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映画『新宿鸚哥』を観て

9月20日、久しぶりに東京に行った。まきすけさんが主演の映画『新宿鸚哥』を観るため。こういう時に限って、仕事はスムーズに終わらない。本当は、余裕を持って会社を出て、登万里子と少し早いお夕飯を食べようと思っていた。しかし、映画が上映される「高円寺シアターバッカス」がある高円寺に着いたのは、上映時間の10分くらい前であった。まさにギリギリ。急いで高円寺の北口を歩く。

かつて南口は何度か歩いたことがあったものの、北口はおそらく初めてだった。飲食店が左右に並び、新旧入り混じる商店街のような雰囲気があった。映画を観終わったら入りたいお店はあるかな、などと余裕ぶってノロノロ歩き、映画館に着いたのは上映開始5分くらい前だった。登万里子が最前列の端っこを確保しており、「Good job」と親指を立てて感謝の気持ちを表した。登万里子は高円寺に来る前に大雨に降られ、ズボンが半分までびしょ濡れになったとのこと。私は一切雨には降られなかったので、ギリギリに着いたことが逆に良かったのだなと思った。

「高円寺シアターバッカス」入り口

「高円寺シアターバッカス」は、渋谷にあったアップリンクに少し似た雰囲気だった。高円寺のほうがアンダーグラウンド感はあったが。そこまで広くなく、さまざまな種類の椅子があり、リラックスして鑑賞できる感じだった。私は端っこに、その隣に登万里子が。目線は少しだけ見上げるくらいの、最前列だけれどちょうど良い席だった。登万里子と少し会話をして、すぐに映画は始まった。

長くもなく短くもなく、ちょうど良い長さの鑑賞時間で、観終わった後に「久しぶりにこういう映画を観たな」という充実感があった。寺山修司の映画のような不気味さと不思議さを感じたのだ。意味がありそうで意味がなさそうな、わかりそうでわからないような、どっちとも取れるような、観る人にとって多様な答えを用意してくれているような、そんな感じがした。それでいて、ポールダンサーがセクシーで、そのダンスには全ての観客が見入ったに違いない。そして、まきすけさん演じる写真家も、その苦悩と好奇心がよく表れていて、こんな写真家いるかもしれないし、いないかもしれない、という絶妙なバランスの演技に引き込まれた。まきすけさんが主演ということもあり、写真好きならほほ笑んでしまうくらい細部に気を遣っていて、そういった意味でも完成度の高い映画だと思った。

序盤で横木さんがかつて撮影した写真のスライドショーがモノクロで流れてきて、私と登万里子はすぐに「横木さんの写真だ」とわかり、じっと見ていたら、私が流れてきた! 何年か前に横木さんの家で撮影してもらった私の姿だった。今よりもはるかに痩せていて、格好良かった。思わず登万里子と顔を見合わせ笑ってしまった。後日横木さんにその話をしたら、有名人を使うと著作権などがあるため、著作権フリーの私が使われたということだった。

そういった個人的なトピックスを除いても、かなり充実した映画作品を観ることができて、上映後は登万里子と2人して満足げな表情になった。さらに、サプライズ?で、監督らが簡単なトークショーを開いてくれた。群馬のド田舎と大阪の枚方で育った私たちが知らない新宿についての話はとても興味深かった。このような映画をつくれるのは、きっと今までの新宿を知っているからで、今後生まれる若い世代にはつくれないのかもしれないと思った。

ポールダンサーの劇中写真

もろもろが終わったあとは、登万里子と近くのメキシカン料理屋へ行き、タコスとポテトを食べた。意外とおいしくて驚いた。今日はとても良い日だ。そう思い、高円寺を後にした。

ポテトとアボカドがおいしかった
登万里子が食べたタコス

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