見出し画像

106ヶ国からの入国許可と『絶対行くべき世界のコワーキング&コリビングBEST20』が指し示すこれからのローカルコワーキング〜国内企業社員より海外のデジタルノマドにフォーカスしたコリビングのすすめ〜小さなコワーキングの作り方#2

※この記事は、元々は有料記事ですが、最後まで無料で読めるように設定されています。

そろそろコロナ禍が落ち着きを見せ始めた先日、政府は106ヶ国の入国拒否措置を8日から解除することを決定した。

日本への入国をビジネスや留学などの目的に絞るものの、対象になるのは北米のアメリカやカナダ、ヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アジアのタイやインドネシアなどで、残りの56ヶ国が順次受け入れられるのも時間の問題かもしれない。

「やっと」という感じがするが、そうすると何が起こるのか。観光業界がインバウンドを期待するのは当然だが、ぼくとしては、ただの観光旅行者ではなく、この2年の間、自由に移働できずウズウズしていた世界中のデジタルノマド(=リモートワーカー)が日本にもやってくる可能性がある、と見ている。というか、期待している。

実はパンデミック前から、東南アジアを訪れるデジタルノマドは垣根の向こうから遠く覗き込むように日本に関心を寄せていた。事実、ぼくの友人の中にはしっかり世界から呼び寄せてゲストハウスを経営している人もいる。が、そこへコロナが襲いかかってきて、彼らも停滞を余儀なくされた。

だが、今後、日本への入国が叶うとなれば、抑えられていた欲求がまたムクムクと沸き起こるのは必至。この層を取り込まない手はない。

そこで地方のコワーキングに提案したいことがある。

動きの鈍い国内企業よりも自由に動ける海外のデジタルノマド

それは、一向に普及しない企業主導型の国内ワーケーションによる効果を期待するより(ぼくはこの日本型ワーケーションは早晩腰砕けに終わると見ている)、海外から直接デジタルノマドを引き寄せることにトライしたらどうだろうか、ということ。

もっとはっきり言うと、コロナ禍後(まだ終わってないけど)のローカルコワーキングがフォーカスすべきは、東京から企業の制度に則って来る会社員よりも(ま、多少はいるにせよ)、世界から自分の意志で渡航して来るリモートワーカーのほうだ、ということ。

彼らは短くても2週間、場合によっては1ヶ月、2ヶ月と、その地に長期滞在する。それだけ時間があれば、単なる旅行者としてではなくて友人として地元に溶け込む機会も設けられる。彼らも、ただ移動することが目的ではなくて、行った先で仲間、つまり人的ネットワークを広げたくてやってくる。

そのつながりの中でビジネスコラボが起こる可能性もないわけではない。事実、パンデミック前の東南アジアでは長期滞在する間にパートナーを見つけ起業に至るケースも現れていて、ニューヨーク・タイムズは彼らのことを移動しながら起業する者という意味で「Remotepreneur(リモートプレナー)」と表現していた。

そのネットワークをつなぐための接続点としてコワーキングがある。観光は、そのついでだ。肝心なのは景色や食べ物や土産物ではなくて、その背景や周辺にいるローカルの「人」だ。だから、ローカルの「人」がいる(つまり、コミュニティのある)コワーキングをまず作っておくことが前提。そうして、コワーキングがローカル経済を回すエンジンとなる。

ここで、つながりができればリピートする可能性も高い。事実、上記の友人のところはそれができてて、まず地元民がオモシロイ。そこが気にいった人が長く滞在する。以前、ぼくが行ったときには某世界的スポーツメーカーのアジア支社長がお忍びで長期滞在してた。

もちろん、クリエイター系の若者もどんどんやってくる。彼らは情報伝達力もすごいので、口コミで世界中にそのコワーキングの存在が知れ渡る。だから、その友人は一切宣伝をしていない。勝手に来る。

自由にスケジューリングして、自律的に時間と仕事をコントロールできる者。それが、リモートワーカーであり、デジタルノマド。普通の(日本の)会社員には土台無理な話だ。いずれそうなるとしても、相当、時間がかかることは想像に難くない。むしろデジタルノマドの馴染みのコワーキングになることのほうが、地方のコワーキングスペースにとっては大事。

つまり、こういう態勢を整えることが肝要。

以前から企業ではなくて個人にフォーカスすべきと、何度も何度も口酸っぱくして言ってきたけれど、日本人は何かと言うと「企業」という看板に騙される。「企業ありき」のマインドが割と小さな頃から植え付けられているフシがある。悲しいけれど、一種の洗脳だ。

ある会合で「なぜ、企業ばかり誘致しようとするのか?個人にフォーカスするべきではないか?」と内閣府の人に訊いたら、「企業の方がカウントしやすいから」と即答されて顎が床につくぐらい驚いた。要するに、事務方の仕事がしやすいから、と。それ、地元の人たちの考えとかまるで無視してるんじゃないのか?

ぼくはこれはカンタンな算数がまるでできていない、と思ってる。ちょっとデータを拾っておこう。当たり前の話だが、国内の企業よりも世界のリモートワーカーのほうがマーケットが桁違いにでかい。

今年1月のこの記事によると、

日本企業のテレワーク実施率は18.5%に過ぎない。

(画像出典:共同通信PRWire)

比較的、テレワークを制度として導入しやすい社員1,001名以上の大企業でも29.8%で前回より低下している。

(画像出典:共同通信PRWire)

ちなみに、社員が10,000人以上の大企業をトータルしても、社員数はわずか1,117,650人しかいなかった(2020年12月時点)。

もうひとつ、昨日、興味深いリポートがあった。テレワークで移動することが可能になっても、その移動先としての上位が東京圏のごく一部の地域に限られている。それがこの調査。

仕事が完全テレワークだったら住みたい場所 3位は北海道、2位は神奈川県 1位は? Zoom日本法人などが調査 - ITmedia NEWS

もしかしたら回答者が東京圏のワーカーに偏っていたのかもしれないが、企業人としての本音があからさまになっていて、思わず笑ってしまった(失礼)。

つまり、会社員は言うほど「移働」を求めてはいない、ということ。それは、会社という組織に属している限り仕方ない、という暗示にかかっていると思えなくもない。ないが、事実として、そういうマインドが働いている限り、会社員のリモートワークもハイブリッドワークも企業が(あるいは国が)期待するほど普及しないと思われる。(昭和の思考回路のままの経営陣が一掃されたら状況は変わるかも、とは思うけれども)

一方、デジタルノマドの中心になるのは主にミレニアル以下の世代だ。そのミレニアル世代は、2025年に世界の労働人口36億人の75%を占めるようになる。実に27億人

ちなみに同じ年、日本の労働人口6,500万人の50%がミレニアル世代になる。その数、 3,250万人。

もちろん、彼らが全員、デジタルノマドになるわけではないし、比較対象としてやや適正を欠いていることは認めるとしても、感覚的に母数としては相当なボリュームがあることが判る。なお、2035年までに世界に10億人のデジタルノマドが生まれるとする推計もある。

しかも、ここが大事な点だが、彼らはパンデミック前からテクノロジーの力を借りてすでに行動を起こしている。つまり先例があるということ。この層が、コロナ禍以降、世界中で増殖するのは火を見るより明らかだ。テレワークを今から手探りではじめるのとワケが違う。

ついでだが、Facebookにあるデジタルノマドのプライベートグループ「Digital Nomad Around the World」にはメンバーが15万人もいる。

ここでは、いま、どこがホットか、こんな仕事ができるがどこかに求人はないか、どこそこに行きたいがビザはどうなってる、歯が痛いのだけどどこかいい歯医者を知らないか、などとあらゆるメッセージが行き交い、それぞれに回答が寄せられる。それも、各自が実地に体験してる生の情報だけに説得力がある。

以前、ここに、ぼくが関わっているノマド向けのウェブサービスのことを告知したら「宣伝はNG」と却下された。しかし、メンバーが自発的に「あのサービスはいいよ。なぜなら…」と書くのは構わない。それぐらい、デジタルノマドのコミュニティとしての健全性に気を遣ってる、ということだろう。

ということで、やるやると言ってなかなかやらない企業のリモートワーク(いまだにテレワークと言ってる事自体、時代錯誤だが)よりも、ウズウズしているデジタルノマドに照準を合わせるほうが、これからのローカルコワーキングには有効ということだ。

絶対行くべき世界のコワーキング&コリビングBEST20

ところで、入国再開のニュースのほぼ1ヶ月前、こういう記事を読んだ。題して、『絶対行くべき世界のコワーキング&コリビングBEST20』。

20 Must-Visit Coworking And Coliving Spaces Around The World - Allwork.Space

いま、日本で2泊3日でワーケーションなどと言ってるが、そんなレベルではなくて、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年単位で居場所を変えて、滞在先で仲間を作ってビジネス(仕事)する環境、それがコリビング。コワーキング付きのシェアハウス(ゲストハウス)といえば分かりやすいかもしれない。ただ、泊まるだけではない、そこでワークする、ビジネスする、という点が大事。

だいたい、コロナ前から東南アジアや中南米では「Coworking & Coliving」と看板出し始めていた。そういう地域のコワーキングは、地元民よりも中長期に滞在するデジタルノマドが対象だからコリビングとセットが当たり前だ。

この記事の趣旨は、そろそろコロナの反動で移働する人が増えてもぞもぞ動き出す頃、デジタルノマドの関心はコリビングに集まりだしてる、ということ。まったく同意する。

で、世界の20ヶ所のコリビングを紹介している。バリ、スペイン、モロッコ、南アフリカ、UK、グアテマラ、エクアドル、ギリシャ、シンガポール、オーストラリア、マルタ、ノルウェー、等々、どこも実に楽しそうだ。

ちょっと、目についたところだけピックアップする。

・Outpost (Ubud, Bali, Indonesia)

バリは東南アジアでもコワーキングのメッカだ(った)。コロナ前から常に話題を提供していたが、パンデミックで一時、休業状態だったはずだが、ここへ来て再開した模様。ウェブサイトもリニューアルされている。トップページに「COLIVE & COWORK」と「COWORK ONLY」の2つのメニューがある。コリビングできるということが、バリのコワーキングにとってはもはや必須だと思われる。

実はここのことは3年前に書いてる。Outpostは2019年5月に5VCから130万ドル調達して、Roamを買収していた。参考まで。

・Dojo Bali (Canggu, Bali, Indonesia)

またバリで恐縮だが、DojoBaliも老舗のひとつ。で、例に漏れずパンデミックのあいだ休業状態だったが、昨年から8時から12時までの午前中だけコワーキングを復活させたようだ。で、ここもメインディッシュはコリビング。

注目なのは、6ヶ月間の滞在に対するビジネスビザの発行を、大幅ディスカウントとともにサポートしている。実ににくいコンセプトで、旅しながら仕事する者のかゆいところに手が届いたサービスだ。

もうひとつは、いつものここ。

・Selina Atitlan (Lake Atitlan, Guatemala)

Selinaは、世界の5つの地域の20ヶ国、約100ヶ所で、主にミレニアル+Z世代向け(←ここ肝心)のブティックホテルを運営するスタートアップだ。ほとんどのロケーションに、コワーキングスペースが用意されている。それも、デスクと電源だけの愛想のないそれではなく、ミレニアル+Z世代に好感持たれるようデザイン性に富んでいる。

ここも以前、書いてるので参照されたい。

で、残念ながら日本はない。ここに名を連ねるぐらいのコワーキング+コリビングが、そろそろ現れてもいい頃だと思うのだが、どうだろう。

ちなみに、随分前だがこれも書いてる。世界はずっと先を行ってる。

ワーケーションからコリビングへ

たぶん、日本の旅行代理店は、こういう世界の情勢を知らないだろう。世界は刻一刻と変化しているのに、旧態依然としたビジネスモデルで引っ張っていこうとしているように、ぼくには思える。そこに自治体も無思慮に乗っかる。楽だからだ。

でも、それでローカルの事業者にとって折角の機会を逃すことになるのは忍びない。

なので、地方のコワーキングは、自前のウェブサイトを作って「Japan」 「Coliving」「 Coworking」「 Degitalnomad」 あたりのキーワードでSEOして、彼らが関心を持ってる、日本のとりわけ大都会ではない地方にある日本文化を発信すべき。英語なんかは、いまどき便利なアプリがいろいろあるので、それで翻訳すれば十分通じる。

で、そのサイトを、海外のコワーキング検索サービスサイトに登録する。デジタルノマドは行く先々の宿を調べる前に、ワークスペースがあるかないかを調べる。なので、そういうディレクトリサイトには載せておいたほうが、当然いい。

Coworkersなんかが有名だが、ちょっと調べたらいくつかあったので、貼っておく。

Coworker.com: Find & Book Coworking Spaces Worldwid

Coworking Map

Coworking Spaces & Shared Offices at 5-Star Addresses

その他、ここにいっぱいディレクトリサービスが載っていた。

Top Websites to List and Find a Coworking Space

ちょっと、まとめておこう。

まず、ローカルのワーキングコミュニティを醸成する。これがないと、ただのハコで終わる。ハコは人を呼ばない。人が人を呼ぶ。 人が最高の宝。そこから受け入れ態勢を整える。

その上で、滞在(宿泊)できるコワーキング(=コリビング)を考えてみよう。もう海外では動き出した。でも、我々もまだ間に合うかもしれない。自前で宿泊施設がなかったら近隣のゲストハウスや旅館やホテルと組む。毎回、くどいがコラボすることはコワーキングの5大価値の一つだ。

最後に。

ちょっと考えたけど、日本でワーケーションというと、もう完全に会社員の福利厚生とか生産性がどうとか、ぜんぜん違うものになっている。(コ)ワーケーションのことは過去にも書いたが、

「いや、ワーケーションというのは、最低でも2週間そこに滞在して…」と毎回説明するのが面倒になった。したところで、(さっきも書いたが)企業には所詮無理で、させようとすること自体ナンセンスだと思う。それなら、社員は退職して自分でやればいい。

なので、今後、論点の軸をいっそコリビングに移そうと思う。日本型ワーケーションは、もう、いい。いずれ会社員にもリモートワーカーが増えるし、フリーランサーはもちろん増えるし、ひとりカンパニーも増えるし、そういう時間と仕事を自分で管理できる人のためのコリビングという選択肢も、あと数年すれば市民権得ると思うので。

それまでにやることは、いっぱいある。

(Cover Photo:Selina website)

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 500

最後までお読みいただき有難うございます! この記事がお役に立ちましたらウレシイです。 いただいたサポートは今後の活動に活用させていただきます。