物語が始まるとしたらこんな日だ。バンナムフェス感想

世の中には星の数ほどのコンテンツがあって、75億人くらいの人が生きている。
無数のコンテンツ×75億人くらい、とんでもない数なことしかわからないけれど、実際そのぶんだけ出会いがあって、そのぶんだけ物語がある。
私の流し見てたアニメに触発されて人生が変わった人もいるし、誰かが3日で飽きたソシャゲを私は愛していたりする。

2019年10月19、20日。
75億人の中の、約5万人が東京ドームにいた。
この5万人はおおむね、『バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル』という旗印のもとに集ったコンテンツやアーティストのオタクである。

オタクが5万人集まるとどうなるか。
サイリウムがめちゃめちゃピカピカ光る。

私は2日目、アリーナの前から8列目にいた。
たまに振り返ると顔を左右に傾けないと見えないくらいの角度全面がピカピカキラキラゆらゆらしていて、それらがすべてステージの上のコンテンツを応援するために振られているのだと思うと何度も感動して泣きそうになった。
演者さんが手を振るような動きをすると、呼応するように私達もサイリウムを揺らす。そのひとりひとりの自主的な動きが群となり、やがて葉がさざめくように、波打つように、東京ドームそのものが大きく深呼吸をしたみたいに、ひとつの意志を持ったみたいに見えるのだった。
本当に「夢のような光景」だった。

私は今回のフェスで過半数を占めていたであろう、アイドルマスターのオタクの一人だ。
765のアニメから入り、シンデレラガールズに長年いて、最近はシャイニーカラーズにはまっている。
まあ5万人の中に割と良くいるタイプだと思う。

私は西武ドームで行われたアイドルマスター10thライブでもアリーナにいた。
その時は円形のステージで、見渡す限り視界がすべて光で、それもとても印象に残っている。
でも、個人的には今回のほうが泣きそうになった。
群像劇が好きで、誰かが何かと出会う瞬間が好きだからだ。
群像劇は様々な人がさまざまな動きをして、相互に干渉したりしつつ、それが物語の終盤にカチッと噛み合う。その瞬間が大好きだ。
この2日間、何度もそのカチッと噛み合うような感覚があった。

会場前にはすべての参加コンテンツの旗が掲げられていて、どの旗を見ても、誰かが嬉しそうに写真を撮っていた。
sideMの神速一魂の、最初はそこそこだったoi oi oiが、繰り返すごとに大きくなり、地鳴りがして、最後は歓声が湧いた。
アイカツのバックスクリーンの映像からストーリーを読み取ってSHINING LINE*の歌詞を聞いて超速理解をして泣きじゃくったオタクがいた。
単独で殴り込みをかけてきたGuilty Kissの1曲目が終わったあと、後ろのミリオンライブオタクは叫んだ。「今日イチ!!!!」

バンナムフェスは「いろんなコンテンツが好きなオタク」の集いである。
私もそうだったように、他の人も初見のコンテンツがたくさんあったと思う。
コンテンツや曲によっては何色を振ったらいいのかわからなかったり、コールが不安定だったりした。
それが曲の終わりには、不思議なことに一体感を持って理解できるようになるのだった。

私は、本音を言えば、アイドルマスターとして初めて東京ドームに立つのは「アイドルマスター合同フェス」が良かった人間だ。
アイドルマスターはたくさんの横に広がるコンテンツを抱えているが、10周年のライブを最後にコンテンツを超えた合同ライブを行っていない。
10thライブのあとにシャイニーカラーズという新規ゲームも増えたので、なおさら合同ライブを待ち望んでいた。
だから、嬉しいけど複雑な気持ちだった。
初めての東京ドーム。ドームとはアイドルマスターにとって特別な場所である。
バンナムフェスとあっては、アイドルマスターばかり優遇してコンテンツの垣根を超えるわけにも、掛け合いのやりとりをするわけにもいかない。
実際、そういった特殊な例は外部の西川さんとか結城さんに留められ、天海春香と天ヶ瀬冬馬の東京ドームでの邂逅掛け合いみたいなものは見られなかった。
(天海春香と天ヶ瀬冬馬はそれぞれ、アイドルマスターの女と男のセンターみたいな存在で、ライブでの共演はほぼ初めて)

でも、2日を終えた今の私は、これがアイドルマスターフェスでなく、バンナムフェスで良かったんだな、と思えた。
そう思えたことがすごく嬉しかったし、バンナムフェスがすごかったことのなによりの証左であると思った。
普通に生きている中では見ることがなかったコンテンツやアーティストのライブパフォーマンスはやっぱりすごかった。
盛り上げ上手な人、歌がとにかくうまい人、歌がとにかくうますぎる人…
それから、そうした人々と初めて出会った人々の衝撃が目の前にあったのも楽しかった。
次のアーティストが発表されるたびに、曲のイントロが始まるたびに、色々なところから歓声や奇声があがった。
終わる頃には最初の歓声とは別のところから「やばいやばい」「こんなすごいの!?」という驚きの会話が聞こえた。
新鮮な悲鳴は気持ちがいい。
私ももちろん、新鮮な悲鳴を放った。

アイドルマスターの天ヶ瀬冬馬役の寺島拓篤さんは、10th合同ライブに出演しなかった。その時のブログで、

この10thは765プロが作ってきた10thで、ライバルとして登場したからにはそこに乗っかる訳にはいかないぞと。
315プロのアイドルとして再スタートしたからには、自分たちの力で、自分たちの輝きでそこまで登りつめたい。
男の意地みたいなね。
本家、ミリオン、シンデレラ…みんな本当に凄いからこそ、315プロも自力でそこに並びたい!
いつか同じステージに立ちたい!

と語っている。
今回のバンナムフェスはアイドルマスターフェスではなく、だからアイドルマスターの中の765ミリオンスターズとsideMは同じレベルの、対等な招かれたコンテンツとして扱われた。
それはきっと冬馬の願いが叶ったということで、バンナムフェスという形でしか成されなかったことのひとつだと思う。
sideMは初日の開幕とラストを勤め上げ、765プロは2日目の開幕とラストを飾った。

「ずっとずっとその先へ 世界は動き出す」
「今始まるストーリー 未来はそこにあるよ」

そんな言葉で1日目は終わった。
sideMは「理由あってアイドル!」というキャッチフレーズのもと、さまざまな前職を持つアイドルが登場している。
締めで歌われたDRIVE A LIVEはそんなsideMの最初の曲だ。
だから、このフレーズもアイドルとしてこれから始まるストーリーという意味なのだけど、私にとってはバンナムフェスでの、知らないコンテンツすべてとの出会いを祝福されているように感じてしまった。

コンテンツとその人との物語は、ある日否応なく始まってしまうものだ。
それは劇的であったり、なかったりする。ない時のほうが多いかな。
何気なくつけたテレビでやっていたアニメであったり、友達がやってるからなんとなく始めたソシャゲであったり、本屋で平積みになってたから手に取ったラノベであったり。
そうしたなんとなく、他のコンテンツと同じところから始まったものが、いつしか自分には欠かせないものになっていく。
その大切になっていく過程が好きだ。
そこにある時間や感情はその人にしかないものだから。
その過程はすべて物語になるから。

そうした出会いのきっかけになるような演出がバンナムフェスにはいくつもフックとして散りばめられていた。
私は5万人の物語の始まりに立ち会っていた。

そして、私の物語も同じように始まった。
私は遠からずガンダムを見るだろう。
そしてメインスクリーンに流れていた映像のシーンに差し掛かるたびに、OPやEDの曲を聞き返すたびに、玉置成実さんや西川貴教さんの歌を思い返すのだ。

「ずっとずっとその先へ 世界は動き出す 今始まるストーリー」

そんなオタクへ送るのにこんなにぴったりな歌詞はないな、と思う。

一方でアイドルフェスティバルが行われた2日目のラストの曲も、こんなにぴったりな歌詞はないな、と思った。
2日目は1日目とは少し毛色が違って、女性アイドルコンテンツの集合だった。
それぞれのコンテンツのファンの一部は、ややいがみ合ったりマウントを取り合ってしてネタにされていたこともある。
そんな中で最後にこんなことを歌われてしまった。

「空見上げ手をつなごう この空は繋がってる 世界中の手を取り The world is all one」

そして実際にみんなが手をつないだ。
そんなの、なんだかまるで世界が美しいみたいじゃないか、と思わされて。
舞ってきた銀テを手に掴んで、ちょっとだけ泣いた。

一番心に残ったのはGuilty Kissのパフォーマンスだ。
あれだけ歌って踊ってブレない歌声、完璧に作られた表情、パフォーマンスレベルを落とさない体力、盛り上げのファンサ、MCのギャグ。
あまりにもパーフェクトアイドルすぎて脳みその受容体がめちゃめちゃに破壊された。(割とその直後のブロックの記憶がない)
どちらかといえばアウェーだったであろう中で、1曲目で完璧に観客を魅了した3人は、6曲を歌いきり、東京ドームをものにしていた。

もしもこれが他のコンテンツと同じように、μ'sとAqoursみんなで来ていて各ユニット1曲ずつとかだったらここまでの爪痕は残っていなかったと思う。
やっぱりコンテンツごとに20人近く来ていると、1人いいなと思う人がいても、1曲と全体曲だけでそれほど心に残らず次、になってしまうところがあるので、次のフェスがあるなら各コンテンツ代表制にして、必殺技を放ち続けて引きずり込み合戦してほしいな、の気持ちもある。
人数呼ばないとなかなか箱が埋まらないという問題もあるとは思うのだけど。

バンナムフェスは来年の開催も告知され、会場は大盛り上がりだった。
来年も、この熱狂は巻き起こるかもしれない。来年はうまくいかないかもしれない。

昨日熱狂の渦を巻き起こしたコンテンツも、今日は無数の中のひとつである。
さすがに今回参加した中で来年消えているコンテンツはないだろうが、何があるかはわからない。

昨日熱狂の渦の中にいた5万人も、今日は75億の一部である。
こちらのほうが来年どうなっているかはわからない。これを書いてる私だって死んでるかもしれない。

オタクたちは各々の人生に戻り生きている。
何かが変わったオタクもいれば、何も変わらなかったオタクもいるだろう。
願わくば、来年もまた、東京ドームで出会えることを、今回を超える熱狂が巻き起こることを祈っている。

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