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意味と背景を調べながら歌詞の和訳を完成させるまでのメモ【Lei Hinahina】

記事のタイトルにある「意味と背景を調べながら歌詞の和訳を完成させる」は、私の「ハワイ語勉強法」です。
これしかしていませんが、100曲を超えたあたりから、語彙や知識の「塵(ちり)積(つも)」が「山」として姿を現し、「読み解く力」がついたことを実感しました。

ひとつの文章を腹落ちさせるのに何日もかかったり、調べても分からずじまいなことも少なくありません。ですが、その過程で見つけた「情報」や「知識」は全く無駄になっていません。それどころか財産と言ってもよいくらいです。

この「財産」は、もしかして、どこかでおなじく奮闘している「フラを学ぶ仲間」の役に立つかもしれない。そう思い、「メモ」として書き留めておくことにしました。

ゴールのないフラ道、 'olu'olu ka mana'oを忘れずに、お互い歩き続けましょう。いつか会えたら称え合いましょう。

Aloha!
有木千恵です。オンラインフラ講座KAULAを運営しています。

ʻAuanaで使われるハワイアンソングは、「恋人や家族への愛」とか「自然賛歌」とか、「善きこと」「美しきこと」が歌われているのが普通です。

でも、このLei Hinahinaは違います。

めっちゃ意訳ですが、「この俺様をふるなんて、怒りが収まらんわ。役立たず野郎の首にぶら下がってるお前はもう花じゃねえ、ババアだ。あーーーー、ム・カ・つ・く!!!」

という歌です。

ふられた腹いせに作ったんでしょうね。

「ムカつく」「役立たず」「間違ってる」など、他の歌では見たことのない単語だらけの歌ですが、ここまで一貫してディスられると、いっそ清々しい気がしてきます。

そして、歌詞の内容とはうらはらな軽快なメロディー。ぜひ、歌詞を知ってから聴いてみてください。

きっと好きになると思います。

ちなみに、踊ると、もっと好きになります!


では、読み解いていきます。



ハワイ語の歌詞を手に入れる

いつもどおり、まず Huapalaを見ます。手元に歌詞があっても見ます。Lei Hinahina ありました。

この歌詞をベースにはしますが、誤字脱字がないか(特にオキナとカハコー)、確認して整えます。

古代ハワイには文字がなく(今もハワイ文字はないです)、口承文化だった影響なのか、Huapalaにある歌詞を見ると「正しく書く」ことはそこまで気にしていないのかも、と思うことが多いです。

整えました。

Lei Hinahina

■Verse1
Uluhua uluhua wale au
Iā mahina kau ahiahi
E kau aʻela i luna lā
ʻIke pono ʻia ka pae ʻōpua

■Verse2
He aloha lā he aloha
He aloha kuʻu lei hinahina
E lei ʻia maila e ka ʻuʻa lā
E ka māʻukaʻuka hoe hewa

■Verse3
I hewa nō iā ʻoe lā
I kou ʻāwihi maka ʻana mai
ʻIke ʻia e ka mea waiwai lā
Piʻi e ke kai i kumu pali

この歌は、オリジナルを含めて、いろいろなミュージシャンの音源を聴くことができます。なので、音源を聴きながらハワイ語を確認します。
※上記は確認後のものです。

参考音源

1.オリジナル

Lei Hinahinaの作者本人John.K.Almeidaの音源です。つまり「正解」です。

秀逸なカバーはオリジナルがあってこそ。可能なら必ずオリジナルを聴きます。オリジナルに敬意を。


2.ケアリィ・レイシェルのLei Hinahina

彼はkumu Hulaで、ミスアロハフラに出場した3人のうち2人がハワイ語賞を獲得しています。そのことからも、ケアリィの歌は、ハワイ語の確認や勉強にめっちゃ使えます。もちろん歌そのものも素敵です。


3.ライアテア・ヘルムのLei Hinahina

ライアテアはハワイ大学で音楽を勉強しているんですよね。当然ハワイ語も学んでいると思われます。
ちなみにライアテアはKamehameha大王の末裔なのだそうです。すごい!
あと、名前が Raiatea  Mokihana Maile Helmなんです。モキハナ マイレちゃん!なんて素敵な名前なんでしょう!


4.ダーリーン・アフナのLei Hinahina

すべてのハワイアン・ソングが「フラを踊るための曲」なわけではありません。間奏が長すぎたり、カウントが奇数だったり(フラのステップはすべて偶数カウント)、歌自体が長すぎたり。どんなに素敵でも「踊れない」なら、フラ用には使えません。泣く泣くあきらめた曲、山のようにあります。

「フラはメレ(歌詞)ありき」と言われます。フラの動きは歌詞の意味を伝えています。ですから、歌詞がないと、伝えることがない=踊れないのです。
「フラは音楽ありき」とも言われます。フラダンサーがいなくてもミュージシャンだけでコンサートは成り立ちますが、音楽がないとフラは踊れないからです。

そこで登場するのがダーリーン・アフナさんです。若い時から「フラダンサーがいるステージ」でキャリアを積んできた彼女。入手できるアルバムの曲のほとんどが「フラを踊れる曲」です。
ジェノア・ケアヴェ、ジョージ・ナオペ、クウイポ・クムカヒなどの重鎮とステージに立ち、今では彼女自身が「大御所」です。
音源選びで迷って、「結局ダーリーン・アフナが歌うバージョンになった」経験があるフラ講師の方、たくさんいるのでは?


作者 John.K.Almeidaについて

おさえておきたいこと

・この歌の作者は、John.K.Almeida(1897-1985)
・盲目のシンガーソングライター
・300曲以上つくった
・ラブソングが得意
・恋多きモテ男で5回結婚した
・結婚してても恋してた

ほかの代表曲(5曲紹介)

見事にぜんぶラブソングです。

Maile Swing
SweetでLovelyな、ボクの可愛い仔猫ちゃんといちゃつく歌。


'Ā 'Oia
可愛い仔猫ちゃんを口説きに口説いて落とす歌。


Holoholo Ka'a
ドライブデートでイキってたら、まさかのガス欠!という歌。
それにしても、この子どもたち、何かと上手すぎやしませんか。


Noho Paipai
オレという名のロッキングチェアで、一緒に揺られてみないかい?というアダルトな歌。動画の青年のロッキングチェアは1分20秒〜をチェックしてください。


Green Rose Hula
可愛い仔猫ちゃんをフレッシュなグリーンローズにたとえて「好き好き大好き君サイコー。ずっと一緒にいたいです」と伝える歌。

動画は、名曲オブ名曲「Ka Hīnano O Puna」の作者 Kainaniさんが歌い、ミス・コナコーヒーが踊るGreen Rose Hulaです。なんて素敵な組み合わせでしょうか。


このmeleにちなんだエピソードを探す

作者の人となりからするに、歌詞のまんまだと思うので、HuapalaのSourceを読んでおしまいにしました。

Anger, emotion, or passion welling up in the body is often linked with the rising of the moon. The ancient Hawaiians had established a connection between the moon and the emotions.
怒りや感情、情熱が体の中に湧き上がってくるのは、月の出と関係があることが多い。古代ハワイアンは、月と感情のつながりを確立していた。

https://www.huapala.org/lei/Lei_Hinahina.html

これは1番にmahina(月)が出てくることへの言及ですね。Huapala、ヒントをありがとう!


では、訳していきます。

まずは。

ハワイ語翻訳の神ツールを準備

Hawaiian Dictionary

ご存知、ハワイ語のオンライン辞書です。これなくしては始まりません。

DeepL

超優秀な翻訳ツールです。DeepLを知ってしまったら、もうGoogle翻訳には戻れません。アプリもありますし、Chromeの拡張機能もあります。

はじめてのハワイ語

激推しのハワイ語の参考書です。13年間、愛用しています。


■和訳メモ:1番

1行目 Uluhua uluhua wale au
ひとつの言葉を2回繰り返すのは強調したいとき。waleは「とっても」。auは私。つまり、俺めっちゃuluhua(怒る)なんやけど!!!てことですね。

2行目 Iā mahina kau ahiahi
Iāは、「i」と同じ。固有名詞に付くとき「iā」になる。ハワイ語で月は固有名詞なんですね。「ia これ、この、あれ、あの」「'ia 動詞のあとにきて受け身にする」と間違えないよう注意。私は、ia3きょうだいと呼んでいます。

kau=置く。ものだけじゃなく、置くのが「感情」なら「思いを馳せる」。「目線」なら「目をやる」。ここではahiahi(evening)に月を置く=夕暮れの空に月が顔を出す。怒りも顔を出す。

3行目 E kau aʻela i luna lā
月がluna(高いところ)にkau(置かれる)=月がのぼる。怒りものぼる。

4行目 ʻIke pono ʻia ka pae ʻōpua
ここでのponoは「完全に、はっきりと」。「善き」ではなく。'iaは前述のとおり受け身なので「見る」ではなく「見える」。できるなら見なかったことにしたかった…的な。もくもくの雲は日本語でいう「暗雲たちこめる」ですね。日本語とハワイ語って親和性たかいです。


■和訳メモ:2番

1行目 He aloha lā, he aloha
愛しい大好きと言っといて、

2行目 He aloha kuʻu lei hinahina
「僕の大切なhinahinaレイ、愛してるぜ」と落とす
hinahinaはエアープラントなんですが、艶のない縮れた白髪に見えることから、年老いた女性の比喩に用いられたりするんです。つまり「このババア」と言ってます。

●hinahinaについての豆知識


こんな植物です。ハワイでは民家の庭の木におびただしい量がぶらさがっているのをよく見ます。

木の枝にぶらさげておくと空中の水分だけで伸びていきます。


この動画を見ると「ふむふむ!」となります。冒頭でKeali'iが、クプナクラスのことを「母親がいるクラスだから言いにくいんだけど‥」と、hinahinaヘアーのご婦人方がいるクラスだと冗談めかして紹介しています。お母さん、パワフルな笑顔がかっこいいです。親子愛!


この動画でKāne(男性)ダンサー達がHInahinaレイを付けています。
Keali'iとUluwehiさん、元々は2人でhālauしてたんですよね。どちらのkumuも素敵な歌声です。生徒さん達が楽しそうなところとMauiへの愛が溢れているところもおんなじです。



3行目E lei ʻia maila e ka ʻuʻa lā
ここでのleiは動詞。ʻiaで受け身になるので「かけられている=かかってる」。ka 'u'aは「役立たず」。
俺様にしとけば良いものを「あーあ、使えない男の首にぶらさがっちゃって」という嫌味です。

4行目 E ka māʻukaʻuka hoe hewa
māʻukaʻuka(下手くそ) hoe(カヌー) hewa(悪い)
「カヌーもろくに漕げない下手くそ野郎」って言ってますけど、彼女は、俺様じゃなく下手くそ野郎を選んだんですよね。幸せ祈らんかい。


いよいよ最後のバース、3番です。

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