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「韓非子」説林下 (21)

「韓非子」説林下 (21)

【書き下し文】
悍者(かんしゃ)(※1)と隣するもの有り。宅を売りて之を避けんと欲す。
人曰く、是れ其の貫(※2) 将(まさ)に満たんとす、と。遂に之を去る。
或る人曰く、之(ゆ)く勿れ。子 姑(しばら)く之を待て、と。
答へて曰く、吾れ其れ我を以て貫を満たさんを恐る、と。遂に去る。
故に曰く、物の幾は靡(び)にすべき所に非ざるなり。


【現代語訳】
乱暴者と隣同士になった者がいた。家を売って難を避けようとした。
ある人が言った。「あの男の悪事ももうじき年貢の納め時になるだろう。もう少し待ってみてはどうか」と。
答えて言った。「私は私への悪事をもってして年貢の納め時になることを恐れているのだ」と。そして去った。
だから言うのだ。物事には時機というものがあり、ぐずぐずしていてはいけないのだ、と。


※1 悍者は乱暴者。
※2 貫は銭を通す縄。銭を通す縄がいっぱいになることに喩えて、悪事をたくさん行い、極めること。貫盈。悪事を極めればじきに天罰がくだるのだという。
※3 靡はゆっくりすること。

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