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母親失格だと思っていたら、娘が大賢者のようなメッセージをくれた話

娘は小さいときから大人びた子だった。ひとりっこだし、周りに遊べる子どもがいなかったから、いつも私やほかの大人がまわりにいたせいかもしれない。いわゆる育てやすい子で、夜泣きをしたこともなかったし、イヤイヤ期もまばたきの一瞬で終わっていた。

その娘と、口ゲンカした。

今回のケンカは、娘の口の利き方に、私が(一方的に)キレたことから始まった。お願いしていたお皿洗いを、待てど暮らせどやらない娘に、「今日は、ママとても疲れてるから、21時までにお皿洗ってね」と念押ししたら、「あ”???」と言われた(ように聞こえた)のだ。

その瞬間、私は、モアナに向かって燃えさかる岩を投げつけるテフィティになった。大量のマグマと噴煙をまきちらすかのように、怒りの言葉を次つぎにあびせた。

「あんたの顔なんか、しばらく見たくないから、部屋に入って出てこないで!」と言ったら、「こっちだって、ママの顔なんて、もう見たくないわ!」と言って、フラメンコダンサーもびっくりな足音をたてて部屋に行き、ドアをたたき閉めた。北斗の拳のラオウのようだった。

幼稚園生のころは、怒っても声を荒げることはなく、「ママ、キライ!」ってほっぺをふくらませていてかわいかったのに、今やラオウ。この難局をきりぬけるにはユリアになるしかなかったけれど、テフィティが、ユリアになるすべはない。チーン。終了。

心拍数が正常にもどってから、自分が言った言葉をひとつひとつ思い出してみた。誰かに言われたら、私は心臓をえぐられたように苦しい思いをするだろう言葉の数かずだった。そんなひどいことを、私は愛する娘に言ったのだ。娘にきつくあたったことは何度もあるけれど、今回ばかりは、母親失格やろ!

暗い気持ちになったときは、寝るにかぎる。ベッドにもぐりこんで、電気を消した瞬間、思った。謝らないと。もしかしたら、ひどいことを言った罰で、寝ている間に私しんじゃうかもしれない。そうしたら、最後の言葉が「あんたの顔なんか、見たくない!」なんて、あまりにもひどすぎる。

娘の部屋をノックしたら返事がなかった。そっとドアを開けて、「ひどいこと言って、ごめんなさい。母親でいる資格、ないと思う。」と謝った。泣かないようにしていたのに、目からは大粒の涙がぼたぼた落ちた。その間、娘は私に背中を向けて、ずっと机に向かっていた。言いたいことはたくさんあるのに、のどに大きな石がつまっているみたいに、言葉が出てこなかった。

私が部屋にもどって数分後、忍びの者が暗号文でも渡すかのように、ドアの下からシュッと紙がすべってきた。そして、雷神ではなく、ウサギのようにタタタっと軽快な足音が去っていくのが聞こえた。

その紙には、こう書いてあった。

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ラオウが、大賢者になって、ありがたい「名言」をくださった。いや、大賢者が進化したラファエルかも。

しかし、自分で「名言」って書くか?絶対、ほかの何かとまちがえて書いたと思う。

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