銀行で熟成するチーズ
「イタリアチーズの王様」と呼ばれるチーズがあります。
パルミジャーノ・レッジャーノです。
名前は、パルマおよびレッジョ・エミリアという地名に由来します。
エミリア・ロマーニャ州、ロンバルディア州で作られています。
イタリアにはDOPと呼ばれる原産地名称保護制度があります。
チーズやワインの伝統を守る厳しい基準が設けられています。
そのDOPの認定を受けて刻印を押されたチーズだけが、
パルミジャーノ・レッジャーノを名乗ることができます。
長期熟成させた濃厚な味わいが特徴です。
ハードタイプの中でもとくに硬質のチーズです。
すりおろしてパスタ料理に和えたり、バルサミコ酢に浸して食べます。
熟成期間は2年から3年、ときには5年もかかることがあります。
その期間、チーズ製造業者は収入を得ることができません。
そのためイタリアの銀行には、チーズ製造業者への融資制度があります。
熟成中のチーズを担保として預かり、銀行が資金を貸し出すのです。
銀行にはチーズを預かるための専用の貯蔵庫が設けられています。
出荷されるまで、チーズは銀行の貯蔵庫で熟成します。
まるで金塊を預かる金庫のようです。
パルミジャーノ・レッジャーノはたいへん大きなチーズの塊です。
1個の重さが数十キログラムもあります。
まるで金塊並みの価値があります。
銀行で預かってもらう方がチーズ製造業者にとっても安心です。
盗難の心配がありません。
まるで金塊のように大切に管理されます。
イタリア中の銀行の貯蔵庫には何十万個ものチーズが眠っています。
その融資総額は数億ユーロにも及ぶそうです。
イタリアの伝統的なチーズ産業を守るために銀行が始めた制度です。
チーズ製造業者支援の意味も込められています。
パルミジャーノ・レッジャーノはそれほど価値があるチーズなのです。