湯浅醤油の魅力
大学のゼミで、和歌山県湯浅町にある角長(かどちょう)さんを訪問させて頂きました。
天保12年創業の角長さんは、木桶を使い、今も昔ながらの手作り手法にて醤油作りをなさっていらっしゃいます。
今回、蔵の中を特別に見学させて頂く機会を与えて頂きました。
蔵前に立っている時から、もうすでに醤油の香りが鼻腔をくすぐり始め、薄暗い蔵の中へ足を進めて行くと、天井の梁にびっしりと張り付いているものが見えてきました。これが醤油作りには欠かせない酵母菌であるとのことでした。この酵母菌は、この蔵独自のもので他のまちへ持っていき、醤油作りを行なっても、同じ味の醤油を作ることができないそうです。その後、醤油作りの樽も見学させて頂きましたが、想像以上の大きさで、また内部はむっとした熱気があり、醤油作りの大変さを物語るようでした。
醤油作りの工程はこちらに詳しく記載されていました。
ところで、醤油には油という漢字が当てられていますが、いわゆる私たちが使っているオイルのことではなく、油という漢字はとろっとした液体のことを表すそうです。また醤は、麦や、こうじ、豆、米などをねかせてから、塩を混ぜて作った調味料、滑物のことを言うそうです。(小学館、デジタル大辞典より)
また、醤油を絞った後に残るシート状の粕は、お店の外壁などにて再利用されていらっしゃいます。JR湯浅旧駅舎にある湯浅米醤さんでご覧いただけます。
現在、醤油の国内使用量は年々減少を続けており、ピーク時の半減となっています。出典 一般財団法人日本醤油技術センターHP
https://www.shoyu.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/e2508149503a88f027d531af87c97422.pdf
2020年度の国内醤油生産量は、約70万キロリットルあり、だし醤油などの醤油加工品を加えると約102万キロリットルとなり、醤油単体では、全体の7割を占めています。
一方、海外生産においては年々増加しており、2018年度のデータでは、26.8万キロリットルが生産されていました。
引用先 しょうゆ情報センター
海外で醤油の使用量が増加した要因としては、醤油業界の大手メーカーの一社であるキッコーマンによると、まずは、各国の食文化との融合を図ることからスタートしていきました。
米国では、醤油ベースのteriyakiがヒットしたことが、醤油の認知度向上に貢献し、欧州、南米においても日本の調味料としての醤油を押し付けるのではなく、米国同様に現地の食文化に取り入れてもらうことが重要であったと知りされています。
ちなみにキッコーマンの2024年版のファクトブックによれば、売上収益の約77%が海外からによるもので、国内は24%に過ぎないようです。
また、事業利益になると、約89%にまで上ることが示されています。
https://www.kikkoman.com/jp/ir/assets/factbook_2024_bi_j.pdf
醤油といえば、日本料理の根幹を成すものですが、生産量や、売上、利益から言うと、もう海外が主要なマーケットになっていることが分かります。
ちなみに国内生産で言うと、ランキング1位は千葉県で全国の約33.6%を占めています。代表企業はキッコーマン、ヒゲタ、ヤマサと日本を代表する名だたる企業が挙げられます。千葉が醤油のメッカとなった理由としては、地理的状況がまず挙げられます。利根川や江戸川により当時の首都であった江戸への流通がスムーズになり、また造醤油仲間を作ることで、醤油の品質、原料の塩の価格、問屋との交渉など組織的に経営することが大きかったようです。
引用先 千葉県教育委員会HP 09.利根川水運と醤油・味醂生産
今回、訪れた角長さんの説明によると、手作り醤油のお店は湯浅では一社になってしまったとのことです。醤油のグローバルな展開は、醤油産業にとっては不可欠なものであるでしょう。一方で、醤油発祥の地で生産される醤油もやはり大事にしていく必要があると考えます。
現在、日本料理が世界遺産に登録され、また、コロナ禍をへてインバウンド旅行客が増加していく中で、醤油を通じて日本をアピールしていくことは、今後の日本経済にとっても必要不可欠であると考えられます。
湯浅を訪れることで、日本の立ち位置や今後の企業展開を考えさせて頂く良い経験となりました。
角長さんで頂いた醤油アイスクリーム美味しかったです。
ありがとうございました。