合理的差別1

東京医大の男性優遇問題の本質的に重要な論点は何か?

炎上案件の論点シリーズです。

東京医大が入試で女性受験生と得点を一律減点していた問題です。

基本的には東京医大への批判的な意味で炎上しているものの、LGBTの時と同様に、一部では東京医大側を擁護する意見もネット上では根強く指示されています。

こういった現象は再現性が高く、それはそれで興味深いので、別途じっくり考えてみたいトピックです。

「性差別許すまじ」も「女性優遇が許されるなら許容すべし」も短絡的

議論を観察していると、

批判派:
性差別であり、到底許されるものではない

擁護派:
女性優遇としての男性差別は許されるなら、女性差別も許されるべき

といった具合に、性差別の是非が論点となり対立しているように思います。

性差別の存在は認めた上で、議論を前に進めるべきである

性差別を十把一絡げに批判をするのは筋悪です。

差別というのは、語義としては、「属性によって扱いを変えること」という意味合いであり、

その意味では、女性専用車両も(メンズデイのない)レディースデイも性差別ですし、極論すればトイレや公衆浴場が男女別に分かれていることも性差別と言えます。

これらの差別がなぜ社会的に許容されているのかというと、それは、その差別が「合理的」であるからに他なりません (少なくとも合理的と社会的コンセンサスが得られているから)。 

ちなみに、(メンズデイのない)レディースーデイが合理的差別かは意見の分かれるところかとは思います。

東京医大の問題を、「性差別であるから」と批判してしまうと、こういった合理的差別までも批判の対象に包含してしまいます。

「東京医大を批判するなら、女子大の存在も批判すべきだ!」といった主張がその典型例です。

ちなみに、「非合理的な女性優遇の性差別も存在するから、女性差別の存在も是認すべき」というのは全く的外れです。

単に、どっちも悪いなら、どっちも是正しましょうというだけの話です。

「女性差別はことさら批判の対象になるけど、男性差別は看過されがち」と言うなら、女性差別を是認するように迫るのではなく、男性差別を無くすように行動すれば良いだけです。

アイツもズルしてるからオレもズルしていいというのは、非常に幼稚で非生産的な主張だと思います。

同時に、たとえ、東京医大の行った性差別が合理的差別だったとしても、「受験者にその存在を明示せず行われたこと」を擁護するのはかなり無理筋かと思います。

「試験における点数の序列で合否が決定する」という公知の入試のルールに、「男女で合格ラインが異なる」という明示されないルールが内在していることは、不公平であるという以外の何者でもありません。

この時点で、東京医大の行為が正当化される可能性はありません

「性差による不平等が許容されるか?」という議論と、
「性差による不公平が許容されるか?」という議論は全く別物です。

というわけで、性差による合理的差別は認めた上で、今回の東京医大の問題が「合理的差別であるか否か」を議論した方が建設的になると思います。

なぜそのような性差別が行われたのか?

東京医大の主張によると、医療の安定供給のためには、結婚・出産による医療からの離脱・中断のおそれのある女性より、そういったおそれのない男性の方が人数が多くなければならない、とのことです。
(※ 関連記事からの意訳です)

これは、その善し悪しをいったん置いておくと、医療に限らず、様々な企業でも起きていることではないでしょうか?

公言すると批判に晒されるから大きな声では言えないけど、多くの管理職や経営者が内心感じていることではないかと思うのです。

出産・育児でのキャリアの中断や退職は事実として起きていて、それに対応して採用や人員配置をするという調整は実際に発生します。

こういった調整コストが、(一般的に) 男性の方が低いというのは、(善し悪しを別とすると) 事実の一端ではあるかと思います。

合理的差別の存在を認めた上で、「合理的差別が不要になるためには」という問を考えることが本質的に重要なのではないか

僕自身、こういった性差別が非倫理的であるというのは100%同意ですが、非合理的かと問われると答えに窮します。

こうした直言しにくい問題に「倫理の繭」で何となく包んでしまって直視を避けることは、今回の東京医大のような「暗黙的な合理的差別」の存在を許さざるを得なくなってしまうように思います。


「出産・育児によるキャリアの中断や離職を懸念した合理的差別が不要になるには、どうしたら良いのか?」

ここに議論の矛先が向かえば、もっと発展的な議論ができるんじゃないかと思うのです。

これはこれで思うところと仮説は持っているので、また何かの機会に整理してアウトプットしてみたいと思います。

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