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釣り好きの彼女

女子高生といえば休日はお買い物に行ったり、彼氏とデートに行くのが普通だと思うのだが、僕の彼女は釣りが好きだった。

それも多岐にわたっていて、フライだったり、ルアーだったりと、ここまでは好きだという女子も多少はいると思う。でも彼女の場合はもっと上をいっていて、餌釣りだったり、船の釣りだったり、そこまで行くともうおじさんが好きな釣りになってしまう。

女の子として、さらには高校生という年頃の女子としては、滅多にいない人種だと思う。
週末になると必ず彼女は釣りに行く。行かないのは台風が上陸した時ぐらいだ。
休みになると「ねえ、ちょっと行かない。分かるよね?」と、僕は彼女に釣りに誘われる。仕方がないからついていく。それが彼氏としての責任だから。

でも毎週末こんなことしているカップルなんているだろうか、みんな映画を見に行ったり、もうちょっとムードのある場所に行ったりしてるんじゃないの?で、その先にはハグがあったり、キスがあったり、その先があったり……と考えるわけだが、実際には港の波止場でおじさんたちと一緒に釣りをしたり、山奥に行って藪漕ぎしながら源流を遡行したりと、とてもじゃないがまっとうな高校生の付き合いとはかけ離れているのだ。

僕のことをいざという時のガードマンとして考えているのは確実だったが、彼氏として見ているのかどうかは、僕には分からなかった。きっと彼女にも分からないと思う。釣りに夢中で、僕のことは頭の中の1%くらいしかないから。

「明日はあじ釣りに行く」と彼女は言った。僕はほっとした。なぜならあじ釣りが一番簡単で疲れない釣りだから。たまに「岩魚を釣りたい」といった時には、その日の夜から大忙しになる。いろいろ考えて薬を用意したり、軍手を用意したり、と準備しているだけで憂鬱になってくる。で、彼女はといえば「北海道のヒグマには効果あるみたいだから」と、クマよけスプレーを持ってきてシューシューと体にかけている。それで熊を気にしながら山に入っていく。

でも、今回はあじ釣りということで僕は安心した。漁港に行ってサビキを流すだけだから楽ちんだ。毎回これだったら行ってもいい。釣りをしながら会話もできる。これが源流にでも行こうものならひたすら無言で川を上っていかなければならない。釣りをしながら会話ができれば少しは彼女と付き合っているという気がしてくる。でも釣りをしている時の彼女の会話といったら、「そこにもっとコマセ撒け」とか、「今がチャンス時合いだ」とか、年頃の高校生の男女の会話としては成立しないものばかりだった。

人間には狩猟本能というものがある。現代社会でそれを合法的に満たせるものは、釣りやギャンブルだったりするわけだが、主に男性がその素質を多く持っているものだと僕は思っていた。
でも僕の目の前にそうでないことを証明している女子がいる。きっとパチンコでもやったら、彼女はキチガイのように飛びつくかもしれない。

そんなんで一日中釣りをして別れるわけだが、普通の高校生が「じゃ、またね」なんて言って、それなりの雰囲気を醸しながら別れるのに対して、僕たちの場合は、「じゃ、またな」って言って、一仕事終えた漁師のように別れるのがお約束だった。

そんな彼女でも女性らしいところがあった。毎回釣った魚を料理することだった。今回も釣ったあじを南蛮漬けにして次の日持ってきた。彼女のそんなところがちょっと好きだったりする。

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ありがとうございます!
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へたくそですがよろしくおねがいします。
コメント (2)
いいカノジョですネ♫こういうコ…スキですヨ♫
宇佐美真里さん
たくさん読んでくれてありがとうございます。
気に入ってくれたら嬉しいです。
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