当社自慢の品「鰻師の極」を訪ねて【鰻師編】
薬を使わず鰻を育てる
鹿児島県志布志(しぶし)市にある、関西スーパー当社自慢の品の鰻の蒲焼『鰻師の極』の育ての親、山田水産さん(以下敬称略)にお話を伺ってきました。
山田水産の最大の特徴は「無投薬養殖」です。
一般的には鰻を養殖する際、病気や病気の予防に抗生物質を与えながら育てます。
しかし、山田水産では「鰻が病気にならなければ薬を与えなくてもいいのではないか」と考え、無投薬で育てる挑戦を始めました。
しかし、養殖場という本来とは違う生育環境で繊細な鰻の稚魚を健康に育てるというのは並大抵のことではなく、しかも最初は全員まったくの素人からスタートだったため、45%近い鰻がダメになるなど、失敗の連続…。それでも怯まず追求し続けました。完全無投薬が成功するまで約2年の歳月を要したそうです。
水は命の源
もう一つの特徴は地下から汲み上げた天然の地下水を使用していること。
この水は鰻の生育だけでなく鰻を捌く際にも利用されます。この地の水はミネラルを多く含み水質が良く水量も豊富なため、無投薬養殖のカギとなっています。またここに住む鰻師だけなく近隣の方の飲み水にもなっています。
養殖の技術や手法を確立
トライアンドエラーを繰り返す中で、鰻師たちは鰻を病気にさせない養殖の技術や手法を一つずつ確立していきます。現在はコンピューターで水温や水位が管理され、異常があればスタッフに自動的に通知されます。1日2回の水質検査も欠かせません。水の温度を上げる時は鰻にストレスを与えないよう、ゆっくり2時間で1度。エアコンで一気に温度を下げる人間よりずっとずっと繊細な生き物なんですね。
鰻の病気の原因は餌の食べ過ぎが多いそう。そのため餌にも細心の注意を払います。成長に応じた量や配合、硬さ、ビタミンなど、生育度合に応じて調整し、作り置きせず毎日練って与えます。固形を想像していたのですが、餌はぷるんぷるんの大きなゼリーみたいで、鰻も食べやすそうです。
鰻と暮らす
どれだけ管理を効率化しても、最後は鰻師の長年の経験や勘がものをいいます。餌への食いつきや泳ぎ方、水の匂いなど、五感で鰻の健康に目を光らせます。「それがいちばん大事、人間が管理を怠ると病気になる」とおっしゃっていました。
また、24時間体制で駆けつけられるよう、鰻師は養鰻場の中に家がありご家族と暮らしています。なんと手間のかかる無投薬養殖‥。鰻も家族の一員に思えてきました。
その他、新しい稚魚を迎える際には、細菌の繁殖のリスクを減らすため、事前に一旦池の水を全部抜き、壁面や底まで約100坪の池を徹底的に掃除します。
半分だけ水を入れ替える養鰻場もあるそうですが、山田水産では無投薬のリスクを最大限減らすためこの作業を欠かさず行います。一見まっさらに見えるくらいピカピカ✨
美味しくて安全・安心な鰻を
お話を伺っていて感じたのは隙のなさ。
他にも書ききれないほど徹底した管理が行われており、その上で常に鰻師たちの目が隅々まで光っています。改めて無投薬で鰻を育てるというのは本当に大変なことで、常にリスクと隣り合わせなのだなと感じました。
それでもなぜ無投薬にこだわるのか。
それは、食べたものがその人の体を作るから。「鰻の健康=食べる人の健康」でもあります。
そしてもう一つ欠かせないのは「おいしさ」です。薬を摂らないこと、元気にストレスなく育つことで、臭みがなくふっくらと美味しい鰻になるのだそうです。
大きな意義のある取り組みだと思いました。
関西スーパーの「食の安全・安心をお届けする」というモットーと山田水産の取り組みが一致し、2015年より「鰻師の極」を当社自慢の品ブランドとして販売しています。
近年は、ほろほろの身で皮まで柔らかく、小骨も細く非常においしい『新仔うなぎ』も取り扱い始めました。味わえるのは9月末〜10月上旬のみの貴重な鰻ですので、ぜひ一度ご賞味ください。
突然ですがクイズです!
Q:日本うなぎの稚魚(シラスウナギ)はどこで獲れるでしょう?
A:正解は河口部。海と川の境目です。
鰻の稚魚は海で育つんですね。
しかも産卵はフィリピン東方の日本から2000km以上離れたマリアナ諸島付近で確認されています。
そこからみんなでニョロニョロ泳いで日本や台湾、中国などにやってきます(日本ではそのタイミングでシラスウナギ漁が解禁され、養殖はその際に獲れた稚魚を使用します)。そして日本の河川で数年過ごし、また産卵のためにマリアナ諸島に帰っていくそうです。
なぜ日本まで?なぜ成魚は川に?
不思議ですね〜。この研究が発表されたのは2006年とまだ最近のお話です。日本人には馴染みの深い鰻ですが、まだまだ謎の多い生き物なんですね。
次は【蒲焼編】をお届けします。合わせてご覧ください!