『中学保健ニュース』

場面緘黙症について、少年写真新聞『中学保健ニュース』に3回シリーズ(8月号~10月号)で書きました

『中学保健ニュース』は、中学校の保健室の先生向けの小冊子です。養護の先生は、学校に場面緘黙症をもつ生徒がいないか、特別支援教育の対象として認知されているか調べていただきたい。家庭と学校が連絡を取り合って、個別の指導計画やサポートブックを作成しているか、学校で合理的配慮がなされているかも確認していただきたいと思います。

かんもくネット会員さんからの情報では、学校での合理的配慮や症状改善のための支援の協力は、年々得やすくなっているように感じます。ただ、地域差や学校差があって、教師や支援者によって大きな開きがあるようです。

先日、場面緘黙症をもつ幼稚園児の保護者さんから、幼稚園でのスモールステップでの取り組みを行いたいが、園からなかなか理解が得られないと聞きました。放課後に園庭や園の部屋をお借りして、はじめは子どもと保護者が遊んで発話を促し、次に先生が部屋の隅を通って・・という、最もよく行われる取り組みです。コロナの感染防止のために、なかなか園や学校の部屋をお借りするのも敷居が高くなったとは感じていました。でも、そういうことではなく、公園やお店で子供に発話を促したり、療育に通ったりすることにまで批判的な意見だったということでした。

「子どもが話さないのは自分の意志」
「それなのに、親が話させようとしている」
「うちでは、子どものそのままを受け入れる方針です」とのこと。

いやいや、先生ちょっと待ってください。
「自分の意志で話さないのではなく、不安や緊張のために話せないんです」
「子どもが楽しく話せる環境や場面を設定し、不安の少ない場面から発話を促すことが大切です」
「『そのままを受け入る』方針は、『放置する』というのと同じでは?」
(※この先生にこうお話ししたらいいという意味ではありません。)

かんもくネットのリーフレットがなかった頃は、このような事態は「あるある話」でした。でも、この保護者は、園にリーフレットと支援者の意見書をお渡しし、話し合いを持たれたとか。中には理解を示してくださる先生もいたけれど「子どものそのままを受け入れる」という園の方針が立ちはだかったということのようです。

一方、とても協力的な園や学校もあります。本人が希望すれば、本人・教師・心理士の3名で「電話を用いた発話支援」に協力くださっています。ZOOMを用いた支援を開始した学校もあります。このようなリモートでの発話チャレンジは、子どもがチャレンジしたいという気持ちを保つことができれば、本人・教師・保護者の3者でも可能と思います。

(かんもくネット 角田圭子 臨床心理士・公認心理師)