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誕生日月の贅沢〜ギターを買う

私はレイトスターターのチェロ弾き。

だけどたまに、なんでこんな難しい楽器を始めちゃったんだろうと思う。

始めたのは上の子が小学校も高学年になった頃。

側から見れば、子供二人いて、幸せいっぱいの生活かもしれないが、私の心の中は結婚してからずっと、春を待ち続ける冬の中にいるみたいな気分だった。

家を出たいばかりに見合いで結婚した年上の夫は、親世代だとありそうな、無口で当時は仕事ばかりで、家だと少し亭主関白。

日常はまるで母子家庭の様。

温かい家庭作りを目指し、良い妻、母でいようと奮闘していたが、

時々孤独に耐えられなくて、家出する事をよく妄想した。

当時は両親とも不仲で、帰る場所も無かった。

子供の頃は長年、書道を習っていたが、自分の先生が亡くなると、名前が知られすぎていた事もあり、行き場が無くなった。

当時はどこかに所属していないと出展もできない様な保守的な世界で、したたかになれず、そのうち筆を持つと胸が苦しくなり、その世界からドロップアウトした。

周りに頼る人も居ない。

自分を自分で支えられるものを探し続けていた。

ある日、ママ友さんと「once」という映画を一緒に観に行ったのが転機になる。

アイルランドのミュージシャンの映画。

(YouTubeはonceの映画の一場面より)


映画を見終わった後友人が一言、

「かおりさんは弦楽器が合いそうよ」

と言ったのだ。

へえ!

友人を驚かそうと思い、早速楽器店での体験レッスンで、ヴァイオリンとフルートを選んで体験してみた。

そうしたら、ヴァイオリンの体に響く感じが衝撃的だったのだ。

フルートはもう、体験しても耳に入らなかった。

以来、その体験がどうしても忘れられず、この歳で楽器が出来るものなのか検索しまくる。

すると、子連れで出来るママさんオーケストラが半年前に街に立ち上がっているのを知った。

「初心者オッケー、楽器あればオッケー、チェロ奏者募集」

と書いてある。

チェロかぁ!カッコいいかも?!

チェロって、オーケストラだと簡単な伴奏くらいなのかなぁ。ギターみたいに弾けるのかなぁ。

(大きな勘違い!)

ヴァイオリンを選ばなかったのは、ヴァイオリンって3歳くらいから英才教育を受けた人ばかりで太刀打ち出来ないのでは無いかと思ってしまったのだ。

(実際には大人から楽しむ人も今は多い)

それから、再びネットでチェロを検索しまくった挙句、へそくりで最低限弾けそうだと思うのを買った。

へそくりは、一度大けがをして死ぬかと思った事故の保険金だ。

一度死んだと思えば、これからの人生、やりたい事をやらないで後悔するより、やって後悔した方が良い。

楽器店に行く事は逆に怖くて思いつかなかった。

高そうだし、全然分からないし。

届いて1週間後に大きなチェロを抱え、二人の子を追っかけながらオーケストラの練習会場に向かったのがスタート。

弾き方はもちろん分からなかった。

ただ、届いてみて大きさにびっくり!

これは押し入れにこっそり隠す訳にもいかない。

夫に内緒に出来ないから何とかしないとー!

と焦りながらも…

初めて音を出してみた日の、体に感じる振動の感激が忘れられず…

その感動だけを頼りに続けている。

よく質問される。

「なんで始めたの?」

「どうしてヴァイオリンでなかったの?」

「なんでチェロなの?」

「そんな難しいのより音を出せば音程が取れる楽器にしたら?」

実際、SNSのお陰で私に沢山の音楽をリアルで教えてくれたミュージシャンには、ライブハウスにあったヴィヴラファンを耳を頼りに弾いたら

「ヴィブラファンの方が向いている」

と熱心に勧められ、ほんの少し、言われるままにヴィブラフォンも練習してみた時期もある。

けれど、どんなに他の楽器が向いていると言われても、チェロがなかなか上手くならなくても…

やっぱり私はなぜだか理由は分からないけれど、チェロの振動と音が好きなのだ。

それで、他の楽器は興味を持っても続いた試しが無い。

それでもたまに、違う楽器に手を出したくなる。

チェロを弾くのは、私にとっては体力も気力も消耗する時があり、もっと気軽に遊びたくなるのだ。

チェロを始めたといっても、私の生活は子育てと生活費を稼ぐのが中心。

クタクタな日が続くと、チェロを練習する気力が残らない。

だから、チャラッと弾けるものが無いかなぁと。

脳裏には、試してみたけど弾けずにすぐ手放した楽器がいくつか思い浮かぶから、慎重になろうと思っても、好奇心は抑えられない。

チェロと同じ弦の並びで、気軽に遊べそうなのは無いかなぁと、ここ何年か調べていた。

テナーバンジョー、

マンドロンチェロ、

奏生の古い型(一五一会の仲間のウクレレみたいなの)、

テナーギター。

…去年、世の中にテナーギターという4弦の楽器があるのを知り心躍った。

チューニングはチェロと同じ。

これなら手軽に弾けるかも??

ちょうど4弦のギターが世の中にある事を知った頃、パリに住むギタリストさんが街にライブにやって来たから会いに行った。

ヨーロッパでは弾く人もいて、知っているという。

どんな風に選べば良いか相談に乗ってもらった。

私の予算はうんと低くて…片手くらいの金額で買えたらなぁと。

ebayのやり方も教えてもらう。

そうして一年近く探し続けた今月、私の予算で1970年代の古いギターがネット上に出ているのを見つける。

作られた場所も確かだ。

今月は誕生月。少し気が大きくなり…

…買ってしまった!

ギターはコードチェンジで挫折、

ピアノもほぼ弾けない私。

とりあえずチェロと同じチューニングで音を出してみる。

チェロより音が小さく、たぶん普通のギターより軽い音色。

少しネック反りか、高い弦の張りが強い気がして、そこが弾きにくいが、キラキラした音が可愛い。

フレット感の和音のバランスも良い気がする。

そんな訳で、まだ届いたばかりだけど夜中にポロリと弾き楽しんでいる。

同じ弦の並びなら簡単かと思ったけれど、やっぱり楽器が違えばそれなりに難しい。

ギターで出来る事がチェロでするのは難しいのと同様、

チェロで出来る事がギターでは難しくて、研究が要りそうだ。

まだ、4日目の…大して練習もせず夜中にチャラッと弾いた演奏は下手だけど面白いかもだから載せてみる。

ギターを弾いているというより、まるで大きなギターサイズのウクレレを手にしたウクレレ初心者みたいだ。

コードの本は買ったのだけど、正直、もっと良い押さえ方は無いかと、一音一音鳴らしながら…弾くより考えている時間の方が長い。

そもそも、コードの知識がなさ過ぎて、いちいち意味を調べるところから。

ギターでやってみた事を翌日はチェロで試し、やっぱりチェロの音が好きだと思う。

こんな初心者のところに来てくれた楽器、ごめんなさい〜そしてありがとう^ ^


憧れるのはこんな演奏。

チューニング、どうしてるんだろう?

ここまで出来るには相当かかりそう。

…さて、実はギターも

「あのね、ある日大きな荷物が届くから」

と、チェロ を買った日と同じみたいにドキドキしながら家族に言い…

届いたけどスルーされ、

「怒られなくて良かった!」

と思う、あれこれやらかす割には未だに小心者。

20年以上一緒に暮らせば、多少は諦めてくれる様だ。

私も少しずつ、少しずつ空を破って冬から脱出している。

だんだん自分らしく生きられる様になりつつある。









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