エレジー(レッスン記)
先生に会える日というのは、何日も前から楽しみだし、同時に、思う様に練習が進んで無くて焦る。
先月から勝手に課題曲にしてみたエレジーは、前回のレッスンから毎日弾いてみているけど、この2日間に限って、他の用事だけで体力と気力を使ってしまい、弾かなかった。
「今朝は?」
と言われたが、確かに今朝、出発前に弾くつもりだったのに、やはり弾けなかった。
深夜未明に寝たけれど、朝の7時にはちゃんと起き、
〈さあ、弾くぞ!〉と思ったけれど、こんな日に限ってうちの人が休み。
朝早くからTVを見ている。
その横で…弾けない。
近所迷惑にならないでチェロを弾ける場所は、我が家はテレビの横なのだ。
それより、昨夜からの雨はひどかった。
8時台には家を出発しないと間に合わないかも。
急いで支度をし、駅に向かうが、雨のせいでJRはかなり遅れている。
いつもの時刻の列車が2本分来なかった後、
30分近く待ってようやく来た3両編成の列車にチェロを抱えて無理矢理乗り込んだ。
降りた駅からバス停までに信号は2箇所。
バスの発車時刻は5分後。
かなりの無茶振りでバス停に到着!
直後に着たバスに乗り込んでホッとした。
バスは1時間に一本。
乗ってからもレッスン場まで1時間かかる。
これでバスに乗り遅れたら、今月はもう行ける日が無い。
…そんな調子で、無事辿り着いた安堵や、
昨日見たリトルマーメイドの舞台、
今月末にライブ出演のカホンの練習、
息子が一昨日まで盆休みに五日間帰ってきた話をする。
「リトルマーメイド、夏休み中に観ないと一生後悔すると思って」
と言うと
「一生後悔すること?」
と笑われ、
(地方都市でリトルマーメイドがロングラン公演なんて、次は10年後にあるかどうかなのでは?!と思ってしまう)
息子の写真を見せて
「見てみてー!
可愛いでしょー!」
と言い、
「可愛い」
と言ってくれる先生に、強要させたみたいだと気づき…
カホンの練習動画をこっそり見せて、
「でね、ここから難しいの。
超高速!
カホンは叩く場所の上と下で音が違っていて。
この速さで上を叩いたり下を叩いたりするよ」
と説明するのを
「叩く場所と手も決まってるの?」
と真面目に聞いてくれる。
***
さて、毎度楽しみにレッスンに行く割には、いざ、レッスンが始まると、スタートはいつも逃げ出したくなる。
しばらく喋って緊張を解いた後、
ようやく
〈とうとう覚悟を決めて弾かなくては〉
と思い、弾き始める。
緊張の一音。
ややん、2日弾いていないとチェロが眠ってる!
音がかすってしまう。
それでも前回、先生が指の押さえ方を教えてくれたところまでは、ひと通り弾いた。
弾けた、とは言えないけど、機嫌を悪くさせる程ではなかったのか、今日はさらりと流してくれた。
最難関と思うところを何度も一緒に弾いてくれる。
この頃になると、音も出始めて乗ってくる。
おまけに手付かずでまだ弾いたことの無かった、曲のラストまで弾き方を教えてくれた。
ラスト部分の曲の音色まで解釈を教えてくれたけれど…
音色以前に、
どの指でどこを押さえるかだけで精一杯!
全部II番線で、そんなところまで押さえるの?!
まずは先生の弾く音を耳で拾いながら、何とかそれらしき音の出る場所を押さえてみたけれど、
それがドレミで何の音か、いまいち分かっていない。
(そもそも読むのが苦手な楽譜がテノール記号)
「リズムが分からない」
と質問すると
「カホンは叩けるのに?」
と言われる。
「そう、カホンは叩けるけどね」
…巡り合わせの縁で、たまにしか叩かないカホンで、街のベストスリー的な有名ライブハウスは順番にステージに乗っている。
おまけに、管楽器の講師の先生からチェロの先生づてで頼まれて、一人でカホンでブラスのバック演奏をした事もある。
でも、チェロは何年経っても難しい。
「メトロノーム使って。
YouTubeでどんなに他の人が速く弾いていても揺らして歌っていても真似しないで。
正しい音程とリズムでゆっくりから練習して。
そうしないと、ピアノと合わない。
変えていくのは、二人が合う様になってからだよ」
ピアノと合わせた時にどういうタイミングになるか、という解説までしてくれた。
最近私に、一緒にステージ乗りしてくれるキーボード奏者さんがいるのを知っているので、レッスン時にピアノの解説が付くことが増えた。
「これもそのうち、どこかで弾くんでしょ?」
先生が楽しそうに言う。
「う、うん…まあね、弾けるくらい出来る様になったら良いけどね。
まずは私が弾けないとね、ピアノ弾いてと頼めないよね」
そういうと、
「ピアノも難しいよ。
ショパンが弾けるくらい」
と言う。
「うーん、弾いてくれるかなぁ。
クラッシック畑の人では無いんだよね。
クラッシックの人も、何人か知り合いはいるけれど…」
…先日、アンサンブルグループのコンサートで司会をした時にステージでご一緒した、伴奏ピアニストさんの演奏に驚いたのを思い出す。
曲はヴィバルディの四季。
クラッシックのピアニストさんって、こんなに凄いんだ!と驚いた。
明らかに先生クラスの人だと思ったから、率直にそう話しかけた。
でもオーケストラを離れた時の私の演奏シーンは、どちらかというとポップス寄り。
クラッシック奏者が楽譜以外のことが出来るとは限らない。
どちらかといえば、楽譜が無くても一緒に弾いてくれる人が友達だと大助かりだ。
おまけに私の作った曲はどれも楽譜が無い💦
(コードは付けてあったりするけれど)
得意分野に合わせて曲毎にピアニストさんを変える訳にはいかないしなー、なんて考えていると…
相方のキーボードさんに、早く楽譜を渡せ、とでも言いたそうだ。
***
時間が10分くらい余ったので
「他にやりたいことががある?
今の曲のままでも良いけど」
と言うので、
「もしかしたら来月演奏するかもしれない」
とオブリビオンの楽譜を取り出した。
「前に一度見てもらったことがあるけれど、イマイチで。綺麗に弾きたい」
と弾き始めると
あまりの下手さに苦笑いし、最初の二小節を弓のスピードや圧力、弾く位置を解説してくれる。
そうか、そもそも弓のスピードから違うのか。
「ヴィブラートは好きなパターンで」
色々変えながら弾いてみせてくれる。
ほとんどノンヴィブラートでも、先生が弾くと美しかった。
「うん、でもタンゴ奏者はヴィブラートが大きめの人が多いかな」
と言うと
「そうだね」
と、やり過ぎのグリッサンドやら、色々弾いて遊んでくれるので笑ってしまう。
「(間に弾かない)音を沢山入れてみて」
「そうだね」
「この曲、けっこう難しいよ」
「うん、やっぱりそう?
この曲が今回のリクエストの中で一番下手なんだ」
帰りも途中まで一緒に歩きながら、山の日にした司会の話や、オーケストラの田園に一人で乗ってみたらパニックだった話をする。
次に会う時は9月。
さて、今夜もオーケストラ練習行ってきます。
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