付けた元凶の人間はいるけれど、思い返すと数回の出来事である
だからといって決して許されることではないし、数回の気軽な発言が数年間、それ以上日常生活が手につかないほど人間を苦しめる種になることは重く受け止めてほしいが、事実、私がそいつらの言葉を夜ごとに一人でリフレインして噛みしめて苦しんだり悲しんだり怒り狂ったり七転八倒していたわけだ
ちなみに二大元凶となった男らは両方結婚した
絶縁した元交際相手もいつのまにか結婚し二児の父になっていた
どうやら私と揉めた人間は婚期が早まるらしい
いつの日か結婚をつかさどる女神として奉られなければ割に合わない
私の目の前で相撲をとる神事でもしてぷりぷりとしたエビを供えてくれたらそれで満足だ

私は少数の実在敵と大多数の仮想敵と戦って大学生活を過ごした
執念深く粘着質な性格が幸いして大抵のやつは謝らせてきたので少数の実在敵に関しても殆ど思い出の中の幻影と化している
それでも私は一人で戦い続け、心の中で殴ってガッツポーズをしたり思い出し傷付きを繰り返したりという無益な時間を送っていた
激しい思い込みによって元凶すらないのに何かを恐れてびくびく過ごすこともあった
人とかかわってすらいないのに私はきっと人間というものに嫌われるに違いないと信じてできるだけ姿を見せず音をたてないように生きていた
干支二回り分生きてきた感想としては思いのほか人間は優しく私を受けて入れてくれているということだ
仮想敵に打ち勝つために才能があるとかないとかで自家中毒を起こしていたし、世界を白と黒でしか分けられなかったから最高の人生だと思った翌日に何もない最低の人生だと思ってベッドから動けない日もあった

家族友人恋人ずいぶん迷惑をかけたと思う
なにしろ他人から見れば原因も対応もまるでわからない
近くで助けることのできない瀕死の人間が呻いているというのはなにかと正常な良心が痛むものだ

私自身、このとにかく陰鬱な気持ちや行き場のない怒りとは一生付き合うものだと思っていたからこの先60年くらいありそうな人生を憂いていた
今の1年を超えるだけでこれだけ臓物が痛むように悲しい思いをするのにそれをあと60回も繰り返して正気でいられるだろうかと考えるとより一層苦しくなった

一番苦しかった記憶のある年から3年くらい経ったと思う
小学四年生から不登校、物心のついた期間の大半をメンヘラとして過ごした私は今でも普通の人と比べて傷付いていることは多いだろうし、感情の起伏も激しいと思う

それでも私なりに今はとても心が穏やかだ
虎になりかけた心は三毛猫くらいで踏みとどまっている
思い悩む苦しみの中に人生があるのではなく、人生の中の思い悩む事柄ひとつひとつに直面したその時苦しむことができる人間らしさを身に着けた

昔付き合っていた人に明るく健康的になったといわれた
こいつも私の容姿コンプレックスの一因となるような発言をたくさんしてきたので来年あたり電撃結婚をすると思う
当時はどんな手段を使っても絶対に可愛くなって発言を撤回させてやりたいと思っていたけれど、私が健康的になったことは可愛くなるより価値があったのではないかと思う
見返したい相手との付き合いは見返した時点で終わるけれど、自分との付き合いだけは生涯続く

先を予想していることで耐えられる苦痛もあるけれど、勝手に苦痛が待ち受けていると思い込んで苦しんでしまうこともある
止まない雨はないとか明けない夜はないとか手あかのついた言葉がたくさんあるけれど、もし3年前に戻って昔の自分にあと3年の辛抱だから苦しまないでといったって信じるわけがあるまい
今がとにかく苦しいのに救われる想像などできるわけがないのだ
期間が明確に決まっている中高時代だってあと少しだからと思えたのは卒業の3か月前からだった
止まない雨だってあるかもしれない、明けない夜もあるかもしれない
でも、それはその時また耐えればいいと思う
私たちは常に目の前の辛さで精いっぱいで先取りして苦しんでいると溢れてしまうだろう

今だってこれから先の自分は辛いかもしれないと思いおびえる日がある
でも、今の私にできることはそのつらさをこれで少しでも和らげてくださいと味玉を漬けることだけなのだ
ちょうどいい醤油とみりんの割合を覚えながら周回遅れの人生すごろくを一歩ずつ進んでゆく

#メンヘラ #コラム #エッセイ #生き方 #日記

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