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じいじからの放送大学便り④バブル崩壊を学ぶ

【放送大学でバブル崩壊を学ぶ】

放送大学本部にある図書館に行ってきました。ここには新聞や雑誌のアーカイブがあります。そこで1989年12月から1990年にかけての新聞記事を読みに来たのです。

縮刷版は1ヶ月で一冊字が小さくて年寄りには大変

1989年12月とは日経平均が最高値をつけたいわゆるバブルの頂点からその崩壊の時期です。
昨今、日経平均4万円とか景気の良い話がある中で、今後の見通しの参考にと思い、1990年のバブル崩壊を当時の新聞(主に日経新聞)を読んでリアルタイ厶的に確認したくなったのわけです。
暇人だから出来る所業です。

しかしこれがまた読み始めると不謹慎ながらとてつもなく面白くて、まるで良く出来たドラマを観るような感じで、読み進め結局1日図書館にいることになりました。
参考になると思いますので皆さんにもほんのさわりですが記事の見出しを中心にご紹介します。
日付の横にあるのは前日の日経平均の終値で、その横にあるのは最高値(38,916円)からの累計ダウン率です。

ちなみにこの時の政権は自民党の海部首相でリクルート事件などで揉めていました。世界でもソ連のゴルバチョフがちょっと危ない感じで全体的に不安定な情勢でした。

●1989年12月30日(38916円)
日経平均最高値の日、そして年内取引最終日の翌日。
当たり前ですがこの時は皆さん、良い調子でした。
◯サラリーマン投資家は株を抱えて寝正月。OLは株を抱えて海外旅行。
◯日本は世界最大の市場に成長

●1990年1月13日(37516円▲1.7%)
1月に入って7日間の内5日がマイナスで「ちょっとおかしいな?」と言う感じでしたが、まだまだ強気です。
◯二番底を探る展開か?
◯月刊経営塾のインタビューは当時野村證券社長の田渕義久、テーマは「株屋に弱気はない」

何とか戻ると思いたい記者たち

●1月17日(36850円▲5.2%)
前日666円下げピークからのマイナスが5%を越えたところで株式担当記者の座談会の記事が株式欄に載りました。
株価下落の原因がお題でしたが要点は
①米金融緩和延期②不動産過剰流動性に対する当局の規制懸念④東欧政局不安④来月の総選挙での与党敗北懸念が挙げられました。
上記②の「過剰流動性」はバブル問題の本質で、さすがと思いましたが、お題は下落の原因なので「過剰流動性に対する規制懸念」になったわけですね。懸念は的中しエライことになります。

※その後株価は1ヶ月ほど小康状態となり少し戻します。世間は株価が伸びないのは海部首相が弱っちいせいで選挙で自民党が勝てば株価も戻ると思っていました。

くろ2月20日(37222円▲4.3%)
前週の総選挙で海部内閣は意外?な国民の支持を受け安定過半数を確保しましたが株価は少し下がりました。
思えばこの日迄が最高値で買った人でもあまり怪我をせずに撤退出来るチャンスでした。
◯動かない機関投資家。総選挙自民大勝でなぜ?反転のきっかけは米の金融緩和

●2月22日(35734円▲8.1%)
海部内閣がリクルート関係議員を排除しようと組閣に苦労しているのをあざ笑うように株価は2日で2,000円も下がってしまいました。
◯株価急落、なお強い売り圧力。
◯日銀筋、株ろうばい売りない。利上げ効果を見守る。
※当時日銀はこれだけの株安にも関わらず物価抑制のためにさらに公定歩合を上げようとしていました。

●2月27日(33321円▲14.3%)その後も下落は続きましたが不思議なほど政府からの発信は無かったです。この日ようやく橋本蔵相のコメントが出ました。
◯日経平均1569円下げ史上2番目
◯空前の売り手市場、就職戦線どうなる※この時はまだ企業は沢山採用しようとしてました。
◯橋本蔵相「日本のファンダメンタルズは問題ない」※ファンダメンタルズに問題があったのではなくファンダメンタルズに付いている値段に問題があったのです。

※それでもこの下げの後、株価は2週間ほど持ちこたえ市場からは何故か「これで下げ止まり」という根拠のない意見が出てきました。
神様が「ここが最後の撤退チャンスでっせ」と作ってくれた2週間だったのでしょう。

●3月20日(31263円▲19.6%)
その後株価は15日頃から急に下げる中、日銀はただでさえ4.1%ととんでも無く高い公定歩合に手を付けました。
◯公定歩合きょうにも1%引き上げ
※目の前の物価や為替に対して対策を打つ日銀とこの後の崩壊に対して反応する株式市場では価値観が全く違います。市場からの悲鳴が聞こえそうです。
◯株、下げ幅市場3位
※もうこのあたりになると新聞も「史上第◯位」とか慣れてしまったのか株安もベタ記事扱いでした。
このあたりから新聞に「バブル」と言う単語が出るようになりました。

●3月27日(31825円▲18.1%)
「大蔵省、不動産融資を総量規制」
※良くバブル崩壊のきっかけとして上記の総量規制が挙げられますが実際は3ヶ月経ってからです。
しかし不動産が高騰しだして3年も経ってから、それも公定歩合とセットとは悪意さえ感じてしまいます。
この日を境に株価は歯止めを失ってしまいます。

最後に面白い記事を見つけました。
●3月28日
「三菱商事トランプ氏のクルーザー180億円で販売」
トランプ氏はあのトランプ元大統領です。このタイミングで日本に売るとは凄いですね。

その後株価は下がり続け年末には一万円のダウンとなる22,983円まで下落しました。

以上、記事を見て特に感じた事は以下の2つです。

1.バブル崩壊は戦後最大の勢いで株価が下落したのですがそれでもこれはまずいぞ、と考える踊り場がいくつかありましたね。やはり損切りルール(10%以上、下がれば売る等)は株をやる場合絶対必要です。
2.株価が下落しだしてからよく新聞では「なぜ株価が下落するのか」の特集は組まれましたが逆になぜ去年まで株価が高かったのかという視点は少なかったように思います。

この2の視点は重要だと思います。
我々は得てして何か不都合が起こると「何故、悪くなったのか」と思ってしまいます。しかし実際は悪くなったのではなく常態に戻っているという見方もあるのではないでしょうか?
バブル崩壊等はまさにそれです。
こういう場合は逆に「今まで何でこんなに良かったのか」を分析して常態に移るプロセスの中で手を打っていくべきだったと思います。
しかしこんな勘違いは往々にして存在すると思いませんか?恋愛、友情、仕事、体調。悪くなってるのではなくて今まで運良く上手くいってただけではないですか?
いろいろ悪くなった事を修正しているつもりがもとの良いところまで無くしてしまったりとか。