見出し画像

改正電子帳簿保存法[令和4年1月1日施行]電子取引(6)-要件:検索機能-

改正電子帳簿保存法における電子取引の要件の一つ、検索機能の内容について見ていきます。


まず、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則、電子帳簿保存法取扱通達によると、

"次の要件を満たす"記録事項の検索できる機能を確保する(規2条⑥六)

蓄積された記録事項から、設定した条件に該当する記録事項を探し出すことができ、
検索により探し出された記録事項のみが、ディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式、明瞭な状態で出力される機能(通4-9)

とされています。
では、その"次の要件"を見ていきましょう。


■取引年月日、その他の日付、取引金額、取引先を検索の条件として設定できる(規2条⑥六イ)(通4-34)

例えば、次に掲げる書類の区分に応じ、それぞれ次に定める記録項目が該当(通4-34)
 ▲領収書 領収年月日、領収金額、取引先名称
 ▲請求書 請求年月日、請求金額、取引先名称
 ▲納品書 納品年月日、取引先名称
 ▲注文書 注文年月日、注文金額、取引先名称
 ▲見積書 見積年月日、見積金額、取引先名称


一連番号等を書類に記載、又は記録することにより帳簿との関連性の要件を確保している場合
一連番号等により書類を検索することができる機能が必要となる(通4-34)

 ●取引年月日その他の日付 書類に記載すべき日付
 ●取引金額 書類に記載すべき取引の金額、又は資産の譲渡等の対価の額等をいい、単価、残高を含まない
 ●取引先 書類に記載すべき取引先名称
  ※取引先名称は必ずしも名称でなく、取引先コードが定められ、コード表が備え付けられている場合、コードによる記録でも差し支えない


税務調査の際に必要なデータを確認することを可能とし、調査の効率性の確保に資するために設けられているものと考えられ、税務調査では帳簿の確認を基本とし、帳簿に関連する書類や取引情報の確認を行っていくことが想定されるため、基本的には帳簿と同じ金額で検索できるようにしておく
(受領した国税関係書類に記載されている金額を記録項目としていても問題はない)(電取追4)


保存した画像データをテキスト化して保存することができる機能などが備わっていない場合

保存した書類に係る、取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を手入力するなどして、検索の条件として設定する必要がある(問42)



こちらでは、具体的に取引年月日、その他の日付、取引金額、取引先、と指定していますので、理解がしやすいと思われます。
また、「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」にて、金額記載についても言及されており、消費税の税込、税抜などの帳簿の記載方法によって変わってくると理解しました。
(手入力の場合は煩雑になる感じがしましたので、都度保存をしておいた方が良いでしょう)


■日付、又は金額は、その範囲を指定して条件を設定できる(規2条⑥六ロ)

課税期間ごとに、日付又は金額の任意の範囲を指定して条件設定を行い検索できる(通4-10)

データ量が膨大であるなどの理由で複数の保存媒体で保存せざるを得ない場合や、例えば、中間決算を組んでおり半期ごとに帳簿を作成している場合など、
一課税期間を通じて検索をすることが困難であることについて合理的な理由があるときは、
合理的な期間ごとに範囲を指定して検索をすることができれば差し支えない(問15)

税務調査における質問検査権の行使に基づく記録の提示、又は提出(ダウンロード)の要求に応じることができる場合は不要(通4-13)



質問検査権の要求に応じることができる場合でも、可能な場合は日付や金額で検索できるようにしておくと管理上より望ましい状況になることもありえます。自社の状況に応じて判断していくと良いでしょう。


■二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件(により検索)を設定できる(規2条⑥六ハ)

個々の書類を検索するに当たり、
検索の条件として設定した項目(取引年月日取引金額取引先)から少なくとも二の記録項目を任意に選択して、これを検索の条件とする場合に、
いずれの二の記録項目の組合せによっても条件を設定できる(通4-11)

二の記録項目の組合せは、「AかつB」と「A又はB」とが考えられるが、
「A又はB」の組合せは、それぞれの記録項目により二度検索するのと実質的に変わらないから、該当しない(問29)

必ずしも「AかつB」という組合せで検索できることのみではなく、
一の記録項目(例えば「A」)により検索をし、それにより探し出された記録事項を対象として、別の記録項目(例えば「B」)により再度検索をする方式も
結果は同じであるから要件を満たす(問29)

税務調査における質問検査権の行使に基づく記録の提示、又は提出(ダウンロード)の要求に応じることができる場合は不要(通4-13)



Q&Aで具体的な例示がされていましたね。
こちらの要件も、質問検査権の要求に応じることができる場合でも、可能な場合は取引年月日、取引金額、取引先のうち2つの項目で検索できるようにしておくと管理上より望ましい状況になることもありえます。自社の状況に応じて判断していくと良いでしょう。


留意点


検索項目について記録事項がない記録を検索できる機能を含む(通4-9)
 検索項目に係る記録事項がない場合でもその空欄を対象として検索できるようにする(通4-9)
 記載すべき金額がない書類は、0円と記載することで差し支えない(電取追5)



記録事項がない記録の場合、どのようなファイル名にしておくのが良いのか決めておくと良いでしょう。
恐らく、規則性を持たせる必要があると感じています。


"次に掲げる方法"により検索できる状態のときは、要件を満たしているとして取り扱う(通4-12)

ファイル名に規則性(例えば、取引年月日、その他の日付(西暦)、取引金額、取引先の順で統一)を有して記録項目を入力して検索できる状態にしておく方法(通4-12)

 ・ファイル名の入力により検索機能を満たそうとする、
  例) 2022年(令和4年)11月30日付の株式会社霞商事からの20,000円の請求書データの場合
  ⇒ 「20221130_(株)霞商事_20,000」 (問33)

  例:請求書データ(PDF)のファイル名に規則性をもって内容を表示する
  
2022年(令和4年)10月31日に株式会社国税商事から受領した110,000円の請求書
  ⇒  「 20221031_(株)国税商事_110,000」 (問12)

 ・「取引の相手先」や「各月など任意のフォルダに格納して保存する(問12)

 ・判定期間に係る基準期間(通常は2年前)の売上高が 1,000 万円以下であり、ダウンロードの求めに応じる場合、
  請求書等データ(PDF)のファイル名に、規則性をもって内容を表示することは不要(問12)


 ●検索するために別途、(エクセル等の表計算ソフトにより)索引簿等を作成し、(エクセル等の)索引簿を用いて検索できる状態にしておく方法(通4-12)

 請求書等データ(PDF)のファイル名に、規則性をもって内容を表示する代わりに、
 索引簿を作成し、索引簿を使用して請求書等のデータを検索する方法も可能(問12)

 ・データを保存するシステムがない場合に検索機能の確保の要件を満たす方法として、
  例えば、エクセル等の表計算ソフトにより、
  取引データに係る取引年月日その他の日付、取引金額、取引先の情報を入力して一覧表を作成することにより、
  入力された項目間で範囲指定、二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定をすることが可能な状態であれば、
検索機能の確保の要件を満たす(問33)



ファイル名もどのようにしておけばいいのか分かりやすく説明がされていました。
フォルダの振り分けは、煩雑にならずに検索ができる状態で保存をする形になると思われます。自社の実態を鑑みて、漏れなく、手間がかからない方法を検討されると良いでしょう。
また、エクセル等での索引簿の方が検索がしやすい場合は、利用をすることによる手間が増加する可能性があることを考慮すると良いかと思います。


ダウンロードの求めがあった場合
その求めの全てに応じることいい、求めに一部でも応じない場合は規定の適用は受けられない(通4-14)

請求書等データ(PDF)のファイル名に、規則性をもって内容を表示し、
「取引の相手先」や「各月」など
任意のフォルダに格納して保存したデータについて提出する(問12)


求めに一部でも応じず、検索機能の確保に関する要件の全て、が備わっていなかった場合
要件に従って保存等が行われていないため、その保存等がされている記録は当該書類とみなされない(通4-14)

<ダウンロードの求めの対象>(通4-14)
備付け、及び保存が行われている書類に係る記録で、記録に関する履歴データ等のほか、記録を補完するための取引先コード表等も含む
税務職員の求めた状態で提出される必要がある

 ・本規定の適用要件の対象とはならなくても、税務調査で、質問検査権の規定に基づき、帳簿以外の記録、その他パソコンに存在する取引に関するメールやメモデータといった記録についても提示、又は提出を求める対象になる(通4-14)

 ・通常出力できるであろうファイル形式等で提供される必要があり、並び順等に関する統一的な決まりがある訳ではない(電取追6)

 ・「ダウンロードの求め」は、保存媒体自体の提示・提出までを求めるものではない、税務調査の際には、質問検査権に基づき、保存媒体の確認を行う場合もある(電取追6)



保存は可能であっても、どのようなサーバーやストレージで検索機能を持たせるのか、それが煩わしいからシステムを導入してそこに保存をした方が良いのか、こちらも実態や資金に応じて選択をする流れになると想像しています。自社の状況に合う方法を選択していけるといいですよね。


関連条文等

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第2条6項六、第2条6項六イ、第2条6項六ロ、第2条6項六ハ、第4条2項

電子帳簿保存法取扱通達4-9、4-10、4-11、4-12、4-13、4-14、4-34、
(電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明))

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問12、問33

電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】問42

電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】問15、問29

お問合せの多いご質問(令和3年11月)電取追4、電取追5、電取追6


おわりに

実際には質問検査権が行使された場合に対応するケースが多いとした場合、まずは取引年月日、その他の日付、取引金額、取引先を検索の条件として設定できる保存先を決め、フォルダ分けやフォルダ名のルールを決めて、何に関して、誰が、いつ保存して、スタッフ間で連携して、誰が確認をするのか、など管理体制を構築する必要が出てくると思います。

システムを利用する場合も同様なイメージで体制を構築していく必要があるでしょう。

その場合、法律が変わったから、という認識で管理をしていくよりも、この要件を満たすことでしっかりと管理できていける、他の管理にも活かしていこう、という気持ちで進められると良いのではないでしょうか。

しっかりとした事業計画を策定する機会になり、事業が継続・発展していくきっかけと捉えるのもよいでしょう。

「タイトル未設定」という表示になっているサイトもありますが、PDFはこのように表示されるみたいで、公的なサイトになりますので、ご安心いただけましたらと思います。

随時更新をしていきますので、引き続きご覧頂けますと嬉しいです。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

お問い合わせはこちらまで↓


最後まで読んできただき、ありがとうございます!
今後もお役に立てる記事を投稿していきますので、
スキフォローなどをいただけますと
とても喜びまくります。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?