目指す未来を実現するためなら、防波堤にだってなる。悔しさをバネに、事業成長に貢献してきたCTOの覚悟
「広く深い技術知識、開発組織における解像度の高さ、常時の笑顔。完璧な上長です!」
CTO・伊藤友気について社内アンケートをとると、いつも賛辞の嵐。なぜ彼はこんなにもエンジニアメンバーから信頼され、愛されているのか──その謎を解き明かすため、初めてインタビューを決行しました。
2018年に入社し、カンムの黎明期を支えてきた執行役員 CTOの伊藤 友気。事業のこと、技術のこと、考え方のフレームワーク、人に対する思い……柔らかな雰囲気で丁寧に語りつつ「カンムは今、最高潮に面白いフェーズ!」と熱っぽく語る場面も。次第にその“横顔”が浮かび上がってきました。
幅広い領域に造詣があるCTO。インフラやセキュリティは入社後に習得した
──はじめに、最高技術責任者としてどんな立ち位置で業務に関わっているのかを教えてください。
伊藤:全社横断の技術組織・テックディビジョンのオフィサー的ポジションで、全社のインフラやセキュリティを中心に見ています。各プロダクトの意思決定には直接たずさわっていません。それぞれの技術トップに権限移譲しています。
──なぜ、そのような体制にしたんですか?
伊藤:理由はおもに2つあります。1つめは、ここ1年ぐらいでリーダー人材が育ってきたこと。2つめは、カンムが複数のプロダクトを持っており、性質もまったく異なること。私が介在せず、おのおのが意思決定するほうが、メンバーがプロダクトに集中できると考えたんです。
ほんの2年前は「Pool」のコードをゴリゴリ書いていたので(笑)、見える景色はだいぶ変わりました。代表の八巻が描く5年後、10年後の未来を、技術でどう叶えていくかがCTOの本来の役割。やっとそういうことを考えられるようになってきたように感じます。
──伊藤さんは、開発だけでなく、社内インフラやセキュリティにもかなり詳しいと聞いています。どんな流れで、身につけたんですか?
伊藤:社内インフラやセキュリティの知識は、カンムに入社してから実践を通じて学びました。
2018年当時は社員数が20人。ソフトウェアエンジニアとして入社しましたが、必要に応じて別の業務も引き受けないと、現場が回らない状況でした。でも私自身はこのカオスさを前向きにとらえ、どんどん新しい領域に踏み出していったんです。
社内インフラは前任者からすべて私が引き継ぎました。六本木から恵比寿へオフィスを移転したときはものすごく大変でしたね。業務委託の方と2人で調べながら汗をかきかき、ルーターを置いたり、WiFiを引いたり(笑)。
セキュリティについては、入社して3カ月のタイミングで自ら手をあげて主担当に。フィンテックの開発を進めるにあたって、セキュリティ全般、特にクレジットカード業界の情報セキュリティ基準・PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)の知識は必要不可欠ですから。
前職の悔しい経験から「事業成長のためなら、何でもやる!」の精神に。新しいことを学ぶ楽しさを知る
──ここで、あらためて伊藤さんのプロフィールについて教えてください。
伊藤:東京大学大学院を中退後、Treasure Data, Inc. に入社。テックリードとして新規事業の立ち上げを行っていました。わが子のようにプロダクトを思いながら、全力で開発を進めていましたが、2年ほどで事業の縮小が決定。急に仕事が落ち着いてしまい、友人が在籍しているカンムに転職しました。
──先ほど、「入社当時のカオスな状況を前向きにとらえていた」とおっしゃっていたのですが、その理由は?
伊藤:実は前職で、すごく悔しい思いをしたんです。
担当していた新規事業は、PMと二人三脚で進めてきた……つもりでした。だから、事業縮小の知らせをPMから聞いたとき、「あ、自分は重要な話し合いに呼ばれなかったんだ」と、かなりショックを受けて。テックリードだったので、事業判断をする権限はないんですが、でも、意思決定する場には同席したかった。
「自分には何が足りなかったんだろう?」……悩みに悩んだ挙句、出した結論は「もっとプロダクトの中心に関われるようになろう。そのためには今の自分の専門外であっても、会社や事業の成長のために必要なことであればなんでもやろう」でした。それまではコードを書くこと、システムをつくること以外にも関心があったつもりでしたが、全然本気になれていなかったことに気づいたんです。これが仕事におけるターニングポイントとなりました。
──開発とインフラ、セキュリティは同じ“技術”とはいえ、まったく違うものですよね。どんなモチベーションで取り組んでいたんですか?
伊藤:シンプルに楽しい。その一言に尽きます。基本的に新しいことを学ぶのが好きなんですよね。
プロダクトの性質上、金融関連の法律についても勉強する必要があるんですが、言うまでもなく、完全な門外漢。原文を正しく解釈する力は私にはないのですが、「こういうことなのかな」と推察することはできる。法律、インフラ、セキュリティ……どんなものにも「人類の英知が詰まっているなぁ」と感動します。
──まったく同じことを別のエンジニアメンバーが話していました(笑)。伊藤さんの考え方がしっかりと現場に浸透していますね。
伊藤:ある程度採用の基準としているところはありますが、知らず知らずのうちに、近い考えをもったタイプを採用しているというのもあるかもしれません(笑)。程度の差こそありますが、各々のペースとやり方で新しいことを学ぶのが好きな方に向いている環境なんだと思います。
「ものづくりの会社である」「エンジニアは事業成長のために存在する」──“防波堤”として伝えつづける意義
伊藤:冒頭で、CTOの仕事について少し触れましたが、少し違う角度から見ると、自分は「防波堤」のような役割を担っているかもしれません。私たちがたどり着こうとしている未来、実現したい世界から離れていかないよう、分岐点に立ちはだかろうとしているというか。
──社内の業務効率化に向けて、エンジニアリングで解決する「Kanmu Tech Day」を月に1回、6年間継続している理由も、そこにあるんですか?
伊藤:イベントを通じて「カンムがものづくりの会社である」ことを、メンバーに定期的に再認識してほしいという気持ちが根底にあります。業務の幅は広げているけれども、この会社の土台はものづくりなんだよ、と。
──まさに「防波堤」そのものですね。安定感とバランス感覚を併せ持つ伊藤さんですが、ベースにしている思考法はあるんですか?
伊藤:システム開発のプロジェクトを開始するにあたっては、まず要件定義をして、制約条件を明らかにしながら、仕様を固めて設計や実装をしていく……というのが基本フローですよね。でもこのゴールと制約条件を明らかにしながらベターな解を探索するというスキームは、システム開発に限らず、組織運営など、仕事一般に当てはまるものだと私自身は捉えていて。
例えば、セキュリティ。そもそも基本的な知識がなければ、制約条件も目指すべきゴールもわからないんですよね。だから、人に聞いたり、調べたりしながら、知識をインプットしてきた。少しずつ制約条件に対する解像度が上がって、自分なりのゴールが設定できるようになって、そうしたらもうあとはやるだけです。そんなイメージです。
──メンバーとのコミュニケーションについては、どんな考えを?
伊藤:「相手が成果を出せる状況を作りたい」と思いながら、接していますね。
「とにかく味方になってほしい」、「厳しいフィードバックがほしい」など求める形は人それぞれ。できるだけ一人ひとりの思いに応えながら、サポートしていきたいと考えています。基本的にはシンプルにいいところだけ見て仲良くしてたいと思ってしまうんですが、時にその気持ちをこらえて(笑)。
──一人ひとりにどんな意識を持って業務に取り組んでもらいたいと思っていますか?
伊藤:会社や事業の成長のために、自らの専門的な技能を行使してもらいたいな、と。これはカンムに入社した当時、自身に課したこととも重なるんですが。
私たちは、いいものづくりをするためにカンムに集まっています。技術を研鑽し、新たな学びや挑戦をする楽しさ、好奇心は、もちろんその方個人のものですが、仕事というコンテキストにおいてはその全てをカンムの成長のために使ってもらいたい。その軸足をぶらさないよう、対話に努めています。
今もっとも面白いフェーズ。CTOとして、これまでにない金融サービスを生み出せる自信がある
──「カンムはものづくりの会社」というお話がありましたが、ほかにどんな言葉で言い表せますか?
伊藤:「今、めちゃくちゃ面白いフェーズにいる会社」だと断言できます。中にいる人間が言うのはおこがましいかもしれませんが、カンムは、新しい金融プロダクトのあり方、生活におけるお金の関わり方をアップデートできる稀有な存在だと確信していて。
私たちの主力プロダクトである「バンドルカード」は1,100万ダウンロードを突破するなど、一定以上の社会的意義はあると認識していますが、それは我々の生活におけるお金との接点のごく一部でしかない。目指しているのは「このプロダクト1つで、我々の生活におけるお金にまつわること全てがこれ1つで完結する」世界観なんです。
──既存の金融サービスとは違う何かを生み出す、ということですか?
伊藤:そうですね。山登りに例えると、頂上は見えているけれども、途中の道のりは霧が立ち込めている状態。なので、明言はできないのですが。
現在の金融の形ができて半世紀ぐらいが経った今、私たちは新しい何かを生み出せるはずなんです。
──なぜ、自信をもってそう思えるのでしょう?
伊藤:楽天証券で副社長を務めていた清野さんや、外資コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーにいた桐山さんなど、そうそうたる経歴、経験を持つメンバーが揃ってきたのは間違いなく大きな要素ですね。
さらに、私たちがずっと向き合ってきたのは、心理的ハードルや制約によって十分に既存の金融機能を使いこせていない人。金融リテラシーが高い、富裕層ではありません。だからこそ見える何かが私たちにはあると、本気で思っています。
──今の話を踏まえたうえで、エンジニア組織が抱えている課題を教えてください。
伊藤:つくりたいものがどんどん増えているなか、圧倒的に人員が足りていない状況です。組織を大きくするためには、さまざまなバックグラウンドを持った、多様なメンバーが必要。ということは、誰もが100%力を発揮できる環境にしなければならない。これまでのように暗黙知を自覚的に引き受けるフェーズではないことは認識していて、まずは、教育や業務プロセスの明確化といったあらゆる仕組みを整備していく予定です。
──最後に。どんなエンジニアに仲間になってもらいたいですか?
伊藤:スキルセットについてはポストによって違うので、ここでは言及しませんが、マインド的には「一緒に働いていて、気持ちのいい人」がいいですね。実際にうちのエンジニアメンバーは助け合いの精神があるし、嫌なコミュニケーションをする人間はひとりもいない。これまでと同様に「いい人が、いい人を呼ぶ」の法則で、同類の仲間を増やせていけたらいいですね。
──伊藤さん、本日はありがとうございました!
\カンム積極採用中/